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4.39.179 《P-2》霊薬の花の苗床

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《P-2》『左下腿部ひだりかたいぶ』=『霊薬の花の苗床』

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 温室でファニカスの花の苗床となっていた不思議素材は、真一のバラバラパーツであった。

 部位は脚のふくらはぎのあたり。

 真一が『下腿部パーツ』と呼んでいる場所である。

 上は膝の関節、下はくるぶしの上あたりで切断されていた。


 パッと見ただけではすぐには分からないが、左足側である。

 何故なら右足は股関節から下が全てくっついていて、1つのパーツとなっているからだ。

 尺取り虫のようにして歩くことができるので、真一は今も荒野を移動させている最中であった。


「ステータスっ!」


 ユキが後ろから左足パーツを鑑定する。

 すると思った通り真一のステータス画面が、左足の上に表示された。


「やっぱりシンイチの足で間違いなさそうね」


 横からステータス画面を覗きこみながら話すマコ。

 一方ユキは真剣な表情で真一を見つめながら頼み込んできた。


「シンイチ、身体を回収したいのは当然だと思うんだけど、お願いっ!もう少しだけ待ってくれないかな!?」


 つまりファニカスの花が咲くかどうか分かるまで、このまま栽培を続けたいということである。

 真一だってようやく根付いた胞子を廃棄して、無理やり足を回収するほど鬼畜ではない。


「もちろん、俺だってミドローちゃんは助けたいって!」


「良かったぁ。ありがとね、シンイチ」


 自分の足に根がびっしりと生えている様子は、なかなかにグロテスクである。

 正直言うと生理的にはかなりムリな感じであった。

 とはいえ寝たきりの健気な少女の顔が浮かんできて、とても見殺しになんてできない。

 真一が我慢すればいいだけである。


「ねぇ、これってシンの身体なんだよね?ドリー、食べてもいいニャミュ?」


 だというのに我慢のできない腹ペコドラゴンがいるようだ。


「いいわけないだろっ!!なんでそんな話になるんだよっ!」


「だってドリー、シンのこと大好きなんだもん。だから愛するシンの身体はぜんぶ食べちゃいたいニャミュ♡」


 相変わらず『食べちゃいたい』の意味がズレているエクストリーム肉食っである。


「いやっ、ダメだっての!ぜんぶ食われたら俺死んじゃうだろ」


「ミュイ〜、シンの身体を食べちゃったら、交尾できなくなるでしょ、ドリー。何のために旅に出たと思ってるの」


 真一を援護するように、エピーもドリーの説得にかかる。

 だがそのせいで今度は、女性陣に真一の『野望』がバレてしまった。


「え!?アンタらの旅の目的ってそれなの?」


「シンちゃん、やっぱりエッチ〜」


 ユキとマコが口々にはやし立てる。

 朝霞に続いて今度は真一が顔を真っ赤にさせる番であった。

 ちなみに朝霞はかなりウブなようで、真一と一緒に顔を真っ赤にさせていた。

 平気なのは肉食ドラゴンたちだけである。


「ミュイ〜。そうだよっ!エピーはシンと交尾がしたくて、カラダを探しに来たんだよっ!知ってる?交尾ってすっごい気持ちいいらしいんミャ〜♡」


「ニャニャニャ〜、エサかコウビか、どっちを取るか悩むニャミュぅ〜、、、」


 そしてドリーは未だにウンウンと悩んでいるようだ。

 もしドリーが凶行に及ぼうとしても、きっとエピーが止めてくれるはずだと、縋るように見つめる真一であった。


「あの〜、、、話がよく見えないんですけど、、、」


 とはいえ突然の展開に全く付いてこれていないのは朝霞である。

 そりゃ苗床にしていた『不思議素材』が真一の足だと言われても、意味が分からないだろう。

 そうして真一はこの異世界に来てからのことを、一から説明することになった。


 だが話をしている途中で真一はふと思いつく。

 ゴブリンキングの首飾りになっていたときに、いつの間にか発生した状態異常、『寄生』のことである。

 さっそく朝霞に確認してみたところ、朝霞がファニカスの胞子を左足に植えたときと日時が一致した。

 やはり『寄生』の状態異常は、目の前の根っこが原因のようである。


 ファニカスの花は一瞬で土地を枯らしてしまうほど、大量の養分を吸収する。

 その『養分吸収攻撃』が、真一の左足に集中しているのである。

 普通なら真一の左足は、すぐにカスカスに干上がっていたはずだ。

 だが真一には『ダメージ最小化』のチートスキルがあるため、『寄生』の状態異常のみで済んでいるのだ。

 ダメージ量も『10秒あたり0.01』と僅かである。

 『至聖龍』の共有スキルに含まれる『HP自動回復』の効果により、完全に無視できるものであった。


「なるほどね。ファニカスの花からしたら、絶対に枯れない苗床からいくらでも栄養を吸収し続けることができるってことねっ!」


「そう考えるとシンイチのパーツって、ファニカスの花の栽培に最適じゃないっ!」


「そんなとこを褒められてもなぁ、、、」


 ともかくこれで大まかな方針は決まった。

 まずはファニカスの花の栽培はこのまま続ける。

 朝霞の話では数日以内に胞子から発芽するのではないかという話である。

 そこから花を咲かせるまでにどれくらいかかるかは、文献にも記述はない。

 誰も栽培に成功したことがないからだ。


 長くても16〜32日くらいではないか?というのが朝霞の予想だが、朝霞はその間ずっと水やりと『光やり』の世話をする必要がある。

 ちなみにこのミグルに来てもう2年近い朝霞やユキ&マコは、すっかり16日単位で数えることに慣れていた。

 週とか月といった言葉を使わなくなっているのだ。


 ともかく上手くいけば長くてもあと2週間くらいでファニカスの花が咲くかもしれない。

 1度成功してしまえば、その胞子から再び栽培ができるはずだ。

 そうすれば2次栽培でいくつもの花を並行して育てることだってできるかもしれない。


 今回は残り胞子が少なかったので、栽培しているのは1つだけ。

 だが真一の左足の長さなら2〜3株同時に育てられるくらいのスペースはある。

 何なら聖剣シドルを分解して使うという手もあった。

 妹の命がかかっているのだから、シドローも嫌とは言わないだろう。

 そうすれば今後も継続的にファニカスの花の入手ができるようになる。

 シドローが手出し可能な金額で譲ってもらうことも十分に視野に入ってくるはずだ。


 そして花の栽培と並行して進めないといけないのが、朝霞の勇者活動停止ペナルティへの対策である。

 こちらはさらに期限が厳しい。

 朝霞が命を落とすまで、あと4日しかないのだから。

 だがどうしてもモンスターと戦うのが怖いと言う朝霞に何ができるのか?

 すぐにはいいアイデアが出てこないので、ひとまず一度みんなと合流して相談してみることになった。


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