4.3.127 狩猟クエストで一狩り(※乱獲)行こうぜ
ボードの前では2組のパーティーが依頼を眺めていた。
2人組と4人組のようだが、そのうち4人組の方が何やら騒がしくしていた。
「あぁもぅっ!バージャが寝坊するからロクな指定依頼が残ってないじゃない!」
「わりぃ。だったら今日は自由依頼でもやるか?」
「それじゃ大した稼ぎになんないでしょ。キツいけどバジゴリ農家のアレにしましょっ」
「マジかよぉ〜。メチャクチャ重労働じゃねぇかぁ、、、」
ガヤガヤと話していた4人組だったが、受ける依頼を決めたようだ。
さっきから騒がしくしていた女性冒険者が、ボードに書かれたクエスト票の1つに、自分の冒険者タグをタッチする。
するとそのクエスト票に表示されている文字がピカッとオレンジに輝き、次いで暗くグレーアウトした。
依頼を決めたそのパーティーは受付の方へと向かっていき、見覚えのある受付嬢と話を始めた。
前回真一たちの冒険者登録をしてくれた、ナミンである。
気になった真一は、彼女たちが受注した依頼の内容を読んでみる。
文字の光が暗くなっているが、書かれている内容はちゃんと読みとれた。
『
〜〜〜予約済み〜〜〜
種別:ランク指定【アイアン(Fランク)】
対象:4人以上のパーティー
内容:肉体労働、モンスターからの護衛
期間:日中
報酬:❹リル《価値》
依頼者:ギャッタ農場
』
『予約済み』となっているので、どうやら先ほど冒険者タグをタッチしたのは、依頼受注の予約をするためだったようだ。
いまは受付で何やら話しているので、そこで正式に受注をするシステムなのだろう。
彼らが受けた依頼は、アイアン以上が条件のランク指定依頼のようだ。
冒険者ギルドのクエストには、『ランク指定依頼』と『自由依頼』の2種類があるという話だった。
アイアン(Fランク)は下から2つ目のランクだから、かなり初級者向けのクエストみたいである。
といっても真一たちは最も低いレッド(Gランク)なので、こんな依頼ですら受けられない。
「シン、どうせだからいちばん高い依頼をやろうよ!」
エピーはそんなことを言っているが、真一たちが受注できるのはレッド(Gランク)の指定依頼だけ。
だけど真一たちはかなり出遅れたらしく、良さそうなランク指定依頼は残っていないようだ。
さっきのパーティーが話していた通りである。
その彼らはナミンに受け付けてもらって、受注手続きが完了したようだ。
それに伴い暗くグレーアウトして表示されていたさっきのクエスト票が、ボードから消滅した。
空いたスペースに、横に並んでいたクエスト票がスライドしてくる。
どうやら正式に受注されたクエストは、こうやって依頼ボードから消えるシステムのようだ。
ボードに残っているランク指定依頼でレッド(Gランク)でも受けられるのは、二束三文レベルのハズレ依頼だけだった。
こんなものエピーもドリーも納得しないだろうし、真一だってやりたくない。
そこで真一は自由依頼の方に足を向ける。
自由依頼は冒険者ランクに関わらず、どれでも受注可能なのだ。
そこに書かれていたのはほとんどが常駐依頼で、多くはモンスターの討伐か、アイテムの採取のようだ。
ただし討伐依頼の対象はザコいモンスターばかりで、報酬額はランク指定依頼よりもさらに低い。
これもさっきのパーティーがボヤいていた通りである。
ナミンから聞いていたが、この街の周辺には弱いモンスターしか生息していないのだ。
自由依頼の受注にはランク制限はないが、それでも推奨ランクはちゃんと記載されている。
だけど掲示されているクエストは、ほとんどがアイアン(Fランク)かカッパー(Eランク)推奨の低ランク依頼だった。
1つだけそれ以上のものがあったが、それもニッケル(Dランク)止まり。
報酬もわずか❷リル《価値》(※約1万円)だ。
「う〜ん、ロクな依頼がないなぁ」
真一たちが前に持ち込んだシルバー(Bランク)に相当するモンスターの討伐依頼など皆無である。
その下のゴールド(Cランク)ですらありそうな気配がない。
やはりこの街は冒険者活動には向いていないようだ。
さっさと見切りをつけて、もっと効率的な狩り場に拠点を移すべきだろうか。
真一がそんなことを考えていると、ドリーが1つのクエストを指差した。
「シン、あれなんかいいんじゃないニャミュ?」
それは依頼ボードのいちばん上の中央に表示されていた。
等間隔に整列されている他の依頼とは離れているので、真一は見落としていたのだ。
他とは違って赤く光る文字で表示されており、見るからに毒々しい感じのヤバげな雰囲気を醸し出していた。
『
種別:自由依頼
推奨ランク:シルバー(Bランク)〜クロム(Aランク)
対象:制限なし
内容:ホッス渓谷の偵察、可能ならばモンスター駆除
期間:偵察完了まで
報酬:最低❽⓿リル《価値》 追加報酬あり
依頼者:バンリャガ ギルド
』
推奨ランクがシルバー(Bランク)以上の高ランク依頼で、報酬も桁違いであった。
このバンリャガの街には、最高ランクでもゴールド(Cランク)の冒険者が1組いるだけだったはずだ。
確か『何とか兄弟』みたいな名前のパーティーだ。
だというのにこの依頼は推奨ランクがそのパーティーより1〜2ランク高い。
つまりこの街では受けられる人が誰もいないということである。
どうしてそんな依頼が表示されているのかは謎だ。
文字も赤いし、緊急クエスト的なヤツなのだろうか。
「ミュイ〜、これでいいよねっ!」
真一がアレコレ考えていると、エピーがさっさと受注を決めてしまった。
止める間もないまま、首から下げていた冒険者タグを、クエスト票の文字にタッチする。
すると文字がピカっと光り、次いでグレーアウトする。
お利口さんエピーはひと目見て依頼の受け方を理解していたようだ。
そんなに頭がいいんだったらその前に相談してほしかった、と頭を抱える真一だった。
「エピーちゃん、エピーちゃん、初めてのクエストでこれはやり過ぎなんじゃない?」
「ミュイっ?そうかな?シルバー(Bランク)からクロム(Aランク)って昨日持ってきたモンスターくらいでしょ?」
「そんなの余裕ニャミュ!」
「それはそうなんだけど、冒険者成り立ての俺たちがいきなりこんな高ランク依頼って変じゃないか?」
「ミュイ〜、何が変なの?他のちゃっちい依頼をやる方がおかしくないかなぁ?」
「むっ?言われてみればそうかも、、、」
エピーに言われて考えを改める真一。
確かにこういう場面で変に遠慮してしまうのは、日本人的な感性なのかもしれない。
至聖龍のスペックからすれば、シルバーやクロムの依頼だって簡単な部類だ。
なんせプラチナ(Sランク)以上だった魔王軍四天王(笑)ですら、簡単に倒したのだから。
冒険者になったばかりとはいえ、この依頼を受けるのに何の問題もないだろう。
そういうわけで、さっそく真一たちは依頼受注のため受付に向かう。
窓口には職員が3人いるが、顔見知りのナミンはさっきの4人組とまだ話しているようだ。
その隣の女性は空いているようだったので話しかけてみる。
「あの〜、依頼を予約したんで手続きしてほしいんですけど、、、」
その女性職員は前に来たときには見かけなかった人だ。
優しそうな印象の愛想のいい人である。
冒険者タグを渡すと、さっそく作業を始めてくれた。
「はいっ!えーと、エンプレス・ギドリー・シンイチ〜、、、さん!冒険者登録されたばかりなんですね。ママスミグル、わたしはバンリャガギルドのショーミと言います。よろしくお願いしますね」
「ま、まますみぐる。こちらこそよろしくお願いします」
三つ首ビックリ人間にも顔色ひとつ変えずにしっかり対応してくれる。
ナミンと同じく、プロ意識のある素晴らしい職員さんであった。
「それで予約された依頼は〜と、、、あ゛ぁっ!?あんたアホですかっ!?」
真一たちが予約してきた依頼の情報を目にするなり、ショーミが素っ頓狂な声を上げる。
さっきまでのにこやかな笑顔は、一瞬にして吹き飛んでいた。
なろうのシステムUIが変更になったみたいですね。
かなり手間取ってしまったので、ちゃんと更新できているか少し不安です、、、