俺は転生して、30分で死んだ
遠くから銃声が聞こえる。音の種類は様々だ。
重くて鈍いドォン!という音もあれば、銃声に聞こえないような軽い音も聞こえてくる。
辺りには砂煙が立ち込んでいて、息が詰まる。
横には白く、薄汚れた壁。ヒビも入っており壁としての機能を失いかけている。
そんな壁の横で、俺は寝そべっていた。何で銃撃戦が起こるような紛争地域にいて、そんな危ない行動を取っているのかだって?
それは俺が生まれて間もない赤ちゃんだからだ。何を言っているのか分からないかもしれないが、本当なんだ。
元々俺はどこにでも居るような青年だったが、ふとしたことで死んで、目が覚めたらこの状況だった。
多少は状況を理解するのに時間がかかったが、転生物をよく読んでいたので、転生したのだろうと推測することはできた。元の世界で妄想してた世界はこんな物ではなかったが。
どうせ、生まれてすぐ親に捨てられたんだろう。想像の中では、こういう子供がいることは理解していたのだが……実際に、ましてや自分が経験するとなると衝撃だ。
叶うことならばすぐにこの場から逃げ出したいのだが、立つことは愚か体を動かすことすら困難だ。当たり前のことだが、前世の体とはまるで勝手が違う。
仮に、何とか体を動かせたとしてもここから立ち去ることは叶わない。仮に立ち去れたとしても、こんな子供が一人で生きていけるわけがないだろう。
つまり、詰んでいるという事だ。
このまま俺は死ぬのだろうと理解していながら、至って心は冷静だった。元々2回目の人生だったから仕方ないと諦めがついているのか、転生する時に何処かが壊れてしまったのかは分からない。
けど、この人生と言えるのか分からない程に短い人生も無駄ではなかったと思う。
……元々俺はブラック企業に勤めていた。いくら働いても給料は雀の涙。終わりがないマラソンを走り続けているようで、常に息苦しさに覆われていた。
でも、全く楽しみがなかったといえばそうじゃない。夜遅く帰った後、睡眠時間を削って、ポテチを食べながら見るテレビや動画は楽しかった。
少なくとも、子供の頃はそれなりに幸せだったと思う。中高でいじめにあったり、虐待をされてはいたがそれでも少なくとも全てが辛い事なわけではなかった。
俺は自分の人生なんて無駄で、無価値で、最悪な物だと思っていたが案外そうでもないのかもしれない。
……俺が、「今」を変えようとすれば変えれたのかもしれない。もう少しだけ、挑戦する勇気があれば何かが変わったのかもしれない。
世の中には、一切の喜びも幸せもなく理不尽に命を奪われる人がいる。
そんな人は何かを変えることすら不可能で、勇気があろうとなかろうと何も変わらない。
そう思うと……俺の人生も案外、悪くないじゃないか……
なんだ、か。視界がぼやけてきたな。体が……寒い? てあし、のかんかくも、なくなってきた。そろ、そろ。さよなら、かな。
──そうして俺は、上から落ちてきた瓦礫に押しつぶされた。
同時に、俺は病室のベットで目を覚ました。
初投稿です。練習がてらに