鍋ぶた59 蜘蛛の巣 はらいます
月見B8フロアはガイドによると
【蜘蛛】のモンスターが出るようだ。
みゆきは覗くだけならと階段を降りたが
あと5段ってところで固まる
蜘蛛の巣だらけ…そして、天井から
吊り下がっている蜘蛛の糸に
グルグル巻きになった何かがもぞもぞと
動いているのだ…
「クリーン!」
蜘蛛の巣を一掃する事は出来たのだが
もぞもぞはそのままだ…
「だ…誰か入ってますか?」
「んんっ!ん〜ん〜!」
口が塞がってるのだろうか?悲痛な
『んーん』
が聞こえてきた…
大きさ的に人間なんだよねぇ
「今助けますから、動かないで」
みゆきの一言で、安心したのか
もぞもぞ繭は静かになった。
助ける前に、念のために
【火、水、風、土魔法を使えなくして
レベルを15下げた、標準みゆき】
に変身し、結界と隠蔽もかけた。
みゆきはスキルで『解体』しようとしたが
どこまで解体されちゃうかわからない。
解体ナイフをそっと使って糸をそっと切る。
プツンと切れたかと思ったら、シュルルと
糸がほぐれていく。
綺麗な糸玉が10個ほど転がった。
涙で顔がぐしゃぐしゃの若者が
みゆきをみて驚いている。
20代前半くらいだろうか?
健介よりもがっしりとした体型だ。
みゆきは階段まで避難させた。
「あ、ありがとうございました….
蜘蛛のモンスターにやられました…
仲間が蜘蛛のモンスターに連れていかれ
たぶん、もうすぐ俺を連れ帰るのにまた
奴が来るはずなんです…」
みゆきはマッピングで地図を出すと
まあまあ近いところにある部屋に青い点が
3つあった。
動いている赤い点がこちらに向かって
移動している。
みゆきはこっそり若者にクリーンをかけた。
若者は気づかずに怯えている。
「大丈夫?これでも食べて落ち着いて」
みゆきはキッチンカーで購入した
プチカステラと特製の回復のお茶を渡す。
うさゴンが、若者を警戒して離れていたが
みゆきの対応を見て近づいてきた。
若者はそっと、うさゴンを撫でながら
お茶を飲んだ。
顔色が良くなってきたようだ。
うさゴンが、『キュッ』と肉球スタンプを
すると益々元気になった若者。
みゆきは、この子達が月見のプヨさんを
退治し、スロープの部屋を散らかしたの
ではないだろうかと疑って話を聞く。
「自分、
GMDSって会社から来てるんすけど…」
(!!でた!昨日の今日で、また出た!
とりあえず知らないふりして聞かないと)
「聞いたことない会社だけど、
どんな会社なの?」
「はい、えっと、あの〜、まぁ
世界中のダンジョンの
パトロールみたいなものっすね」
「初めて聞いた!パトロールするんだ…」
「あ、まぁ、はい。じゃないと、時々
モンスターが地上に出てくるんすよね。
怖くないですか?」
「えー怖いね」
思わず棒読みになる、みゆきさん…
「昨日も隣の市であったんすよ…でも
外に出たモンスターは弱くて一般人が
やっつけちゃったらしいっすけどね…
あ、あ、あいつが来た!!」
蜘蛛のモンスターがやってきたが
まるでボスクラスの大きさだ。
『鑑定』すると鬼婆蜘蛛【母蜘蛛】と
出ている…嫌な予感しかない。
うさゴンがみゆきにも肉球スタンプを
押してくれた。勇気が出てくる。
よし、この人の仲間を助けるか。
でも、その前に…
「仲間を助けるの手伝いたいのだけど
私の事誰にも言わないで欲しいのよ…
詮索もしないで欲しいし…」
「はい!絶対、誰にも教えません!!
調べませんっ!お願いしますっ!
自分だけじゃ絶対に難しいんで…」
よし、みゆきはスキルで契約成立させた。
「私はみゆきと申します。『隠密!』」
なんとなく苗字は知られたくないので
名前だけ教えると、なんだか艶っぽい
自己紹介になってしまったみゆきさん…
若者は快く自分は
『花咲克己』
と名乗ってくれた。
鬼婆蜘蛛に見つからないように様子を見て
いると、床に転がった蜘蛛糸をまとめて
引きずって行ってしまった。
B8フロアには、他にもモンスターがいるが
小さな部屋に固まっていて動いてない。
もしかしたら繭玉にされてるのかも…
「仲間って3人?」
「そうっす!」
お仲間さんは、青い点で間違いなさそうだ。
母蜘蛛を倒すと、どえらい事になる。
刺激するとどうなるかわからない。
みゆきは集合体恐怖症なのだ。
『防音』で音を立てないように通路に入ると
蜘蛛の糸が張り巡らされている。
みゆきは『クリーン』で巣をはらっていく。
おそらく、この糸に引っ掛かってしまうと
あの蜘蛛がやってくるのだろうな…
プヨさん達が急かしてたのって、もしかして
蜘蛛の巣を撤去して欲しかったのかな?
マッピングを見ると、プヨさん達が
最初のフロアにいる。
スライムには融解出来ない糸なのかも…
「花咲克己くん、
あなた達スライムの討伐しなかった?
このダンジョン、スライム討伐は禁止なの
だけど…」
「克己でいいっス。すみません、スライムの
討伐が禁止なんて知らなかったっス。
月見ダンジョンはスライムは居ないはず
なのに最近見かけると報告があって調査と
討伐命令がでたんすよね」
「え?あなた達、受付通ってきてないの?
しかも討伐命令って、ここは個人の
ダンジョンだよ?」
「え?個人の?受付?知らないっす…」
うわぁ、考えなきゃいけない事が増えた…
それにしてもカツミ君は
なんでもペラペラと話してくれて
素直な子だなぁ…
GMDS Inc.って、今のところ悪い会社としか思えない。
…うわっと…糸が残ってた。
「集中!クリーン!」
目の前の蜘蛛の巣に集中しないと駄目だね。
HMPポーションをグビッと飲んで
克己くんの仲間達を助けにいくみゆきさん
なのでした…
拙い文章ですが読んで頂きありがとうございます。少しでもみゆきさんを応援したいと思って下さった方、どうか、ブックマーク、いいね!や、高評価で応援を宜しくお願い致します(╹◡╹)