4.37.177 ◎に負けない女
■■■ 第4章 part.5 あらすじ ■■■
異世界へ首だけで送られてきた真一は、左の首を亡くした三つ首ドラゴンのエピー&ドリーと融合した。
そうしてドラゴンとなった真一たちは、人化して人間の街を訪れる。
ドラゴン娘たちは数々の騒動を巻き起こし、ついには超人気アイドルのルミッコの誘拐事件にまで巻き込まれるのであった。
ルミッコたちを見送ったあと、新人冒険者としての活動をスタートした真一たち。
そのなかで異世界勇者の日本人4人組パーティー『ナローズ』や、バンリャガ最強のゴールド冒険者『山兄弟』と知り合うことになった。
『山兄弟』のシドローが持つ真一の右前腕パーツを回収するためには、兄弟の妹の病を治さないといけない。
そのために必要な霊薬の花を探して訪れた農園で真一たちが出会ったのは、日本から召喚された勇者の少女の朝霞であった。
疫病神の加護によるありがた迷惑な『恋のきっかけ』のせいでエロエロハプニングに遭い続けた朝霞は、最終的に命を落とし異世界ミグルへと送られてきた。
そんな朝霞が望んだのは『誰にも裸を見られない力』、愛称『ヒカるん』である。
『ヒカるん』に秘められた特殊効果を用いて希少素材の栽培をしていた朝霞は、とあるアイテムのおかげで特別な花の育成に成功しつつあるのだが、、、
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「ここにあるのはそうやって育てた植物なんです」
それが長い長い、朝霞の身の上話であった。
ユキもマコもすっかり朝霞に感情移入していて、途中では本気で怒ったり泣いたりしていたほどだ。
もちろんエピーもそうだし、珍しくドリーも真面目に朝霞の話に聞き入っていた。
友だちになると話を聞くのにも、真剣さが増すのかもしれない。
ともかく朝霞が希少な植物を育てることができるというのは本当のようだった。
というか『ヒカるん』が万能すぎる。
肉体の治癒能力に、植物の成長促進。
さらにはモンスターに襲われて無事だったのも、奴隷契約を破壊したのも、『ヒカるん』の効果と見て間違いなさそうだ。
当の本人の朝霞がいちばん良く分かっていなさそうであるのだが、、、
「アサカちゃんのユニークスキルってスゴいわね」
「ぜんぜんそんなこと無いです!こんな悪ふざけみたいな能力、、、冒険者として立派にやってるユキさんたちの方がスゴいですよ」
「あはは、、、そう思っちゃうわよね」
朝霞の無邪気な言葉に、乾いた笑いをあげるマコ。
「わたしの力なんて、、、」
ユキに至っては涙混じりで遠い目をしていた。
地雷を踏まれて悲嘆に暮れるユキ&マコ。
そんな2人に代わって、真一が朝霞にユキたちのユニークスキルを説明するのであった。
「~~~~~ってわけなんだ。つまりみんな多かれ少なかれ、あの邪神には騙されて来たってこと」
話を聞いた朝霞はしばらく絶句していた。
自分以外にも酷い扱いを受けた人がたくさんいることに驚いているようだ。
とはいえ朝霞もあの少年が邪悪な存在だと、薄々感づいていたようではある。
「とにかくユキやマコたちは、何もないところから努力して、モンスターと戦ってここまで強くなったんだ。アサカさんだってきっと強くなれるって」
「無理です。わたし、あんなのと戦うなんて怖くて、、、」
だが朝霞の反応を見るに、本当にモンスターと戦うのが怖くて仕方ないようだ。
そんな少女を励ますように、ユキが優しく語りかける。
「大丈夫、最初は小さくて怖くないヤツから始めればいいの。アサカちゃんの能力は戦闘にも使えそうだし、わたしたちよりはずっと簡単よ」
「そうですか?、、、ヒカるんには助けてもらってるけど、モンスターと戦う役に立つかなぁ、、、」
「治癒能力があるだけでも十分強いって。それに防御力も高そうだし」
「防御力ですか?」
真一の指摘に朝霞が不思議そうな表情を浮かべる。
ヒカるんの能力についてあまり良く分かっていないようだ。
アニメやゲームに興味がなく、こういったお約束設定の事前知識がないせいである。
「モンスターの爪を防いだんだろ?」
「そうなのかな、、、わたし、良くわからなくて」
「そこは検証が必要だけど、話を聞く限りだといろいろな補助効果があると思うわよ」
ユキも朝霞の話を聞いて、真一と同じような感想を抱いていたようだ。
朝霞がどんなモンスターに襲われても怪我すら負わなかったのだから、少なくともヒカるんの防御能力は相当のものだと考えていいだろう。
逆に襲ってきた相手の方がダメージを受けているので、何らかの反撃能力も有していると思われる。
「そうそう。それにみんな気付いてないけど、アサカちゃんのユニークスキルにはとんでもない効力が秘められてるわ」
だがマコが急に声のトーンを変え、今まで見たことのないほど真剣な表情を見せる。
朝霞のスキルの凄い使い方を思いついたようである。
確かにヒカるんには応用力の高そうな効果がいくつもあった。
「マコ、何か気づいたのか?」
「えぇ、とんでもない副次効果があるのよっ!」
「どういうこと?」
みんなが身を乗り出してマコの話に耳を傾ける。
「例えばね、アサカちゃんの活躍がアニメ化されたとするじゃない」
いきなりの意味不明なセリフに、ポカンとした表情を浮かべる真一たち。
「すると当然アサカちゃんのお色気シーンも出てくると思うんだけどね、、、」
そんな中でノリノリで話すマコは、いつの間にかゲス顔になっていた。
「そのときオンエア版は当然規制が入るんだけど、アサカちゃんの場合はブルーレイ版でも規制が解けたりしないのよっ!だって『謎の光』は放送規制じゃなくてスキルなんだからっ!」
つまり朝霞はBD版になったとしても、際どいトコロを見られなくて済むのだ。
配信版だろうがA◯Xの放送だろうが関係ない。
世界中で星の数ほどいるアニメヒロインの中で、ただ1人朝霞だけが持つ『最強の能力』。
朝霞は◎円盤◎に負けない女なのである。
「マコっ天才かよっ!!すげぇっ!、、、のか??」
マコの神がかった発想に歓声を上げる真一。
、、、だったが、少し考えればあまりにもどうでもいい話であった。
「ってか、逆に残念なだけのような、、、?」
確かに朝霞は見られなくて済んで嬉しいかもしれないが、◎円盤◎購入者からすれば金返せ案件である。
発売前から売り上げ爆死が決定的だ。
『ヒカるん衰弱モード』でも実装しない限り、返金騒動は不可避であった。
「え〜、シンちゃん、何を期待しちゃってんのよ〜、エッチぃ〜」
「あ〜、マコの話を真面目に聞いて損したわ。アサカちゃんもくだらない冗談だから無視していいわよ」
「???」
「なんで〜?アニメ化しようよ〜」
まだまだ悪ノリするマコに、やれやれと呆れ果てるユキ。
朝霞はたった1人、全く話についてこれていなかった。
そもそもスキルの持ち主である朝霞だけが、アニメの『謎の光』というものの存在を知らないのである。
「それよりもアサカちゃんがどうやってモンスターと戦うかって話ね。本当に使い方次第だけど、そのスキルは使えると思うわよ」
「だけどヒカるんって、胸を露出させないと出せないんですよ、、、」
「あっ、、、」
朝霞の指摘にユキが間抜けな声を漏らす。
どうやらそのことを完全に失念していたようである。