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4.47.187 ひかりのつるぎ

 もはや一刻の猶予もない。


「アサカさんっ!ヒカるんを槍みたいに真っ直ぐ伸ばしてっ!アイツに当てて欲しいんだっ!」


 ヒカるんの『性質』に思い至るやいなや、真一は衝動的にそう叫んでいた。


「っ!??、、はいっ!!」


 予想外の依頼に一瞬戸惑う朝霞。

 だがその言葉でヒカるんに触れたらどうなるか、朝霞自身もようやく気が付いたのだろう。

 すぐさま真一の指示に従って動き出した。

 ガンガンと響く頭痛を堪えて最後の力を振り絞り、胸で光るヒカるんを真っ直ぐ棒状に変化させる。

 ダクザギャッデスを貫くように、ヒカるんが50メートルほどにまで伸びていく。

 その伸長スピードは凄まじく速いが、それでもダクザギャッデスに当てるには十分でなかった。


「グリュウゥッ!!」


 苦しげな呻き声をあげてダクザギャッデスが空中で身をよじり、槍ヒカるんを回避する。

 本能的に触れてはいけないと見抜かれてしまっているのだ。

 そのまま超高速での飛行を始め、槍ヒカるんから距離を取ろうとする。


 と同時にダクザギャッデスは、朝霞を憎々しげに睨みつけてきた。

 今にも衝撃波を放ちそうな気配だ。

 だというのに朝霞には、これ以上1ミリたりともヒカるんを変形させる(MP)は残っていない。

 だが、、、


「逃がさないもんっ!」


 槍ヒカるんを出した朝霞を、エピーが抱きかかえた状態のまま、思いっきり横薙ぎに振り切った。

 恐ろしい加速に朝霞の意識が飛びそうになる。

 たまらず槍ヒカるんが消滅していく。

 だが全てを消滅させる槍ヒカるんの前には、空気抵抗など存在しない。

 エピーの横薙ぎ攻撃は凄まじい速さで世界を切り裂いていく。


 ヒカるんが消えゆくよりも早く。

 そして、、、

 必死に逃げるダクザギャッデスよりも。


「グリャ、、、?」


 消えかけの槍ヒカるんが、飛行するダクザギャッデスの全身を逆さ袈裟斬りに一閃する。

 困惑しきった鳴き声を上げた直後、、、

 自らの高速飛行の風圧を受けたダクザギャッデスは、次の瞬間には真っ二つに切り裂かれていた。


 パシュッ!


 身に纏っていた青紫色の放電光が、弾けるように霧散する。

 最期は憎悪ではなく驚愕の色を浮かべていた瞳から、命の光が消えていく。

 断面からおびたたほどの体液を撒き散らし、、、

 数百年を生きた幻獣種は、、、

 力無く落下していった。


 ドゴォオォォオォォォン!!!


「勝ったの?」


 2つに分かれた巨体が地上に激突して轟音を響かせる中、朝霞が呆けたように呟く。


「あぁっ!アサカさんが倒したんだっ!」


「ミュイっ!アシャキャすごいっ♪」


「ドリーもっ!ドリーもアシャヤも頑張ったニャミュ♡」


「わたしが、、、?わたしがみんなを、、、」


 呆然としながら噛みしめるように呟く朝霞。

 未だにどこか信じきれていないかのようである。

 だが実際にまだ気を抜いていい場面ではなかった。


「なっ!?」


 突然ダクザギャッデスの巨体の下の地面に、黒い渦のようなものが発生したのだ。

 ホッス渓谷の結晶トカゲ退治のときに見かけた黒いモヤに似ている。

 まだ倒せていないのか!と、すぐさま身構える真一。


 そんななか禍々しい黒い渦の中に、2つに分断されたダクザギャッデスの身体が沈んでいく。

 『これはファンタジーあるあるの第2形態パターンに変化するヤツなのか!?』と警戒する真一。

 そういえば真一には、ダクザギャッデスを倒したことによるレベルアップの感覚が来ないのだ。

 油断せずに状況を見守る真一たちだったが、、、


「へっ!?なに、これ、、、?」


 沈んでいくダクザギャッデスを眺めていた朝霞は、突然のことに困惑の表情を見せる。

 身体の奥底から万能感というか爽快感のようなものが湧き上がってきたのだ。

 今まで経験したことのない不思議な感覚に、ひたすら戸惑っていた。

 とはいえ何か悪いものではないようである。

 逆にガンガンと鳴り響いていた頭痛がスッキリと消え去っていた。

 いつになく身体が軽く感じる。

 そしてエピーの腕の中で弱々しく消えゆきそうだったヒカるんが、すっかり輝きを取り戻していた。


「アサカさん、ステータスを確認してみて」


 そんな朝霞の様子を見て、真一はすぐに何が起きたのか気がついた。

 やはりダクザギャッデスは死んでいたに違いない。

 そしてとどめを刺したのは、朝霞のヒカるんである。

 ならば経験値=リル《価値》は朝霞の総取りとなるはずだ。

 そしてレベル1の勇者が幻獣種を倒して、莫大な経験値を受け取った際に起こるのは、、、

 もちろんレベルアップである。


「え、あ、はい。ステータス!」


 言われるがままに朝霞がステータス画面を出す。

 だがそこに記載されていたのは、ただのレベルアップどころの内容ではなかった。


ーーーーーーーーーーーーーーー

名前:結城ゆうき 朝霞あさか

種族:異世界勇者・中級

職業:なし

レベル:41

HP:590 / 590

MP:594 / 595

補助効果:

 時空断裂、治癒、浄化、成長促進、ステータス向上、状態異常解除、環境補正

  ▶謎の光 【継続発動中】

スキル:

 謎の光

称号:

 創世神の召喚戦士

 天下あまくだ

加護:

 恋愛悪戯神れんあいあくぎしん寵愛ちょうあい

ーーーーーーーーーーーーーーー


 空中に浮かぶ画面を4人で覗き込んで、、、

 あまりの情報量に、全員が言葉を失う。

 どこから見ればいいのか混乱するほどだが、それでも最も重要なのは、、、


「アサカさんっ!ペナルティが消えてるっ!!これでもう死なずに済むぞっ!!」


 歓喜に沸く4人の下で、、、

 ダクザギャッデスを飲み込んだ黒い渦は、いつの間にか消え去っていた。


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