鍋ぶた90 異世界人さん、ミッションコンプ
「疲れた!帰りたい!ねむい!」
更紗の目がキッキしてきた。
(イライラで目つき悪くなるやつです)
「キッキちゃんが出たよ…。ママさん、休憩しようか?」
「ボス部屋の後に、休憩所があるから、更紗はそこまで我慢してね」
「更紗頑張れ!」
「俺、手、引っ張っていくから、ほら、いくぞー」
「柑奈〜押して〜」
「ハイハイハイ」
夏休み3日目。夏休みの宿題を2日で半分終わらせたので、全員で月見ダンジョン攻略をしていた。殆ど子供達だけでの攻略だ。そして今、B6のボス、『パイソン』の部屋の前だ。
更紗が駄々を捏ね始めたので、元気キャンディを口に入れてあげた。もちろん柑奈と翔にもだ。
ボスはインクブルーパイソン。みゆき的に、もはや好きな色の蛇革にしか見えない…前回より少し強めな気がしたが、柑奈のアイスショットに始まり、動きが鈍くなったところで更紗の毒々ブシュブシュ攻撃、翔が、派手にバッサバッサ切っていく。
宝箱が出た時には速攻で柑奈がパッカーンと開けていた。みゆきも覗きにいく。パイソンの革や毒牙、金貨15枚、魔石が出てきた。毒牙を頭につけて、
「ツノ〜」
と遊ぶ更紗。
(元気じゃん……お腹空くと、キッキちゃんになるんだよね、この子)
スロープの休憩所で、夕ご飯にする。GMDSの子達は居なかった。翔が泊まりたいと騒ぐ。山下家は、特に予定もなかったので、ここに泊まることにした。
一番大きな部屋に滞在する事に決めた。健介が鍵付き扉をつけ、みゆきはクリーンで綺麗にし、ふかふかマットやクッションを出していく。あっという間にくつろぎの間だ。
早めの夕飯を食べて、ぷらっとB7を散歩する。全員着てるのは、みゆきの作った新作ウェアで、罠を回避出来る程に身軽になり、『無敵』が要らないくらいに【結界、耐寒、耐熱、防風、認識阻害】が付与されている。なので、ハラハラせずに子供達を前に出せるみゆき。
マップを見ると、どくろ剣士がずっと付いて来てる。みゆきは、プリンスの日記をくれたどくろ剣士かもしれないとみんなに伝えておく。彼(彼女?)はシャイなのかもしれない。
▲▽▲▽▲
寝る前に、雑談しながら回復のお茶を飲んでいたら、バングルが光った。翔が嬉しそうに反応する。
「あ、ギルド!?」
「なんだろうね?」
みゆきはポチッとすると、ワーカーズギルドのメッセージだ。
『マンドラゴラの納品です』
一番難しいはずのマンドラゴラが先に納品された。鑑定してサインと共にメッセージを送った。
「マンドラゴラ確認致しました。とても難所の採取場とお聞きしてましたので、無事に戻られてホッとしております。
また、装備品の買取要望を頂きありがとうございます。300万円の金額を出されるとの事でしたので、もしよければサイズをお聞きして、きちんとご用意したいと思っております。いかがでしょうか?みゆき」
受け取りサインを送ると、返却品とメッセージが届いた。
『困難なクエストと思いましたが、探索着が有能すぎて、自分史上最速のSランククエストでした。今までに食べた事のない食事、お菓子の虜になってます。できれば定期的に食べたいです。依頼可能でしょうか?ゲイルズ・パーカー』
「これ、あれか?今送ったメッセージはまだ見てないんだね。フリマのアプリと一緒のシステム…すご…!」
みゆきはお弁当箱などに『クリーン』をかけて、収納した。探索着は、少し焦げたり、汚れているが、ほぼ綺麗だ。『鑑定』すると、結界の付与、100回分あったのに7回だけになっている。これは、過酷探索だったに違いない…
みゆきは装備品については悩んでいたが、ゲイルズさんを93回も守ることが出来てよかった。サイズが送られて来たら、ガッツリと作り込んであげよう。転売なしの契約でなら、異世界でも混乱する事はないよね?
「お弁当、お菓子、受け付けます!」
メッセージを送った次の日に連絡が入った。ゲイルズさんの、寸法と、お弁当10個の発注と、お菓子お任せ詰め合わせ(でもスイートポテトも20個含めて)10万円分だった…
おーい、ゲイルズさん、めっちゃ菓子食うやんけ…みゆきは寸法を合わせたパーカーとズボン、マスク、シューズお弁当10個、お菓子詰め合わせを入れた宝箱、そしてノベルティとして歯ブラシを送信すると、310万円が振り込まれた。
ゲイルズさん、頑張ってくださいねっっ!!虫歯には気をつけて!
▲▽▲▽▲
月見籠りの一週間で、子供達がずいぶん強くなった。装備品の良さもあるが、センスがいい。みゆきは子供達から色々と学ぶ事が多い。
柑奈が、化け狸を一人でやっつけた時にはびっくりした。炎と風魔法で弓にブーストを掛け、怪しいと思ったタヌキの置き物の隣に飾ってある博多人形に狙いを定めて矢を放つと、人形から半径5メートルにわたって大きな火柱が立ったのだ。業火に焼かれた化け狸は化かす暇なく宝箱になったのだ。
更紗や翔は、どうしても化かされてしまう。良く言ってピュアな2人だ。が、正体を表した化け狸には強い。更紗は見てて気持ちのいいアクロバットを披露し、翔はヒーローみたいにかっこいい。
ピンバッチのステータスアップ度を見ると、みゆき45%、健介32%、柑奈、更紗、翔は41%と、月見ダンジョンではかなりの強者になった。健介はみんなの強さに安心して夕日丘に仕事に出かけた。
柑奈(ハートを狙い打ち!狩人カンナ)が、提案する。
「ねぇ、せっかくだから、月見ダンジョン100%行きたいよね」
「それな」
(気分屋JK月見のアサシン更紗)
「あと半分くらいでしょ?」
(月見の勇者の卵、翔)
「いいね、やっちゃうか?」
(月見の申し子、みゆき)
子供達には本当の事を言えないが、今日の稼ぎが6千万円を越えてきた。それに比べたら少ない気もするが、月見村の売り上げや、夕日丘の売り上げも入って来ていた。6万円とか、9万円くらいだ。この調子だと、明日には億越えしちゃってるだろう…
明日に備えてもう寝ようとした時に、ワーカーズギルドからの連絡だ。
『愛の岩塩、桃大豆、納品されました』
「やった!ついに来た!」
みゆきは、品物を確認し、サインとメッセージを送った。
【愛の岩塩】『現場に行くと、爆発的にドラゴンが増えていて終わったと思いましたが、探索着のお陰でやり遂げる事が出来ました!お弁当が美味しくて、田舎の母を思い出しました。動物の絵のお菓子が美味しかったです。カラフルな飴も美味しかったです。またみゆき様の依頼が有れば率先して受けたいです。ありがとうございました。ピピン・サラドゥーク』
【桃大豆】『樹海の不愉快な空気が纏わりつくといわれている現象も起きず、彷徨うこともなく最深部のエルフの村に到着できました。エルフへの手土産作戦には驚きましたが、効果覿面でした。彼らはとても友好的で、その日取れた一番形良く大きな桃大豆を譲ってくれたのです。非常に美しい村と、美しいエルフでしたので、絵を何枚か描いて送ります。手土産の中身が気になります。お高くなければ私も欲しいです!お弁当、お菓子もありがとうございました!コニー・ビーツ』
異世界の人達が、いつも丁寧にメッセージをくれるので、とても気持ちが温かくなる。
「コニーさんには『高級フルーツセット20,000円です』と、教えてあげよ。てか、絵がうますぎるし、美人とか、美男子とか、エルフすごいね…でも、なんか知ってる顔…GMDSの隊長とか、こんな感じだよね…あの人、エルフなんじゃない?」
「イケメン!ねぇママ頂戴!」
「流石に写真で我慢して〜?って。額に入れて家に飾ろ!」
隊長、エルフなんじゃね?って何気なく言ったけど本当にそれっぽい。というか、そうじゃないとおかしい話だ。しっくりきた。後で健介に、話そう。
それよりだ、
「コスモドロップが作れるよ!!」
「ママすごい!」
「素材めちゃ集まったからね」
アイテムボックスで、コスモドロップを作ると思えば合成の素材がピックアップされた。迷わずポチッと合成した。
アイテムボックスの中に、コスモドロップが出来上がった。紺碧色だが、優しい光を湛えている。しかも5本も出来ていた…
「見たい、ママ、出して」
みゆきは手の中に【コスモドロップ】を出した。キャンディかと思ったが、液体だった。効果はなんだろう?みゆきはやっと『鑑定』をする
【コスモドロップ】
伝説の秘薬。完全なる完成形は史上初。この液体をかけられたものは、失った肉体を取り戻す事ができる。魂が消えてなく、体の一部があれば完全回復出来る。
「ヤッバ…」
「エグっ!」
「え?だいじょぶそ?」
「これ、世に出たらあかんやつだね…でも、お守りとして頼もしいかも…」
もしもの万が一に備えてこっそり持っていよう。
みゆきの『夏休みの自由研究』は、山下家の秘宝を作り出す事で成功、終了したのでした…
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チートなドロップ、みゆきさん使えるのかな…
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投稿遅くなっちゃいました…
ゲイルズパーカーさんは意外に若手だった〜!と思った方はいいねお願い致します
(*´◒`*)