4.24.148 これぞ伝説の聖剣(笑)
今回が第4章パート2のラストとなります。
「ありがとう!参考になったよ!」
話もあらかた終わり、店を出る真一たち。
気絶していたチャラ男ことシュウも、とっくに目を覚ましている。
未だに未練タラタラでナンパを続けたそうにしているが、ユキとマコがガッチリとガードしてくれていた。
ちなみに今回の食費は10万円を軽く超えている。
めちゃくちゃ美味い店だったのだが、その分お値段は高めであった。
「それでシンイチはこれからどうするの?まさかいきなり天空神殿とか天山に挑んだりしないわよね?」
「あぁ、うん、さすがにもっとレベルを上げてからなかな」
通りを歩きながら、別れの挨拶がてらにユキが今後の予定を聞いてくる。
「まずはこの世界を見て回ってみるよ。レベリングとパーツ探しを兼ねて。この街じゃもう、できることはあまり無さそうだしね」
「だったらわたしたちがいたズッホーがいいかもね。アソコなら最高でシルバー(Bランク)向けのダンジョンとかもあるし」
ユキがオススメしてくれるが、シルバー(Bランク)程度なら、今までレベル上げしていた絶命の森の、中レベルのエリアと変わらない。
ドラゴンパワーレベリングをするなら、もう少し上のレベル帯の場所がいい。
「高難度ダンジョンなら、どんなとこがあるか知ってる?」
「世界最悪はもちろん『深淵迷宮』だな。4位の勇者もレベル100近くあったけど、あっさりヤラれたからな。下手したら幻獣種だらけなんじゃ?って話もあるぜ」
そこは地の底にまで達しそうなほど深い地下の大洞窟なんだそうだ。
奥の方はプラチナ(Sランク)のモンスターだらけの超高難度ダンジョンである。
攻略は行き詰まっており、どこまで続いているのか果てが見えないという。
下手したら至聖龍クラスのモンスターがゴロゴロいてもおかしくない。
いきなり突撃するには、ちょっとハードルが高過ぎるだろう。
「それに天山とか『ヴォイグル《未踏領域》』なんかも幻獣種の支配する世界よ。人間が近づいていい場所じゃないわ。天山の麓の絶命の森だって、プラチナ(Sランク)でも死にかねないらしいわ。森の外縁部なら大丈夫だけど、奥にちょっと入ればシルバー(Bランク)とかクロム(Aランク)でなんとかって感じね」
やはりこれ以上レベル上げをするとなると、あの森のさらに奥地ということになりそうだ。
ただしそこにはエピーたちを狙ってると思われるラスボス(仮)モンスターがいる。
出来れば近づきたくないところだった。
「他にプラチナ推奨のダンジョンは3つあるわよ。シャーラ遺跡、幻狼の森、タタルの大穴。まぁシンイチのペースでレベル上げしてれば、遠くないうちに挑戦できるかもね」
プラチナ(Sランク)推奨ということなら、出てくるモンスターの大半はクロム(Aランク)くらいだろう。
エピーたちが幻獣種だと知らないユキは将来的な話として言っているが、今すぐレベル上げに行くにはちょうど良さそうである。
そのあたりを巡りながら、この異世界を見て回るのが良さそうだ。
「分かった、ありがとう。パーツを探しながらいろいろ世界を回ってみるよ」
真一がそう返事をしたときだった。
「おーっ!元気そうだなっ、お前らっ!」
遠くから呼びかけてくる声が聞こえてきた。
横の通りから歩いてきた男が、手を振りながら叫んできたのだ。
40歳くらいだが、引き締まった筋骨隆々の大男である。
ゴツい金属製の鎧を着ていて、背中には剣のようなものを背負っている。
後ろにあと3人いるが全員が戦闘用の装備であり、明らかに冒険者パーティーであった。
「アニキっ!?」
「シドローさんっ!帰ったんだ!」
「おかえりなさ〜い♪」
「アニキっ、もう大丈夫なんすか?」
そんな強面の大男を見て、ユキたちが嬉しそうな声を上げる。
「あぁ、もう身体はバッチリだぜっ!」
目の前までやって来た大男は、そう言って右手で力こぶを作る。
話からするに、ナローズの恩人である例の『山兄弟』というゴールド(Cランク)パーティーのようだ。
「最強の武器も作って来たし、今ならホッス渓谷にだって再挑戦できるかもな!」
背中に背負っている剣を親指で示して、ガハハと豪快に笑う冒険者の男。
だがホッス渓谷の依頼は既に解決済みである。
「あ、、、それがアニキ、例のホッス渓谷の問題なんだけど、、、」
「おぅおぅ、エラいべっぴんの嬢ちゃんを連れてんじゃねぇか!またシュウのアホが引っ掛けたのか?」
言いにくそうにトモヒコが伝えようとするが、男は聞いちゃいなかった。
それよりも隣にいる真一たちのことが気になるらしい。
「あ、うん、またシュウが迷惑かけたから、お詫びにいろいろ教えてあげてたの」
「嬢ちゃん、アンタ見たことない獣人だなぁ。まぁともかく、コイツら勇者だけど素直でいい奴らなんだよ。勇者だからって嫌わずに仲良くしてやってくれよ」
「ミュイっ!」
「ニャミュ♪」
「「アニキぃぃっ!!」」
男の優しい言葉に、目を潤ませ鼻水混じりに感動の声をあげるトモヒコとシュウ。
正直言って、ちょっと引きそうになる真一であった。
「シドローさん、ちょっと恥ずかしいからやめてよ。あ、シンイチ、この人たちがわたしたちがお世話になっている『山兄弟』よ」
「あぁスマン、自己紹介が遅れたな。俺はバンリャガ最強のゴールド冒険者。あの『シドロー・モドロー兄弟』のシドローたぁ、俺のことだ」
シドローモドロー兄弟っ!?
その名前にツッコむのはマズいのか?と、真剣に悩む真一。
しかもシドローはめちゃくちゃ饒舌で、ぜんぜん『しどろもどろ』ではなかった。
ナローズの4人は真面目な顔をしているので、ここは笑う訳にはいかないと、気を引き締める真一だった。
そんななかシドローが紹介を続ける。
「で、こっちが弟のモドロー」
「よ、よろっく、、、」
弟は本当に『しどろもどろ』なのかよっ!!
と、思わずツッコミそうになる真一であった。
「ママスミグル、魔術師のカッスだ」
「同じく魔術師のミンナーだ」
後ろの2人も挨拶してくる。
さっき依頼の説明でナミンに聞いていた通り、前衛の戦士2人と魔術師2人という構成の4人パーティーであった。
「それでアニキ、ミョッコの街はどうだったんだ?」
「あぁ、『治癒院』で無事に全員治してもらえたぜ。出費は痛かったけどな」
「ぶ、武器、その代わ、武器が、に、兄さんの、、、」
「あぁ、ミョッコでいちばんの鍛冶屋で武器を作ってもらえたぜ。ホッス渓谷で手に入れた最強のダンジョン素材でな!」
「出来たんですか!?言ってた伝説級の聖剣!」
「あ、いや、それが硬すぎて剣には加工できなくてな、そんで棍棒をあつらえてもらった」
「見ろ、これが俺の新しい相棒、『聖剣シドル』だっ!?」
自慢気にそう言って、シドローは背負っていた聖剣シドルを前に構える。
まぁ聖剣といいつつ、実際には棍棒であった。
持ち手部分は硬そうな金属で作られており、その先の刀身部分も途中までは同じく金属製だ。
つまり聖剣の下側80センチくらいは、普通の金属で出来た棍棒である。
違うのは棍棒のそこから先が、特殊なダンジョン産の素材でできていたこと。
「あーっ!!」
そしてその特殊素材を目にした瞬間、真一は反射的に叫んでいた。
下側の金属部分によってガッチリと固定された先端部分は、棒状の不思議な形をしている。
長さは20センチちょいといったところで、柔らかそうな見た目だ。
だけどその素材がプニプニした見た目に反して凄まじく硬いことを、真一は良く知っていた。
なんせソイツは、防御力が65535もある勇者チート持ちなのだから。
「それ!俺の腕ぇぇぇっ!!!」
ようやく1つ目のパーツを発見して、思わず歓声を上げる真一であった。
これにてパート2は完結となります。
異世界ミグルのビックリ環境が明らかになったパート2、いかがだったでしょうか?
割と真面目にSF設定をしている本作でした。
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第4章の導入パートもここまで。
明日からのパート3ではいよいよ真一のパーツも見つかり、物語が大きく動き始めます。
さらなるトンデモな新ヒロインの登場もあるかも?ですので、ぜひお楽しみに。