さて、何を書こうか。
さて、今日は、何を書こうか。
…昨日は、たしか。
三日前に起きた出来事を、書いた。
リアルならではの臨場感に、己の間抜けさをトッピングして、良い塩梅の物語に仕上がった。
…その前は、たしか。
ずいぶん前に起きた出来事を、書いた。
リアルならではの臨場感が、己から抜け落ちた記憶によって薄まり、ほどほどに耳障りの優しい物語に仕上がった。
…そのまた前は、たしか。
今まさにに起きている出来事を、書いた。
リアルならではの臨場感が、己の焦りによる単語のチョイスミスを呼び、かえって愉快な物語に仕上がった。
…そのまたまた前は、たしか。
相当前に起きた出来事を、書いた。
リアルの臨場感の記憶が遠いので、己の妄想で塗りかためて、震え上がる物語に仕上がった。
…なんだ、私、実際に起きている事しか、書いてないな。
…小説って、創作するもの、だよね。
ちょっとまって、私、もしかして、創作、してないんじゃない?
……。
よし、今日は、創作をしてみよう。
……。
私の、知らない、世界を綴ろう。
……。
……。
私の、知らない、世界が、出てこない。
ここには、おばけがいる。
ここには、悪魔がいる。
ここには、天使がいる。
ここには、半透明の家族がいる。
ここには、モフモフがいる。
ここには、妖怪がいる。
ここには、宇宙人がいる。
ここには、二次元人がいる。
ここには、神がいる。
ここには、魔法がある。
ここには、異世界がある。
ここには、すべてがある。
……私には、創作は難しいみたいだ。
新しいものを生み出すのって、難しいんだね。
……そうだなあ、日記だったら、簡単に書けるもんねぇ。
今まで書いてきたのは、ただの回顧録だったわけかぁ。
私は、真っ白なページを開いて、羽ペンを持ったまま。
目の前でうごめいている、皆さんをみて。
ため息をひとつ、ついたのであった。