5.19.210 暴龍魔法
ダクザギャッデスが最後に放とうとした範囲攻撃魔法が第8階で、街1つを完全に消し飛ばす程の力。
それよりわずかに1ランク下なだけで、大惨事になるところだったのは間違いない。
エピーの超絶ファインプレーにより、数千の命が救われたのであった。
「ドリーちゃん、魔法を使うときはまず、俺かエピーに使っていいか絶対に聞くことっ!もしこのルールを破ったら、今後人間の料理を食べるのを禁止しますっ!!」
「ニャニャニャっ!?シン、何でそんなヒドいこと言うニャミュ?」
「ミュイ~、ヒドいのはドリーだよ〜」
「1人でも人を殺したら2度とメシは食べさせないって約束しただろっ!なのに今、何千人殺しかけたんだよっ!」
「ニャミュぅ〜、ちょっと魔法を試してみたかっただけなのにぃ、、、ついでにちょこっとムレビトをこんがり焼いちゃうだけだよ」
「ちょこっとじゃ済まないからなっ!」
そんなこんなで暴走ドラゴンにこんこんと説教をすると、真一は改めて習得した魔法を確認してみる。
勇者にはステータス画面という便利な機能があるのだ。
「ステータス!」
さっそくコマンドを唱えると、2つのステータス画面が浮かび上がる。
ただしエンプレス・ギドリー・シンイチの方のステータスには変化はなかった。
もとから種族スキルとして習得済み扱いだったからだろう。
けれども真一自身のステータス画面には新たな項目『魔法』が追加されていた。
ーーーーーーーーーーーーーーー
名前:馬宮 真一
種族:異世界勇者・超次元融合
職業:冒険者
ステータス:
・・・
補助効果:
・・・
状態異常:
・・・
スキル:
ダメージ最小化 Lv.MAX
スリップダメージ微小化 Lv.MAX
ミニマムヒール Lv.1
共有スキル:
カミュリャム《至聖龍》
魔法:
火魔法 : ▶ 第1〜5階
炎熱魔法: ▶ 第6〜7階
光魔法 : ▶ 第1〜5階
雷光魔法: ▶ 第6〜7階
称号:
創世神の召喚兵
ジャイアントキラー
幻獣種と同化せし者
ーーーーーーーーーーーーーーー
「おぉっ!ちゃんと魔法が増えてる!」
ステータス欄には折りたたまれてコンパクトに表示されているが、これは使える魔法の数が多すぎるからのようだ。
試しに『火魔法』の項目を舌でタッチしてみると、習得済みの火魔法がいくつも表示された。
ーーーーーーーーーーーーーーー
魔法:
火魔法 :
第1階:火
第2階:火(下)、火球、火矢
第3階:火(中)、火壁、火槍
第4階:火(大)、火炎旋風、爆炎、蒼炎
第5階:火(特)、爆炎竜巻、爆炎日輪、灼熱獄炎、焦土
ーーーーーーーーーーーーーーー
そして火と光が出てきたということは、至聖龍カミュリャムの魔法適性は第4層(動層)のようだ。
表示内容を見れば、『炎熱魔法』と『雷光魔法』が、それぞれ火と光の上位魔法だということが推察できる。
だがそれ以前に今の真一は、魔法の基礎知識が頭に入った状態になっているのだ。
これも魔法がアンロックされた影響なのだろう。
魔法のスキルを習得できただけではない。
魔力やリビド《魂》が感じ取れるようになったこと。
魔法の使い方やそれに付随する知識がインストールされたこと。
全てが石柱を使ったことにより引き起こされたのである。
ちなみにエピーとドリーは元から魔力を感じることはできていた。
けれどもそれ以外の魔法に関することは、真一と同じく先ほどアンロックされたばかりである。
そうして脳内にインプットされた情報によると、このミグルにおける魔法は一般的には5段階まであるようだ。
初級、下級、中級、上級、特級と呼称されているものだ。
ただしステータス画面上では第1階〜第5階と表記されているみたいである。
初級(第1階)は飲み水を出したり、光で照らしたりといった生活魔法で、その魔層の適性がある人の多くが使える。
対して下級、中級、上級は魔層に適性があっても、得意な属性じゃないと習得できない。
下級(第2階)はちょっとした攻撃や作業に使えるレベルで、炎の球や風の刃を飛ばす程度。
中級(第3階)になるとかなり大きな魔法が使えて、土の槍や水の壁を出したりといった具合だ。
謎石で出来た建物を造る魔建士も中級からだし、まともな治癒ができるのもこの段階から。
上級(第4階)は才能に恵まれたかなりの熟練者がようやく到達できるレベルだ。
ここまで来ると大きな魔法を自在にコントロールできるようになってくる。
そして特級(第5階)は人類が到達し得る最高のレベルとされている。
数十人の上級者が大掛かりな術式を組み上げて、ようやく発動できる魔法である。
個人で使えればそれだけで、後世に名を残すような天才と呼ばれる程だ。
このように魔法と言って想定されるのは、基本的に第5階までである。
ただしそれ以上の魔法の存在が知られていない訳ではない。
上位魔法と呼ばれる、おとぎ話に出てくるような魔法。
伝説になるような幻獣種が使うとされるモノ。
それが第6階以上の魔法なのだ。
それらは一般的な火魔法や水魔法という枠組みを超えていて、新たな属性名を冠していると噂されているのだが、、、
俺、使えちゃってるよ〜!
炎熱魔法に雷光魔法っ!!
どうやらいきなり伝説級の魔法を習得してしまった真一であった。
そういえば『雷光魔法』って書いてるけど、この世界に雷属性の魔法は存在しないはずなんだよな?
マコがそんな話をしていたのを思い出す真一。
この異世界ミグルは雲もなく、雨も降らない。
当然ながら雷も落ちない。
そのためこのミグルの魔法には、雷属性というものは存在しないそうなのだ。
けれども『光魔法』の上位魔法は『雷光魔法』。
第6階以上になると、光に雷属性が追加されるのだろう。
どうやら雷属性が存在しなかったのではなく、伝説級すぎて認知されていなかっただけのようだ。
そんなスゴい魔法を習得できたとなれば、使ってみたくなるのが人情である。
こんな神殿の中ではもちろん使わないが、それでも使い方の確認くらいはしてみたい。
そして今の真一はそう考えるだけで、頭の中に情報が浮かんでくるようになっていた。
ふむふむ、、、
第6階の雷光魔法で使えるものは3つあるのか、、、
『消滅の光円』
『裁きの天雷』
『空翔ける雷光』
ステータス画面を見る必要すらなく、真一の脳内に使える魔法の呪文名が浮かんでくる。
光の範囲攻撃と、雷の打ち下ろし、雷光複合の遠距離攻撃の3種類のようだ。
龍語の呪文なのだが、ちゃんと日本語に翻訳されて理解できる。
使う際の詠唱も、龍語でも日本語でもミグル語でもいいみたいだ。
これなら街の外に行ったときにでも、呪文を唱えればいつでも試せる。
必要なMPの情報も頭の中に浮かび上がる。
常に決まった値ではなく体調で増減するらしい。
そもそも具体的なMP量が分かるわけではなく、感覚的にこれくらいってのが肌で感じられるのだ。
精神力の消費は膨大で、、、
この感じだと、、、MPに換算すると、、、
だいたい1500くらい、、、
って、、、っ!?
「1500っ!?俺、使えねぇじゃねぇかっ!!」
最大MP400程度の真一では、上位魔法はとても使えないようだ。
さんざん期待させておきながら、酷い詐欺にあった気分であった。