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ショートショート4月〜4回目

悪の権化、ドハマリ中

作者: たかさば

 おっす!

 おいら悪の権化(笑)!


 あらゆる命の頂点に立って、ええと…何年だっけ?

 今は魔王なんて呼ばれることもあったり、なかったり。

 毎日毎日、無謀に果敢にやってくる勇者を迎え撃ちつつ、星の管理っぽい事をしてるよん。


 人が生み出したおかしな病気を撲滅させたり~。

 ヤバイ島をつぶした後ちゃんと平らな土地にしたり~。

 何もなくなった場所に種をまいて新しい緑を育てたり~。

 魔獣を生み出して枯渇傾向だった魔素を補充したり~。

 濁った水を雨で薄めて透き通らせたり~。


 おいらは星の事を考えていろいろ試行錯誤してるだけなんだけど、どうも人間たちには不評でさ~。

 揃いも揃って、おいらのことを諸悪の根源、悪の権化だとぬかすのがちょっとね~。


 なんかさ、チョー失礼な話じゃね?


 ヤバい病気が発生したから、ちょっと島ごとマルっとつぶしただけでこの扱い!

 魔獣の数が減ったから、増えすぎた人間を食わせた途端にこの憎まれよう!

 星の温度が冷えてきたから、天候をいじっただけでこの嫌われっぷり!

 めんどくさい国が勝手な事をしてるから、ぷちっといっただけでこの有様!


 そもそもさあ、なんで人間だけが偉そうにのさばってんだよって話じゃん?

 みんな同じ星の上に暮らしてるんだからさ、協力しろとまではいわないけど平等にバランスを取る材料になってもいいじゃん?


 粛清するのがそれほど悪いことなのかね?


 少なくとも魔獣は恨んで呪ったりしないぜ?

 虫は無言で土に混じっていくぜ?

 植物なんか燃やされても次の年には黙って芽を出すぜ?


 勝手におかしな感情を残して文句をたれるのは、人間の要素があるやつばかりなんだよぅ。

 感情と魔素を勝手に融合させてさ、おかしなもんに変質させてくるから始末が悪いのさぁ。

 おかげでピュアな魔素が穢れて、それを使ったごく普通の人間まで毒されて暴走し出して…まさにカオスってゆーかね?


 こんなんほっとけるわけないじゃん?

 きっちりばっちりお手当てしてあげてるわけよ。

 おいらだってこの世界のこと…しっかり愛してるんだかからね!


 がんばってんのにさ、いまいちこう、報われてないんだよなぁ…。

 そりゃさ、良い景色やイベントに出会うたびに大喜びできてうれしいよ?

 でも、いっつもおいらばかりが割を食って後始末とかさあ…。


 おいらだっていろいろと悩んでるんだよ?


 バランスをとってやろうとか、それこそが驕りなんじゃないのかってさ。

 力があるからやってやる、そういう考え方はまずいんじゃないかってさ。

 勝手に増えて勝手に減っていく、その流れに干渉するからおかしなことになるんじゃないかってさ。


 あ~も~、おいらばかりが胸を痛めてさ、ホントマジ頭いてえ…。

 クソ人間どもがこっちの都合なんざまったく気にしないのがまたムカつくっていうか。


 どいつもこいつもおいらを見る目がやけにビビっててさ、なんか地味に凹むしさ。

 何かするたびにわーすか文句言って勝手に恨んでさ、めっちゃウザイしさ。

 ただ普通に魔王生活送ってるだけでイキった奴が凸してきてさ、すげえめんどくさいしさ。


 なんだかなあ、いちいちする事なす事に反応してさ、すぐに暴走すんのやめて欲しいわけよ…。


 つかさあ、これってわりとかなり差別なんじゃね?って思ってんだよなあ。


 悪い事してる奴なんざわんさかいるのにさ、おいらばっかり責められるし、攻められるし。

 おいらだって人間がよく言う【良い事】してるんだけど、そっちは見向きもしてくんねえのさ。


 もうずっと新しく生まれた子供たちの朝のオムツ替え担当してんのにさ。

 20合の米炊いて握り飯作って食堂に並べてるのも知らないくせにさ。今朝なんかすがすがしい朝の空気を読んだ俳句を披露して皆の胸を熱くしたんだぞ?さっきまで沿岸部のゴミ拾いもしてたしさ!今だって調理室の片隅にあったまだ食べられる野菜くずを使ってスープを作ってんだぜ?おいらの作る晩飯はうまいって独身魔族マンションの住人からめっちゃ高評いただいてんだぞ?だいたいだな、少しばかり形の悪い野菜だからといって捨てるなど言語道断、農家の皆さんの血と汗と涙の結晶を無駄にするなんざ、おいらは許さないっての…ぶつ、ぶつ、ぶつ・・・。


 おいらはそんなに悪い事をしたってのかね?

 むしろおいらは良い事をしていると思っているわけだが?

 おいらは悪くない、むしろ良い魔王だろ?

 諸悪の根源と言われるようなことをしてるつもりはないわけでさ!


 はっきり言って、悪の権化と称されることに納得がいかない!


 勝手に人間側の都合で悪の権化呼ばわりとかマジ無理、やめて欲しいんだけど!

 ごく普通にトラブルシューティングしてるだけなのに、どんどん恨まれるとかさ、やべえと思わない?この流れ!


 そもそも論、誰にだって良い部分も悪い部分もあるだろ?

 すぐに気に入らない部分に着目してさあ、その部分だけ見て悪の塊たる代表者みたいな扱いされんのは迷惑なんだよ。

 まあ…浅はかな考え方しかできない小さい存在だから仕方ないのかなあと思わないでもないけど、それにしたってひどすぎる…。


 悪と正義、どちらか一方に属させようとする根性が、決めつけるその風潮が気に入らないんだよね~。

 もういっその事、感情というシステム自体を…人間そのものをマルっとなくしちまうのはどうだろうかってさ~。


 だがしかし…、そんなことをすればそれこそ本当に自分が悪の権化になっちまうわけで!!

 小さな子供たちのキラキラした眼差しもあるんだ、大それたことはしでかしては…ならぬ!


 小さな命にはそれぞれの暮らしがあり、それぞれの考えがあり、ぞんざいに扱ってはいけないものなのだってね。

 まあ実際、人間に教わる部分もあるし、見習うべきところだってわんさかあるわけで…。

 種別でひとくくりにして考えるなんて愚かしい事なんだとね。


 ああ、知ってるよ、知ってるからこそおいらの周りには貧弱な皆さんが集まって来ていてだね。無下にすることもできず、手厚く世話をしながら一緒に暮らしているわけなんだけれども。

 弱い面々の声ってのは、勝気で高慢ちきで差別上等脳の人間どもには届きゃしないのな…。


 おいらの苦悩を知ってか知らずか、愚かな人間どもが悪を成敗すると言って無作法に乗り込んでくるのさ。


 頼まれて裏庭の草刈りをしていただけで後頭部にエクスカリバーがぶっ刺さるんだぜ?理不尽すぎて涙も出ないんだけど!孫と一緒に駄菓子を買いに行く約束をしているのに、あとからあとから勘違いした愚か者どもが乗り込んできて全部おじゃんとかさあ。遊園地に行こうと弁当こさえてえっちらおっちら玄関をくぐったらファイヤーボールが飛んできて真っ黒こげとかありえんでしょ!ようやく獲れたアイドルコンサートのチケット片手に出かける直前、乗り込まれて特大うちわ真っ二つにされてみ?!…孫に嫌われたら絶対に正義感にまみれた愚かな人間どものせいだからな!


 もうホントいい加減勘弁してくんねえかな…サクッと根絶やし、やっちゃうぞ……?

 せいぜいあの世で悔やんで、次に生まれる時は皆から悪の権化と称されるような人物になればいいんじゃね……?


 つかさ~、中途半端な魔力こそが悪なんじゃないのってさ、最近思うんだよね!!


 溢れる魔素を無駄に貯めたりアホみたいにぶちかましたり、同じ人間同士で競い合っててキモいんだよ~。なんであるものを分け合ってへらへらと暮らせねえの?わりかしのんびり暮らしてる人間をほじくり返してさ、魂大放出祭りとか正気の沙汰じゃねえだろ…。ヘボい人間殺しても魔力なんか増えねーっての!


 てゆーか、人間ってのは、魔法なんかなくたって生きていけるもんじゃん?も~さ、全部魔素閉じ込めちまおーかなって思ってたりすんだよね!


 実はさ、異世界人を召喚しておいらを滅ぼそうと考えた人間どものおかげで色んなことを知ったの、おいら。

 異世界人が挑んできて返り討ちにしていく中でさ、魔素のない世界ってのがどんなものなのか気になったんだよね~。

 ちょいとこの世界を抜け出して、魔素なしワールドを体験してみる事にしたんだけどさ!魔素なんかなくても普通に暮らしている世界があるってのを知れたのはマジで有益だったよ~。

 すげーよね、魔素なしでこんなキラキラした暮らしを送ってんだからさ!!人間ってのは、魔素がないならないなりにいろんなもん生み出せるんじゃんってさ!!


 いやー、驚いたし感心したしドン引きしたけど、マジ収穫あったよ!

 行ってよかった、魔素なし世界!ってね!!


 魔素なんかなくても人間は愉快に暮らしてるじゃんってさ~。

 魔法が無くてもしっかり人間は争ってつまんねえ競い合いしてんじゃんってさ~。

 魔素のかけらもいじれないのに、いろんな魔法を想像してるじゃんってさ~。


 平和に暮らしているように見えて、あちらこちらに小さな悪があふれていてさ、ほんの些細な事で争って、どこでも優位に立とうとするんだなあって呆れるやら感心するやらでさあ。

 悪の権化のいない世界というのは、こんなにもしょぼい感じで身近に悪を置きたがるのかってね。

 魔素があろうとなかろうと、争うもんなんだなあってさ。

 あれだな、人間ってのは比べ合って自分の方が上であることを確認して喜ぶようにプログラミングされてんだな、たぶん。


 実際に争う事すらせず、想像で争って喜んでいるのには驚いたね~!

 悪も正義も想像した人の物、命が脅かされないシステム!

 どれほど想像の中で争っても、現実の命は失われない!

 いや~、実によく出来てるわ!

 物語というシステム、魔素がないのに魔法を操る、魔法が存在しないのに周知に至らしめた画期的な技術!!


 ……ってさ。

 最初のうちは…大したもんだって、思ってたんだけども。


 観察してるうちに、考えが変わったんだよね。

 想像ってのが…わりかし諸悪の根源になっちゃってんじゃないの?ってさ。


 こんなもんがあるから、つまんねえ魔法を使っておいらの世界をめちゃめちゃにするやつが来るんじゃね?みたいな。

 ごく普通の魔素使いの常識が、おかしな発想でめちゃめちゃになってますますバランスがおかしくなってんじゃね?ってさ。


 うちの世界の人間どもってのは…ホント考えなしにスポンスポンと召喚するんだよなあ。うっかりヤバそうな想像をした人間が乗り込んで来たら…どうすんだ!


 こっちの世界の罪ってのは…案外重いのではあるまいか。

 これはもしや…粛清が必要なパターンじゃね?


 やばくなる前に…()()世界をどうにかするべきなんじゃない?


 でもな~、おいらはこの星の生まれじゃないしな。

 余計な事して、万が一にもすげえのが出てきて消滅させられたりしたらしゃくだしな。


 だけど…おいらの星に乗り込んできたやつらは遠慮なくぶっ壊しにかかっていたわけで…。


 やっぱ…やるか?

 いやいや…それはマズいだろ。

 やられる前にやるべきなんじゃ?

 やられると決まったわけでもないのに時期尚早だ。


 って感じでさ、どうにも踏ん切りがつかないまま、様子を伺っていたりするわけよ~。


 自分の世界とこっちの世界を行ったり来たり。

 コッチの人間に紛れていろいろ学んでみたり。

 クソみたいな魔法を持ち込む原因となったもんをチェックしまくったり。


 かなりヤバそうな想像もあって、気にかけてんだよね~。この物語を見たやつがおいらの世界に乗り込んできたらまずくね?って感じのがさ、わりとあんだよ!!

 でもさ、先にそういう考え方があるんだって学んどけば、それなりに対策も練れるじゃん?


 ネカフェで異世界転生モノのコミックを読み漁っては、こうくるのか、こう考えるのかと学んで~。

 テレビで異世界転移もののアニメを視聴しては、こういうのも手だな、これはないなと腕を組み~。

 パソコンで異世界転生モノの考察動画を視聴しては、これはありだな、これはマズいだろうと文句を言い~。

 紙媒体や電子書籍で異世界転移ものの小説を読み漁っては、これってありなの、どういう発想だよと突っ込み~。


 もーさ、どこのどいつが召喚されるかわかんないから、手当たり次第に目を通さないといけなくてホント大変なんだよね!!自分の世界をほったらかしにして、研究に熱心に取り組むような有様でさ~。ま、ぶっちゃけ異世界ものの想像ってやつを楽しんでるんだけど!!


 おいらの世界の人間どもは悪の権化たるおいらがいなくなる事を望んでんだから、これ幸いってもんよ。


 俺がバランスをとらなくなれば、良い世界になるかもじゃん?

 絶対的な悪であるおいらがいなくなれば、平和になるかもじゃん?


 悪の権化の消滅を心から望み一致団結していた人間どもが、大喜びで世界を素晴らしいものに変えていくことだろう……。


 ……なんてね!!

 なるわけないってわかってるんだけどね!!


 絶対的な悪がいて、そいつに全部を擦り付けていた時代が終わったら…どうなるかなんてわかりやすすぎるだろ?

 絶大なる悪がいなくなったら身近な所に悪を置くのが、置いて安心するのが、駆逐して喜ぶのが…人間だろ?


 ま、盛大にやらかして、めちゃめちゃになったところでさ、一気に片付けようって思ってんだ~♪


 コッチの世界でさ、メリバとかいうパターンもありなんだって学んだもんだからさ!!

 おいらがうれしければそれでオールOK、いやあ、いいこと知ったわ、ホント!!

 おかげでこっちの世界で情報収集にいそしめるってもんよ!!


 今はさ、のんびりマッタリ、ゆっくりマイペースに、人間に混じって勉強中、勉強中ってね〜。

 空き時間を見つけては、お気に入りのネカフェに来てうまいもん食べながら学んでるのさ~。


 今読んでんのはさ、異世界転生もののとある小説なんだけど、これがまた実に出来がよくてね~。よくあるテンプレながら独特の世界観、癖のある文章にどっぷりハマっちゃっててさ~♡なんかちょ~影響されちゃってさ、言葉遣いも考え方もやけに偏ってきちゃって大変なのよ!!悪役令嬢がどうやって諸悪の根源たる魔王様を落として丸く収めるのかめっちゃ気になっちゃってんのよ!!


 この続きを見るまでは、この世界には手出ししないって決めてんだ~♡

 早く続きが見たいんだけど、全然続きが発表されないのがもどかしい~!!


 ―――この連載小説は未完結のまま約10年以上の間、更新されていません―――

 ―――今後、次話投稿されない可能性が極めて高いです。予めご了承下さい―――


 想像したやつが物語を投げちゃってるみたいなのが残念でならないんだけどね?!


 続きを書いて欲しいと願ってるおいらがいるのに、書いた本人は書いたことすら忘れてるとか…ねえ、これどういう仕打ち?!

 おいらの期待、おいらの願い、おいらの涙においらのドキドキを…返せ!!


 これってさあ、ひょっとしたら…物語の世界に送り込んだら、似たような世界に転移したら、感性が研ぎ澄まされて続きが書きたくなるパターンなんじゃね?


 本物の魔法を見たらきっと…。

 衣食住を用意してやったらきっと…。

 いやむしろ用意しないほうがきっと…。

 永遠の命を押し付けたらきっと…。


 良い具合においらの世界も荒廃してきたことだし…。

 悪の権化直々に我が世界へご招待…作者本人連れ込み企画、やっちゃうか……?


 とりあえず、予約済みのアニメ39本とブクマ済みの小説7809本をチェックしてから考えようとは思ってるんだけどね!!というのも、まだまだ気になるタイトルはわんさかあって・・・おお?!こ、これは!!!


 お気に入り作家さんの、久々の更新…キタ━(゜∀゜)━!!!!


 二年八ヶ月ぶりに!!!おいらイチオシのエロフたんのツンデレー!!

 なんだ待ってたら続きが読めるパターンもあるんじゃん!!よーし、希望の光、見えてキタ――――――!!!


 ひゃふー!!!


 狭いネカフェの一角で、思わずガッツポーズを取ったら!!


 がたんっ!!

 どこっ!!

 がしゃ!!

 びしゃー!!


「わあ~?!」


 ひじにキーボードがぶつかって!!

 バランス崩してテーブルにひざをぶつけ!!

 並べといたドリンクとソフトクリームがゆれて!!

 メロンジュースが派手にこぼれて!!


「おい!!静かにしろよ!!」


 壁の上から覗き込んだコワモテのおっさんに、とりあえず頭を下げ下げ、手早く大惨事を魔法で処理しつつ。


「す、すいません・・・」


 お気に入り小説のヘタレ主人公の青年よろしく、貧弱を装い無礼を詫びて…、新しいエピソードタイトルをクリックしたのだった!




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