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1.10.10 仮説

■ここまで■

必死の努力も報われず、ついに真一の残りHPが1となった。

 頭がクラクラして、急速に体力が奪われていく。

 もはや声を出す力すら残っていない。

 身体から血の気が引いていき、脈が弱々しく、遅くなっていく。

 どこかにある心臓が鼓動を止めつつあるのだ。

 それとともに真一の意識も薄れていき、闇の中に飲み込まれていった、、、


 、、、


 、、、


『※ュ※ア』


 、、、


 幻聴だろうか?


 女の人の声が聞こえた気がした。


 だが次の瞬間、真一の身体に目に見えて変化が現れた。

 急速に意識が覚醒する。

 死にかけていたはずの体に活力が戻ってきた。

 ふと出しっぱなしにしていたステータス画面が目に映る。


ーーーーーーーーーーーーーーー

HP:20 / 20

MP:1 / 20

ーーーーーーーーーーーーーーー


 何故かHPが全快していた。

 意味が分からない。

 HPが勝手に回復する仕組みなんて、何かあっただろうか。

 だがいくら考えてみても心当たりなどない。


 もしかしてあの少年が復活スキルでも仕込んでくれていた?

 あるいはあの白い世界から真一を観察していて、ピンチに回復してくれた?


 いやいや、それは有り得ない。

 あの神さまはどちらかというと邪神の部類に違いない。

 真一の直感がそう告げている。

 アイツは真一のことなんてゴミ扱いしていた。

 あのときの会話や態度の端々(はしばし)から、悪意のようなものが感じられたのだ。

 異世界に送ってすぐ死にそうになったからといって、助けてくれるはずがない。

 さっさと真一のことなど忘れて、次の『下等生物』をこの異世界に送り込むだけだろう。


 だったら何が起きたというのか。

 真一は何もしていないのに。

 どう考えても他の誰かが何かしてくれたようにしか思えない。


 いや、、、実際にそうじゃないのかっ!?


「誰かが助けてくれた!?」


 アイツじゃない誰かが。

 そういえば、薄れいく意識の中で女の人の声を聞いた気がする。

 もしかして、、人が通りがかって助けてくれたのでは!!?


 そう思い至った瞬間、真一は慌てて周囲を見回す。

 けれどもどこにも誰も見当たらなかった。

 気配すら感じない。

 舌を使って生首を回転させ後ろを見てみるが、やはり誰の姿もなかった。

 とはいえやはり、誰かが回復魔法でもかけてくれたとしか思えない。


 だけどいったいどこから?

 森の中から隠れて回復してくれたのか?

 それともすっごい遠くから魔法を飛ばしてくれたのだろうか?


 目を凝らし、首の向きを変え、必死に探し回る真一。

 だけどどれだけ見回してみても、謎のヒーラーの姿は見つからない。

 そうこうするうちに15分が経過したのか、スリップダメージが重なり再び瀕死に陥る真一。

 またもや意識が薄れはじめ、鼓動が弱くなり限界が迫る。


 フッ!


 そこで再び真一の身体に力が戻ってきた。

 やはり誰かが回復魔法をかけてくれているのだ。

 そして今回は前回ほどギリギリになる前に回復してくれたようだ。

 そのおかげで真一はあることに気付く。


「俺のミニマムヒールと違う、、、」


 これまで真一がミニマムヒールを使ったとき、自身の身体(※首だけ)に水色の光の粒が降り注いでいた。

 きっとそれが回復魔法のエフェクトなのだろう。

 ミニマムヒールは最低クラスの魔法のようで、光の粒の量はごくわずかだ。

 だがそれでも決して見落としたりするようなレベルではない。

 だというのにいま回復してもらったとき、真一は光の粒をわずかたりとも目撃していないのだ。


 ということは、、、

 今の回復魔法は、真一の頭部に向けて放たれたものではないということになる。

 じゃあいったいどこに向けられたものなのか。

 少し考えてみれば、すぐに予測できる。


 真一の身体の他のパーツに向けてだ。


 そこまで予想したとき、これは非常に重要なことを示唆している。


「どこで回復してくれたんだろう?」


 切断ダメージのステータス異常は『✕15』と表示されていた。

 ということは真一の身体は、生首以外にあと15個のパーツに分断されていることになる。

 問題はその15個のパーツがどこにあるのか?

 最悪の予想では、次元の狭間に落ちているケースも考えられた。

 だが誰かが真一のパーツに回復魔法をかけてくれているのだから、その可能性は低そうだ。


 だったらまだあの白い空間に残っていて、あのインチキ神さまが回復してくれた?

 だがそれは有り得ないと、真一の直感が告げている。

 はたまた残りのパーツは地球に戻っているとか?

 でも地球には回復魔法なんてものは存在しない。

 魔法じゃないとしても、死にかけの真一を即座に回復させる手段など考えられない。

 そんな魔法があるのは、この異世界くらいだろう。

 そこまで考えを巡らせたとき、『とある仮説』がにわかに現実味を帯びてくる。


「残りのパーツもぜんぶ、この異世界のどこかに来てるってこと?」


 そう考えた真一は、パーツがどうなっているのか整理してみることにした。

 というのも手がかりとなる情報が、ステータス画面に書かれていたからだ。


ーーーーーーーーーーーーーーー

名前:馬宮 真一

レベル:1

HP:19 / 20

MP:1 / 20

状態異常:

 スリップダメージ 【-0.21 / 10秒】

  ▶切断 ✕15

  ▶毒

  ▶燃焼

  ▶氷結

  ▶水没

  ▶捕食

  ▶真空

ーーーーーーーーーーーーーーー


 「えーと、『毒』『燃焼』『氷結』『水没』『捕食』、そして『真空』かぁ」


 ステータス画面に表示されている状態異常は、切断以外にも6種類ある。

 どれもあの白い空間に置き去りになっていたら、発生しないと思われるものだ。

 こことは関係ない別の異世界に飛ばされている可能性も否定はできない。

 けれどもやはりこの異世界のどこかに一緒にやって来て、それらの状態異常に陥ったと考える方が自然だ。


「氷結や燃焼って、どう考えてもこのへんじゃあり得ないよな、、、」


 いま真一がいる付近には温暖な森林が広がっているだけ。

 山火事なんかが起きている様子もない。

 だから他のパーツがこの近くにあるとしたら、凍ったり燃えたりといった状態異常になるとは考えにくい。

 ということはそれらのパーツは、こことは違うこの異世界の遠く離れた別々の場所にあるのではないだろうか。

 きっとあの少年はバラバラの真一のパーツを全部、まとめてこの世界に送り込んだのだろう。

 だけど転送先は全てランダムで、世界中のあちこちに散り散りに送られてしまった、とかではないだろうか?


 そこまで予想したことで、真一はようやく思い当たる。

 さっきからずっと感じていた『ある感覚』が気のせいではないのでは?ということに。

 そう、身体のあちこちに、変な、そして色んな感覚があるのだ。


 例えば、、、


「左腕が寒い」


 最初からずっと、左腕が凍てつくほどに寒いのである。


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― 新着の感想 ―
今はエクゾディア状態で腕だけ戻ってもデスタムーアみたいになるのかw
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