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4.27.151 プラチナ素材を探して

 ミドローの治療に必要な素材は、だいたい7000万円くらい。

 真一たちの本日の結晶トカゲの群れの討伐での収入でもまだ足りない。

 平均的な冒険者の稼ぎだと、15年分くらいの年収に相当するそうだ。


 もちろんゴールド(Cランク)のシドローたちなら、本来はその何倍も稼げる。

 だが残念なことにここバンリャガ周辺には、高難度のダンジョンが存在しないのだ。

 そのためズッホーという街などに出稼ぎに行ったりもしていたのだが、病気の妹を長期間1人にするわけにもいかない。

 生活費や日常的な治療費もかさみ、目標金額にはなかなか届かないそうだ。


「値崩れも期待できねぇ。需要があるからな」


 なんでもミドローの病気は珍しいとはいえ、それなりに症例はあるそうだ。

 そのため貴族や大金持ちで、欲しがる人が出てくることも少なくはない。

 それに対して偶然に見つかるファニカスの花の数は圧倒的に足りないのだ。

 日持ちもする素材なので、今すぐに金を出せる客が他にいないからといって、相場以下で売ってくれる可能性はないそうだ。


「ズッホーの馴染みの店に前金を渡して取り置いてもらってんだが、、、」


 シドローは知り合いの素材屋に定期的に手付金を渡しているらしい。

 今までの総額で❼⓿⓿リル(※❼シス(256)=※1792リル)までは払っているが、それでもまだようやく1割を超えたぐらいだ。

 何年もの間払い続けてそれなのだから、とても手が届くようには思えない。


「お願いだ。この聖剣があれば、もっと高ランクの狩り場にだって行ける。今までよりずっと効率的に金を稼げる。だけど今この聖剣を失ったら、ミドの命を助ける道が閉ざされちまうんだよ!!」


 シドローが必死の表情で真一に頼み込んでくる。

 ユキとマコもすがり付くような瞳で真一を見つめていた。

 真一も助けられるならミドローのことを助けたい。

 一度直接顔を合わせて言葉を交わした以上、もはや他人事として捨て置く気にはなれなかった。

 とはいえこれは真一が首を縦に振って解決する問題ではない。


「話は分かりました。だけど地道に依頼をこなしていって、本当に間に合うんですか?」


「それは、、、」


「アニキ!俺たちの貯金を使っていいから!」


「シュウ、そんなんでどうにかなる金額じゃないわよ」


 ナローズの4人はシドローたちに恩返しをするため、こっそりと貯金をしているという話だった。

 だがそれではぜんぜん足りないみたいだ。

 もちろん真一たちの全財産を投入すれば、何とかなるかもしれない。

 だけどそれはさすがに話がおかしいし、シドローたちも納得はしないだろう。


「俺らだって分かってんだよ、、、」


「だ、だけど、できなぃ、じっとは、から、、、」


「ミドのために最後まで足搔きたいんだ、、、」


 苦しげにそう漏らす兄弟の気持ちは、痛いくらいに伝わってきた。

 シドローたちだって本当は間に合わないことくらい分かっているのだ。

 真一たちがお金を出すのは最終手段として、何か手伝えることはないか聞いてみる。


「他の方法はないんですか?」


「あるとしたら超常の力。勇者の固有能力くらいなんだが、、、」


「あぁ、それでシドローさん、前に治癒魔法専門の勇者がいないか聞いてきたんだ」


 回復魔法、この世界では治癒魔法と呼ぶらしいが、一般的なそれは病気には効かないらしい。

 だけど勇者の特殊スキルであれば、病気に対応できるものがあってもおかしくなかった。


「いるのか、マコ?回復のユニークスキル持ち勇者?」


「いえ、残念ながら聞いたことないわね」


「だったら俺たちでそのなんとかって花を見つければ!」


 シュウがそう提案するが、、、


「出来るならとっくにやってるさ!ファニカスの花はどこか決まったとこに行けば見つかるってもんじゃねぇ。いつどこに咲くかは完全に運任せだ。山ほど人を集めて一生探し回っても、1つ見つかりゃ奇跡って話なんだよ!」


 何でもいまこのミグル《内側》に1つ咲いてればラッキー、、、くらいの確率なんだそうだ。

 日本列島がすっぽり収まるほどの広大なこのミグルで1つである。

 いま市場に出回っているのは、偶然に見つかったものが流れているだけ。

 地道に探すのはどう考えても無理筋であった。


「だったら、探索スキルを持ってる勇者とかいないのか?」


「それも聞いたことないわね。まぁ、探せば1人くらいはいるかもしれないけど」


「実物を売ってるとこはあるんですよね?それを栽培して増やしたりはできないんですか?」


「そんな方法があるなら、偉い治療学者がとっくにやってるさ。絶対に自然にしか咲かない花なんだよ!」


 真一が簡単に思い付くこと、など、過去にさんざん試された後だったらしい。


「ならそういうレアな花を栽培できる勇者とかは?」


「あぁっっ!」


 だが真一の言葉で何か思い出したのか、マコがいきなり大声をあげる。


「マコ、何か知ってるのか?」


「シドローさん、クッソフォ農園って知ってる?」


「あぁ、こっから外側へちょっと行ったとこにある大農園だろ。有名どころだな」


「でも普通の農園でしょ。このバンリャガに穀物を大量に送ってくれてるのよね?」


「今まではそうだったんだけどね、最近希少な薬草も納品するようになったらしいの。馴染みの魔術材屋さんが言ってた」


「希少な薬草だとっ!?ファニカスの花もか!?」


 マコの新情報に、シドローが声を荒らげる。


「さすがにプラチナ素材まではなかったけど、それでも普通じゃ考えられないくらいレアな素材を大量に持ち込んで来るんだって。何かスゴい栽培方法を編み出したんじゃないかって話よ」


「もしかしたらプラチナ素材も栽培出来るかもってワケか!」


「話を聞きに行く価値はありそうだな!」


 確かに今までの案に比べれば、まだ可能性は高そうである。

 そんなわけで真一たちはみんなでクッソフォ農園に向かうことになった。

 右腕の回収については、そのあとでまた相談だ。

 今からだと遅くなるので、明日の朝に待ち合わせて出発することにする。


「それじゃ、明日の❺ミック(1 / 16)日に外門に集合ね!」


 ユキが元気よく声をあげるが、、、


 いつだよ!

 どこだよ!


 ❺ミック日が何時で、外門がどこの門なのか、さっぱり分からない真一であった。


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