4.1.125 【プロローグ 】追い詰められた彼女
第4章プロローグのみ、先行更新です。
■■■ 第4章 あらすじ ■■■
異世界へ首だけで送られてきた真一は、左の首を亡くした三つ首ドラゴンのエピー&ドリーと融合した。
そうしてドラゴンとなった真一たちは、人化して人間の街を訪れる。
だがドラゴン娘たちは数々の騒動を巻き起こし、ついには超人気アイドルのルミッコとの全面対決まで勃発。
逮捕&死刑の危機をなんとか切り抜け、無事に一件落着を迎えた真一たちであった。
とはいえトラブルは収まるどころか、さらに加速しようとしていた。
新米ドラゴン勇者に、次々とヤバい奴らが迫り来る。
悪名高き謎の冒険者パーティーの魔の手。
とある村を滅ぼした不気味な傷だらけの女。
上空を飛ぶ巨大な影。
近づいてくる魔王軍の足音。
そして真一たちの前に現れる、人類史上最悪に不幸な少女の正体とは?
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『ソレ』は諦めつつあった。
せっかく目をかけてきた『モルモット』なのに。
あれだけの『加護』を与えたというのに。
どれほど面白い結果になるかと期待していたが、何の成果も出ないまま。
そしてついに『終わりのとき』が迫りつつあった。
本来なら『ソレ』が介入して、状況改善を図るところだ。
けれども『あの世界』にいるのでは手出しもできない。
決して安くはない投資をした『モルモット』が最期のときを迎えるのを、ただ指をくわえて見ているだけ。
『ソレ』は何かが起きてくれないかと、願うことしかできなかった。
ーーーーー
「ゃだぁっ!!」
深夜の真っ暗闇の中、薄幸少女は酷い悪夢からガバっと飛び起きた。
服は汗でぐっしょりである。
ハァハァと乱れる息を整えながら思い出す。
今の恐ろしい悪夢は、ただの夢なんかじゃない。
何故なら夢の中に見覚えのある『あの少年』が現れたからだ。
彼女は勇者である。
いや、勇者であるらしい。
『魔王と戦う使命を受けてこの異世界にやってきた勇者』、、、なのだそうだ。
『らしい』というのは彼女自身が良く分かっていないから。
突然白い世界に呼び出されて、、、
神のようなものと名乗る怪しい少年から一方的に話をされて、、、
そのあとまたしても、『お約束』のドタバタ劇があって、、、
そして気付いたら彼女はこの世界にいたのだ。
地球とは全く異なる世界の、猛獣だらけの危険な森に、1人ぼっちで。
確かに彼女は体質的に、トラブルには慣れっ子である。
普通では考えられない程の不運に見舞われることなど、日常的に経験してきた。
けれどもいくら彼女が不幸体質とはいえ、さすがに命の危機にさらされたことなど、今までの人生で20回くらいしかない。
そんな薄幸少女にとっても、今回の状況はさすがにあんまりであった。
突然に家族や普通の生活を全て失い、異様な世界にたった1人で放り込まれて、、、
そして何より、この世界には至るところに死の危険があった。
ここにやって来てもう2年くらい経つが、死にそうになったことはもはや数えきれない。
か弱いただの女子校生でしかなかった彼女がなんとか生き延びられたのは、運が良かったからにすぎない。
不幸体質の彼女が運良く生き延びるなんて、気の利いた皮肉としか言いようがなかった。
あえて運以外の要因があるとしたら、それは彼女が持つ不思議な力、『ヒカるん』のおかげかもしれない。
『ヒカるん』は彼女がこの世界にやって来たときにもらった力である。
魔王と戦うために授けられた特殊能力だそうだが、正直良く分からない。
そのあたりの説明は途中でウヤムヤになってしまったからだ。
魔王と戦う使命うんぬんも、何の説明もなしに送り込まれてきたのである。
『ヒカるん』の能力なんかでは、魔王と戦うことなんてできるはずないのに。
そもそも虫も殺せない彼女の性格では、戦闘行為なんて無茶にも程があった。
だから、、、
今さら魔王と戦えだなんて言われても困るよぅ、、、
彼女はこの世界に来てから、まともに何かと戦ったことなどない。
いきなりモンスターだらけの森に送られてきて。
最初はとにかく逃げて逃げて逃げ続けた。
悪運と『ヒカるん』のおかげで何とか逃げ延びて、ようやく人の住む街にたどり着いて。
だけど気弱な彼女には、この世界の街でたった1人生きて行くことなど、あまりにもハードルが高かった。
それに何よりこの世界の住人は、地球人に、勇者に、凄まじい悪感情を抱いていた。
入った店からは罵倒されて追い出された。
勇者を憎む住人から石を投げつけられた。
住民たちに襲われ追いかけられたこともあった。
そして最後には騙されて、貞操の危機にまで追い詰められた。
それでもなんとか命からがら街を逃げ出して。
空腹でフラフラになりながら、行く宛もなく彷徨い歩いて。
そうしてついには行き倒れて動けなくなってしまった。
そんな彼女が彼らに出会えたのは、本当に運が良かったとしか言いようがない。
彼女の人生で最大の幸運と言ってもいいだろう。
だから彼女は今までずっと、2人に恩を返すために頑張ってきたのだ。
だというのに、、、
『アーサちゃん、なーにやってんのかなぁ?そろそろちゃんと魔王と戦ってもらわないと困るよ』
先ほどの悪夢の中で言われた言葉が、今も彼女の頭の中でグルグルと響いていた。
『このままだとアサちゃん、ヒドいことになるから。覚悟しといとね』
夢の中でそんな脅しをかけてきたのは、白い世界で出会ったあの少年だった。
その言葉がただの夢だなんて、彼女には全く思えない。
何故ならもう10日以上もの間、彼女は毎晩同じ夢を見続けているのだから。
この悪夢は間違いなく警告である。
そして破滅のときは目の前に迫っていた。
『あと5日、、だよっ♪』
夢の中での少年の最後の言葉を思い出して、、、
薄幸少女は真っ暗な寝室で1人ガクガクと震えるのだった。
第4章は来週の後半あたりからスタートの予定です。
もうしばらくお待ちください。