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4.15.139 Nの悲劇

 4人の『失敗』スキルについて、恐る恐る聞いてみる真一。

 するとお互いに顔を見合わせた3人の勇者だったが、、、


「あはは、それ聞いちゃう?」


 何やら面白そうに吹き出したのはユキであった。

 センシティブな内容かと思ったのだが、それほど気にしてはいないようだ。


「気にすんなよ、今や笑い話だからな」


「うん、最初はすっごくヘコんだけど、最近はほとんど持ちネタだよね〜」


 残り2人もなんだか楽しそうにしている。


「じゃあ、俺のネタから行かせてもらうぜっ!」


 最初に話し始めたのは、金属と皮でできた鎧を着込んだ戦士トモヒコだった。

 その様子はまるで、コントの発表会である。


「俺のスキルは『話術』だっ!」


「それってけっこう便利じゃないのか?何が失敗なんだ?」


 最初はなんでまた『話術』なんて選んだんだろ?と疑問に思った真一。

 だけど使いようによっては便利そうだし、失敗スキルだと言うのは大袈裟だろう。


「あぁ、確かに俺のスキルは今でもかなり使えるぜ。ただなぁ、、、俺って元は異世界でお笑い芸人になろうと思ってたんだよ!」


「へ?」


 あまりにも予想外の告白に、思わず変な声が出た真一だった。

 そんななかトモヒコが詳しい事情を説明してくれた。


「異世界に地球のモノを持ち込んでチートって定番だろ?で、何がいいかな〜って考えたときに、俺ってお笑い好きでさぁ。異世界にお笑い文化を広げて、てっぺん取って、世界中からチヤホヤされるんだ!!ってな!」


「それで?」


「人前でネタやったら馬鹿にしてんのか!って殴られた。この異世界、殺伐としすぎててお笑いどころじゃないんだってさ」


「こっちの人、冗談すら言わないもんねぇ」


「マジかよ、、、」


 バンリャガの街にやって来てまだ数日の真一だが、確かにこちらの人々が冗談を言うところは見たことがない。

 だけどまさかジョークのない世界が存在するなんて、カルチャーショックにも程があった。

 そういえば先日『心臓移植をすれば歌が上手くなる』なんて冗談を言ったが、ドリーもエピーも真に受けてしまっていた。

 本当にこの世界には冗談という概念が無いのかもしれない。


「次はアタシね〜」


 続いて『ネタ』?の披露を始めたのはオシャレ魔法使いのマコだった。


「アタシのスキルはねぇ〜、『闇魔法』っ♪」


「えっ!?普通にカッコよくない?」


「でしょでしょ!アタシ結構『厨二』好きでさぁ。やってみたいでしょ!『闇に呑まれて溺れ死ねっ!』みたいなっ!!!」


 まるでアニメのようにフリ付きで、格好をつけてセリフを口にするマコ。

 オシャレな外見通り、コミュ力があってテンションの高い子だ。

 闇魔法がカッコいいという嗜好しこうも、真一としてもかなり共感できる。


 だけど厨二病の趣味と陽キャな性格が、どう見ても噛み合っていない。

 真性の厨二ではなく、ファッション厨二なんじゃないだろうか?

 『わたしすっごいマニアックな漫画とか好きで〜、最近見つけてハマってるのは『ワンピーチ』で〜す♪』、みたいなアレである。

 とはいえ闇魔法が外れスキルだなんて考えにくい。


「それは分かったけど、ぜんぜん失敗じゃないだろ?闇魔法ってめっちゃ強そうだし」


「なかったの」


「え?」


 まさかの一言に理解が追いつかず、言葉が出てこない真一。


「だからね、、、この異世界の魔法に闇属性なんてないの」


「マジで?」


「最初から使える初級魔法でちょびっと闇を出せるだけ。火とか水とか選んだ人らはバンバン上級魔法とか覚えてくのにさぁ、、、」


「あ、うん、、、」


「いくら闇属性に適性があっても、下級以上の闇魔法なんて無いから意味無いの、、、」


 確かにそれはヒドすぎるトラップである。

 さっきはネタだなんて言っていたが、マコの表情はかなり悲しそうだった。

 決して笑っていい話には思えない。


「じゃあ次は伸びてるコイツね」


 次はチャラ男シュウのスキルである。

 まだ気絶しているので、本人に代わってユキが説明してくれた。


「コイツは見ての通りなんだけど、異世界でハーレムやりたかったんだって。だからスキルは『魅了』」


「それって結構な強スキルじゃないの?」


 『魅了』はいろんな作品でよく登場するスキルである。

 主人公サイドではなく敵サイドに多いが、それだけに極めて厄介かつ凶悪だ。

 とてもじゃないが失敗スキルになるとは思えない。


「そう、凄まじいスキルよ。出会った異性は全員自分のモノにできるとんでもないスキル。ハーレム作り放題でしょうね、、、地球だったら」


「えっ!?」


「他種族には効かないの。オークやゴブリンのメスにたかられても困るでしょ」


「あぁ、なるほど」


「ただね、この異世界の人間って、地球人とは別の種族だからさぁ、、、」


「ほら、指も4本しかないだろ?」


「あっ、、、、」


 ようやくユキたちの言わんとしたことを理解した真一。

 要はシュウの魅了スキルは、地球人の女子にしか効かないのだ。

 ミグル人しかいないこの異世界ミグルでは、完全に役立たずである。


「あれっ?だけど同じ日本人の勇者なら効くんじゃない?」


「えぇ、効くわよ。だけどよっぽどのレベル差がないとレジストされるの。勇者は称号の補正効果で状態異常にも強いから」


「今のシュウはレベル30くらいなんだけど、それじゃレベル1の新人勇者にすら効かねぇんだ」


「最低でもレベル64の上級まで上げないと、話にならないでしょうね。そういうわけでコイツのスキルはココじゃ完全に死にスキルってわけ」


 なるほど、確かにそれはどうしようもない外れスキルである。

 魅了とか選んでる時点でシュウの人間性はどうかと思うが、ここまで意味なしスキルだとさすがに可哀想になってくる。


 とはいえこのチャラ男はレベル30もあるらしい。

 真一の倍近くである。

 この4人はどうやらかなり強いようだ。

 それもそのはずで、4人はこのミグルに来てからもう700日近くもずっと戦ってきたらしい。

 もっとも凶悪ドラゴンたちに比べれば、真一と変わらない雑魚レベルなのだが、、、


「それじゃ、最後にわたしね。わたしの転生特典は見ての通りよ、ほらっ」


 そう言ってユキは腰に吊るしていた袋から何かを取り出してテーブルに置く。

 それは真一にとっても馴染み深い、『あの』デバイスだった。


「チャラララ〜♪、スマホ〜♫」


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