第4話 あれ?再び………
今回も少し短めです。
さて〜こっからどうすっかなぁ……冒険者ギルドにも入れなかったし……とりあえずなんか稼ぐしか無いんだよな……
そんなことを考えていると、空腹のせいでギュルギュルと胃が唸り声をあげた。胃がすっからかんなせいで腹痛すら起こってしまう始末。
この調子じゃあ今からなんか仕事するのもしんどいんだよなぁ……よし………たかろう!
「ねぇねぇそこのお兄さぁ〜ん、今日機嫌いい? 良かったら奢ってくれないかなぁ〜☆」
「は? 失せろよカスが……」
……うわ、口悪っ! …いや、最初はこんなもんだろう。そうだ! ナンパと一緒だわ!
ナンパの極意その1、とりあえず数打ちゃ当たる。
「あ、そこの美人なおねぇさんちょっといいかな?」
「あらら、美人なお姉さんだなんてそんな……もう夫にも言ってもらえないのにねぇ……」
「いやいやぁ……そんなことよりこれから帰りですか?」
その2、とりあえず褒めて、そのあと少しずつ本題に入っていく。
「今から娘を連れて夕飯にいくのよ。主人は帰りが遅くなる、と言っていてねぇ……」
「へーどこにいくつもりで?」
「まぁあんまり有名なところでは無いのよ? 人気店は今の間は冒険者たちでうるさいしねぇ」
なるほどねぇ……じゃあ後で情報収集がてらその酒場らしきとこに行ってみよっかな。
「どうです? 良いところ紹介するんで一緒に行きませんか?」
まぁ何も知らないけどな! 食った時に、泣き落としでもすりゃぁ奢ってもらえるだろう………ん? 性格悪い? こんな奴どこにでもいるでしょ? ん? いない? あぁ良かったねぇ〜じゃああなたの周りは平和ですねー
「あらあら、でもごめんなさいね? 娘がどうしてもあそこが良い、と聞かなくて。それよりも…いいの……?」
あ、あれ? なんか周りを気にし始めたんだが………
つられて俺も周りを見ると…
わぁお………俺めっちゃ白い目で見られてんだけど………
「ヒソヒソ………(ね、ねぇ……あの男ヤバくない? こんな大通りで堂々とナンパしてるんだけど……)」
金髪のギャルっぽい人が言う。
「うわぁ……てか人妻とか趣味悪いなぁアイツ………(小声)」
その女と腕を組んでいる男がそれに同意する。こちらも金髪である。
「ゴニョゴニョ………(ホント、どんな神経してんだろね……ねぇ? アンタもそう思わない?)
「ホントだよな………………ン?」
「どしたの?」
「いや、な、何でもないよ。いやぁアイツほんとクズだな……な? お前もそう思うだろ?」
男が偶然そこにいた別の少女に問う。
お? この子、珍しいことに髪の毛が……
「っ……………」
その子は俺の視線を感じ、ビクッと肩を震わせて沈黙する。
チッこいつらやりたい放題しやがって! くっ……やっぱナンパはやった事なんて無かったからな……限界があるか…
…あ、そこの珍しい銀髪の子、その怯えて黙ってるような反応が一番傷つくんだよね……もう何だよ……金髪のチャラ男は全然ヒソヒソ出来てねぇしさぁ………ん? あれ?
そこで俺はチャラ男と何故か見つめ合ってしまっていることに気づく。その男は何故か既視感があって……というか、夕方のゲイ二人組の片割れであった。
…………えっ!? 何これ!? まさか、運命!? (乙女)………じゃねぇわ! フハハハハ……いやぁまさかなぁ! さっきも居たなぁ! こんな奴……フッ…こんな所で会うとは…
……あ、ちょっと待てよ……ふふっ…良い事思いついちまったぜぇ〜
俺は金髪野郎に対してグヘヘへへ、と下卑た笑みを浮かべてみる。
………あ、あの舎弟野郎逃げようとして………あ、ギャルっ子引っ張りながら逃げやがった。でもそうかぁ〜アイツ、あのギャルっ子と付き合ってるんだなぁ〜、ククククク………おもしれぇ……
「ふぅ……」
俺は一息ついて、銀髪の女の子を流しみると、またも物凄い勢いで視線を外されて俯いてしまった。前髪で顔を隠されてしまう。
…え…ちょっとぉ? 俺の豆腐メンタルが…あ、もしかして……あちゃーさっきのキモキモスマイル見られてましたかぁ〜…ふぅ……とりあえずあの黒髪眼鏡の子分を追うとするか………
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(酒場にて)
突然だが、俺は今、トイレの個室で法を犯している。(ドヤ顔)
………いや、気ぃ狂ったわけじゃないからね? ホントだよ? ただ単純に目の前にいる相手をちょぉっと脅してるだけだから…あ、普通に犯罪? ………そうですね……ん? でもそもそもこの国に脅迫罪とかあるのか………?
「ふふっ……お〜いおい〜黙ってないでなんか言えよぉ〜、あぁ?」
「ち、違っ………」
「ククク………どこが違うんだろうなぁ〜……なぁ、黙ってて欲しかったらなぁ……」
「わ、分かりましたっ……い、言うことを聞けば良いんですよね……」
「あぁそうだ………ハハハ、随分と分別のあるやつじゃねぇか……そうだ………俺がお前に求めるのはなぁ………」
「………くっ…お前なんかに……! 俺が慕うのは兄貴だけだ………!」
はい今女の子を脅してると思ってた人挙手〜! ………あら、いない? いやまぁそりゃそうだよねぇ〜さっきわざわざ言ったたもんね、『良い事思いつい』た、って……いやぁ困っちゃうなぁ……勝手に変な想像されると…ふふっ…脳内ピンク色だね、君たち……あ、悪口じゃないよ? ………あれ、すごく悪口に聞こえる…
…てかコイツまだ金出し渋ってやがるなぁ…ギャルっ子に黒髪とシてた事バラすっつってんのによぉ……てか兄貴になら奢らされても良いのかな。
「くっ……何たる屈辱………!」
いや、何で人に奢るだけでそんな「くっころ騎士」みたいな羞恥心芽生えさせて………
そして彼は目尻に涙を浮かべながらズボンを下ろし始めた。
「!?!?!?」
え、えぇぇぇぇぇ! ど、どうした!? 遂に狂ったか!? あ、前から頭おかしかったから今更なのか!?
あ、あぁ〜〜〜、わ、分かったぞ! た、単純に便意を催したんだな!? ここトイレだしな!?
「くっ……この後に及んで焦らす気なのか……! どうしてそちらも脱がない!?」
うわぁぁぁぁぁぁぁ! こ、コイツ……! とんでもない勘違いしてやがる! 俺はゲイじゃないぞ! ………あ、ヤバイ……この人、決意を固め始めてる………
「っ………さっさと終わらせろよ!」
ガシッ!
うわぁぁぁ自暴自棄になって俺のズボンもズラし始めたぁぁぁぁ! ぎゃぁぁあ! 逃げないと! 逃げないとぉぉぉぉぉぉ!
俺は走った。彼の魔の手から。決意を固めた頑固な、くっころ騎士の腕の中から。恐怖のあまり、まだ何も食べていない事も忘れて。とにかく足を前に進める。周りにいる人たちの視線ももろともせず、喚き散らしながら全力で逃げた。
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あ、あれ? ここは………
気付いた時には俺は酒場など遥か彼方に、扇情的な姿の女性たちが闊歩する歓楽街と思わしき場所へ足を踏み入れていたのだった。俺はもう、空腹の事など忘れてしまっていた。
はい、再びの誰得展開。いや、大丈夫っすよ? ちゃんとストーリー進んでますからね?
……話は変わりますが、この主人公普通に脅迫してますけど、リアルの私や皆さんがやると……犯罪です………普通に。
ちなみに次回は長めになりそうです。