1.13.13 【エピローグ】この異世界の片隅に
真一の目標は、、、残り15個のパーツを見つけ出すこと。
広大な異世界に散らばっていると思われるパーツを探し出すのだ。
気が遠くなりそうな難行である。
だとしても地道に一歩ずつ進めていくしかない。
そして真一は最初の手がかりを見つけた。
命の恩人である『ヒーラーさん』が、真一の『右手』を持っているのだ!
そして、、、
それ以外の14個のパーツは、いったい何処にあるのだろう?
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①
見るからに豪華な屋敷の中。
その部屋も明らかに豪華絢爛といった様子である。
にも関わらず、そこはまるで『檻』のような寂しさと物悲しさを感じさせる部屋であった。
昼間だというのに部屋の中は薄暗く、けれども照明は点けられていない。
そんな暗い部屋の中で、部屋の主は床に1人座りこんでいた。
そしてその人物は、フワフワの絨毯の上に落ちている『ソレ』をじっと眺めている。
口元にごくわずかではあるが微笑みを浮かべて。
やがてその人物は恐る恐る『ソレ』に手を伸ばし、、、
「んっ、、」
けれども散々悩んだ挙げ句に、可愛らしい溜め息を吐いて手を引っ込めるのだった。
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②
全てを凍て付かせる凍土。
容赦なく吹き付ける吹雪は、あらゆる生命の営みを簡単に奪い去る。
そんな死の大地にあって、『ソレ』は完璧なまでに凍りつき、動きを止めていた。
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③
灼熱の溶岩が明明と照らし出す洞窟の奥。
そこは生命にとっては耐え難い過酷な場所。
もしここに財宝でも隠されていたとしても、並の人間では近寄ることなど不可能だ。
ただでさえそんな発見が困難な洞窟の中でも、『ソレ』を見つけるのはさらに絶望的であろう。
煮えたぎるマグマの湖の底に沈んでいるとあっては。
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④
陽の光も届かぬ深い水の底。
そんな場所に沈んでいる『ソレ』に魚が群がっている。
明らかに有機物のソレは、魚たちにとってはご馳走に感じられたのだ。
だが小魚たちの弱々しいアゴでは、ソレを噛み砕くことは不可能であった。
散々トライしたものの無駄と思い知った魚たちは、興味をなくしたものから一匹また一匹と泳ぎ去っていった。
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⑤
風の吹きすさぶ荒野。
草木も生えず、生物の気配もない。
そんな荒野にポツンと、、、
『ソレ』は落ちていた。
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⑥
取っ組み合いをするオスたち。
その闘いを周りから囃し立てるメスたち。
そんな騒がしい輪の中から外れた場所に、『ソレ』は人知れず転がっていた。
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⑦
鬱蒼と茂る密林の中。
その生き物はヨダレを垂らしながら歩き回っていた。
さっき食べた固くて味のしない『ソレ』くらいでは、満腹には程遠い。
その生き物は次なる獲物を求めて、さらに森の奥へと進んでいった。
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⑧
四方を明かりで照らされた祭壇。
その祭壇の周りを群集が取り囲んでおり、一心不乱に祈りをささげている。
とはいえその群れは明らかにヒトのものではない。
もっと毛むくじゃらの生き物だ。
そして祭壇に祀られている『ソレ』は、、、
ヒトの腕のように見えた。
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⑨
「やべぇぇっ!!」
粉々に砕け散った剣を呆然と見つめて、男は悲鳴を上げる。
男の愛剣はなかなかの業物だったのだが、巨大なトカゲの背に生えたクリスタル状の硬い外殻には歯が立たなかった。
通い慣れた狩り場だったはずなのに、こんなとんでもないモンスターに出くわすなんて。
前衛陣の武器は全て破損し、後衛陣の魔法も全く効いていない。
そして逃げ道も塞がれている。
パーティの全滅は目前に迫っていた。
それでも生きている限りは最後まで足掻くしかない。
せめて何か武器の代わりになるものでも落ちていれば。
コイツ相手なら、打撃武器の方が有効だ。
とはいえ普通の岩なんかでは、簡単に砕かれてしまう。
棍棒代わりとなる金属系のものが転がってないかと周りを見渡す。
そんな男の視界にふと映った『ソレ』は、肌色で棒状の何かであった。
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⑩
「なんじゃこりゃ?」
畑を見回っていた男は、見慣れないものを見つけた。
収穫物の入ったカゴと農具を置いてしゃがみ込む。
「どうかしました?」
後ろから少女の愛らしい声がするが、『ソレ』に気を取られた男の耳には届かない。
畑には大根のような形の薄桃色の根菜が、等間隔に植えられている。
あと何日かで収穫時期といったところだ。
だが規則正しく並んでいる大根モドキの列が、一箇所だけ不揃いになっている。
男が様子をよくよく見てみると、大根モドキに混じるようにして、、、
細長い肌色の『ソレ』が、まるで最初から畑に植えられていたかの如く埋まっていた。
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⑪
その場所を一言で表すなら、秘境であった。
人間を寄せ付けない大地。
神秘的なエネルギーに満ち溢れた世界。
だがそこを秘境たらしめている最大の要因は、、、
その生物の存在に他ならない。
それはこの世界の頂点たるもの。
そんな超常生物の足元に、『ソレ』はあった。
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⑫
明らかに人の手で作られたものとは一線を画す、神々しい建造物。
そこから外界を見下ろすと、壮大な景色が広がっていた。
あまりにも巨大な、灰色と紫色の入り混じった球体。
グロテスクな色彩のその球体は、一言で表すなら死の惑星といったところである。
だが瘴気に覆われたその惑星の表面に、ピンク色の巨大な円に覆われた美しい領域があった。
この世界そのものたる、『内側』の領域が。
そんな領域のはるか頭上を公転するこの衛星神殿は、まさに神の座といった様相を呈している。
この世界の起源よりずっと、1度たりとも人が足を踏み入れたことのない神聖なるその地に、『ソレ』はただポツンと存在していた。
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⑬
光の届かぬ洞窟の奥。
ただでさえ人を寄せ付けぬ場所であるというのに、その空間は死の瘴気にまで満たされていた。
大型の動物でさえ、一口吸い込めばたちまち命を失うほどの猛毒だ。
そんな洞窟の終点に、『ソレ』は無造作に落ちている。
そしてその一室には、、、
人の力の遠く及ばぬ存在があった。
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⑭
荒れ果てた大地。
昼間でも瘴気の雲に覆われた、日の差さぬ大地。
毒々しい暗雲からは、ひっきりなしに稲妻が落ちている。
この世の終わりのようなそんな場所にあって、、、
その巨大な建物は優雅さを感じさせる佇まいをしていた。
そしてそんな建物の中でも最も奥にあり、なおかつ最も豪華な部屋には、1人の人物がいた。
窓から試練の大地を見つめ、溜め息を漏らしている。
だがその人物はふと何かの気配を感じて振り返る。
違和感の元は『寝具』の上にあった。
さっきまでそこには何もなかったのだ。
そのはずなのに、そこには『ソレ』があった。
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⑮
「館長、見てください!これっ!!」
男は箱に入れた『ソレ』をよく見えるように差し出す。
「こ、これはっ!!」
第1章 『生首だけでコンニチハ』 完
次回 第2章 『首だけ勇者と異世界ヒロイン』
これにて第1章は完結となります。
ここまで読んでくださってありがとうございました。
2章ではいよいよ異世界のヒロイン候補たちが次々と登場しますのでご期待ください。
プロット上では10章ちょっとまである物語ですが、2章までは出来る限り高頻度で更新していく予定です。
3章以降の更新予定は未定ですが、もし続きが気になる!と感じていただけましたら、評価・ブックマークで応援をいただけると嬉しいです。




