4.33.157 召喚勇者はガチ薄幸少女
「ドリーは?ドリーも女の子ニャミュっ!」
今まで大して興味も無さそうだったにも関わらず、ついて行きたいとゴネ始めたドリー。
置いていかれるのが許せないようだ。
こうなったら、もはや何を言っても収まりそうにない。
「あぁ、シンイチたちは、、、まいっかな?」
一瞬悩んだものの、軽い調子でマコがOKを出す。
だが許可を出していいのは、マコではなくコソフォたちである。
「お前さんらも女なんじゃろ?」
だがそのコソフォは、どうやら真一の性別を勘違いしているようだった。
しっかりと胸のある三つ首少女の姿だし、エピーとドリーは見たまんまの美少女だ。
真一自身も中性的な声と顔つきなので、二言三言程度の会話では気付かないのも無理はない。
「ミュイ〜、もちろんだよっ!!」
「ま、まぁ、そんなところです」
エピーまで当然!といった顔で断言するので、悪いと思いつつも今さら否定できない真一であった。
ここで男だと言っても話がややこしくなるだけだし、それよりも今は早く話を進めるべきだと思ったのだ。
きっとマコたちも同意見だったのだろう。
とはいえ真一は胸に一抹の不安を抱きつつあった。
結局キョロフを先頭に、ユキ、マコ、真一たちの4人(※6人)だけで、温室の扉へと近づいていく。
歩きながらキョロフがマコたちに提案してきた。
「それじゃ、まず私から声をかけてみるわね」
「はい、お願いしま…
「にゃニャぁっ!!!」
だがマコがキョロフに返事しようとしたところで、突然ドリーが大声を上げる。
驚いて何事かと困惑する他の面々。
そんななか腹ペコドラゴンは、、、
「中から美味しそうな匂いかするニャミュっ♪」
などと言うや否や、ドアに向かって突っ込んで行ったのである。
どうやら空腹が完全に限界に来ていたようだ。
大したことではないと判断したのか、それともこうなってはもう止まらないと諦めたのか、今回はエピーも止めに入ってくれない。
真一の不安は的中である。
呆気に取られるキョロフを尻目に、ユキとマコが素早く駆け出して止めようとする。
だがゴールド並みのステータスを持つ2人であっても、さすがにドリーには追いつけない。
「ドリー待って!入っちゃダメ…
慌てて止める真一だったが、僅か数メートルの距離では最後まで言う暇などなかった。
暴走した腹ペコドラゴンが勢いよくドアを押し開けて乱入する。
そうして真一はその『不思議な光景』を目にすることになった。
ーーーーー
朝霞は温室の中で、いつものように植物の世話をしていた。
こうやっている時間が、朝霞にとってはいちばんの幸せである。
毎晩の悪夢に出てくる少年の言葉と目の前に迫る破滅を、一時的にでも忘れることができた。
『ヒカるん』を出しながら、上機嫌で植物たちに『光』をあげる。
そんな朝霞は完全に油断しきっていた。
コソフォもキョロフも、朝霞のお願いを聞き入れてくれて、温室に入ってくることはない。
農園の従業員たちとも、朝霞が極力顔を合わせずに済むように気を回してくれている。
特に男の人たちには、決して温室に近づいたりさせないように取り計らってくれていた。
だから朝霞はいつもの『無防備な姿』で、『光やり』の作業を行っていた。
最初の頃はしっかりと入り口に閂をかけていたのに、すっかり慣れた今では施錠を忘れることすら珍しくない。
両手を大きく広げて、くるくると回転しながら、植物たちの間を踊るように歩き回る。
「花さ〜ん♪、草さ〜ん♪、げ〜んきに育ってね〜♫」
などとノリノリで鼻歌を歌いながら。
満面の笑みを浮かべて天真爛漫にはしゃぐ姿は、上機嫌そのものであった。
そんな様子で夢中になっていたせいで、朝霞は近づいてくるたくさんの足音に気付いていなかった。
遠くで交わされる話し声も耳に入らない。
焦った男の子の『待って!』という叫び声ですら、ほとんど気に留めることもなかった。
だが、その直後、、、
ダンッ!!!
大きな音を立てて温室の扉が乱暴に開けられる。
「ひゃっ!!?」
驚いて悲鳴を上げる朝霞だったが、扉の方に視線を向けてさらにびっくりする。
そこにいたのは、三つ首の美少女だったからだ。
地球ではもちろん、この世界ですら見たことのない『びっくり人間』。
朝霞は3人?の少女をポカンと見つめて固まってしまう。
今の自分の『あられもない姿』のことも、一瞬の間忘れてしまっていた。
ーーーーー
真一の止める声も間に合わず、強引に温室に乱入してしまったドリー。
「ひゃっ!!?」
温室の中にいた少女が悲鳴をあげる。
その少女は長い黒髪で、顔つきからして見るからに日本人である。
歳は高校生か大学生くらいだろうか。
エピーたちにも引けを取らない、びっくりする程の美少女だ。
だけど今の真一には、そんな少女の特徴のことなど、全く頭に入ってこなかった。
確かに日本人の勇者だな、なんて考える余裕もない。
天使のようなその美しい顔よりも、もっと下の方に目が行ってしまう。
思わず視線が釘付けになり、気を使って目を逸らすことすら忘れていた。
何故ならたくさんの植物に囲まれて立つその少女は、、、
素っ裸だったからだ。
少女は全裸で両手を大きく広げて、上機嫌で歌いながら舞い踊っていたようである。
突然の乱入者にそんな体勢のまま、驚愕して硬直していた。
だが一瞬のフリーズから我に返ると、みるみるうちに顔を真っ赤にさせる。
真一たちの視線に気付いて、ようやく自分の恥ずかしい格好のことを思い出したようだ。
真一が見るに、恐らく全裸である、その姿を。
目の前で見ているのに、どうして『恐らく』なのか?
それは、、、
「胸が光ってる、、、!?」
少女の左右の乳首が眩しく輝いていたからである。
あまりにも光が強くて、真一には隠された素肌が全く見えなかったのだ。
いや、光っているのは胸だけではない。
少女の下腹部も、目が痛いくらいに光り輝いている。
絶世の美少女の『いけない♡ところ』3か所が、ファンタジーな光で覆い隠されているのだ。
真一はアニメの露出シーンなどを何度か見たことがあった。
そういった場合、放送できないような『センシティブな部分』に、不自然な光などが入って裸体が隠されることが多い。
俗に言う『謎の光』というやつである。
目の前の光景はまさにそれが現実になったものであった。
困惑する真一の頭の中に浮かんだ思いはただ1つ。
『薄幸少女』と聞いてたのに、『発光少女』だったでござる!!
◆◆◆ 第4章タイトル訂正のお知らせ◆◆◆
✕『薄幸少女と疫病神の寵愛』
↓
◯『発光少女と疫病神の寵愛』
というわけで、4章のヒロイン朝霞のトンデモ登場シーンでした。