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チハ短編シリーズ-小説版-  作者: 唄沫りとる
第二章 祖国ヲ守ル小サナ戦士達
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第一節 ホロ村

ここは日本管轄エリアの『日本』。日本の主要エリアということもあり、多くの車輌が暮らしている。


 その一角に藁葺(わらぶ)き屋根の民家が建ち並ぶ村がある。そこは『ホロ村』と呼ばれており、その名の通り四式十五糎自走砲『ホロ』が住んでいた。


時はチハ達がマジノ線守備隊に配備されることが決定した頃にまで遡る。

この時、マジノ線守備隊とは別の辞令も出ており、ホロ達の話題はこれらの辞令で持ちきりだった。


「そういや、この間イギリスから貸与されたマジノ線の守備隊の辞令が出たらしいじゃねぇか。」

「ああ、俺を含めたホロ数輌とチハ・チハ改を中心に編成されるってよ。」

「お、お前も行くのか。こっちには別の指令があったぞ。」

「何だ? 任務か?」

「任務というより訓練での遠征だな。フランスが管轄しているノルマンディーってところだ。」

「訓練か。にしても他国の領土で訓練とは、上層部もえらく張り切ってるな。参加する車輌は?」

「それがホロだけらしい。」

「ホロだけか。まぁ我らホロは優秀な車輌だしな。選ばれて当然だろうさ。」

「ま、それもそうだな。」

「とりあえず、俺はマジノ線へ行く準備をしてくるよ。」

「俺も遠征の準備しておくか。」

「武運を祈ってるぞ。」

「お前もな。」


そう言ったホロ二輌は、それぞれ帰路に就いた。


 このノルマンディーへの遠征は、日本ツリートップ車輌『90式戦車』の発案によるものだった。昨今ソビエトの動向が怪しくなっているという情報を掴んでいた90式は、防衛の為にも自国の戦力増強が急務であると考えていた。

 当然、配備中の全車輌を一気に訓練に出してしまっては、自国の防衛がままならなくなってしまう為、複数回に分けての遠征を計画し、その第一弾がホロ達だったのだ。



 それから数週間後、ノルマンディーの海岸にはホロ達の姿があった。教官を任されたホロ数輌の前に、今回の訓練に参加しているホロ約三十輌が整列し、教官からの訓示を受けていた。


「お前らに必要なものは何だ!」

「火力であります!」

「違う!」

「複合装甲であります!」

「違う!」


教官の問いにホロ達は口々に答えるが、教官の求めていた答えは違っていたようだ。


「もっと大事なものがあるだろ!」

「大和魂であります!」

「そうだ!その通りだ!」

「教官!大和魂とは何なのでありましょう!」

「そ、それはだな・・・。あ、あれだ!こう・・・まろやかでありつつ・・・そして芯があって・・・それでこう・・・」

「・・・。」

「と、とりあえず!訓練にしっかりと励むように!!」


 何とも締まらない訓示であったが、ここから二週間に渡る訓練が始まる。

今回の訓練では、砂浜ダッシュや登坂(とはん)訓練、戦車相撲、射撃練習等の課程をこなす事になっている。教官達もかなり張り切っていたため、訓練は相当過酷なものであった。その為、数輌がエンジンブロー等の故障で離脱することとなるのだが・・・。



 遂に最終日を迎え、ここまで訓練課程は概ね順調に進捗していた。しかし、教官の任に就いていた一輌のホロは、順調に進む訓練とは対照的に、少し不穏な、何か予感めいたものを感じていた。


「急な他国領土での訓練、何かありそうな気がしてならない。マジノ線に配備されたのがチハというのも不安だ・・・。帰投したら連絡入れてみるか。」


このホロの予感は的中することとなるのだが、状況は既に予想の遥か上を行く事態にまで発展していた。

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