第2話 キング・オブ・誰得展開
遅くなってしまいました。
いかんせん文字うちスピードが遅いもので………
痛てててて………クソッあの女神のやつ何やってくれてんだよ! 普通あんな事するか? チート能力教えてくれないとかマジで何考えてくれてんだよ……とりあえず地道に探るしかないのかなぁ…今んとこ体を動かしてみた限り特別身体能力が高いわけじゃなさそうだけど……
そう悪態づきながら躊躇いもなく動くまぶたを開くと、前にあるのは薄暗く、狭そうに見える入り組んだ道。
あちゃーこのパターンかぁ……うーん……もっとこう……あるじゃん? え、ないの? ほら、目を開けたら煌びやかな部屋にいてさ、床に魔法陣があって巫女がその前に立ってる………みたいな。まぁ? 俺の知らないパターンだったらそれはそれで嫌なんだけどさぁ……うーん裏路地で始まるパターンって言ったらあれか……主人公が歩いていたらどこからか女の子の叫び声が聞こえて、駆けつけてみるとその子を襲っているヤクザがいて………みたいな。それから助けた女の子が結構美少女で、その子が助けてくれたお礼に……と、ギルドやら宿やらを紹介してくれるんだよなぁ……ふふっ…いやぁ〜妄想が膨らむぜぇ〜……どっかで美少女が襲われててくれないかなぁ………………
……………
いや、そんな都合良くいくわけないよな……あったらご都合主義にもほどがあるわぁ〜………いやぁ嫌いなんだよねぇ〜ご都合主義……何というか現実感が無いってゆーかさぁ〜読んでて納得感がないってゆーか……まぁつまりはご都合主義はゴミだってこt…
そこへ暗い空間を切り裂く少女のものだと思われる悲鳴が聞こえてきた。
「きゃあぁぁぁぁぁ!」
うわぁぁぁぁぁキタァァァァァァァァァァ! ウッヒョオォォオ! いやぁご都合主義最高だなぁ! 誰だよゴミとか言ったやつ! 神は俺を見捨てなかった……! ふはっ、あの女神たまにはいい仕事するじゃないか、正式に俺の嫁へと昇格させてやろう……よぉし待ってろよ美少女! 今すぐ俺のハーレムに加えてやるからなぁ!
先ほどの悪口はどこへやら、俺は歓喜に体を震わせ、走り出す。力の限り地面を踏みしめ、前へと進む力に変え、まだ見ぬ美少女との出会いを求めて足を進める。
「や、やめてください!」
な、何!? さっきとは違う別人の声だと!? それも女の子! ククク…これは願ったりかなったりだぜ…いやぁまさかここでしょっぱなから美少女二人を救って恋に落としてしまうとは……俺はなんて罪作りな男なんだろうか! ふふふ……くふ…アハハ! さぁ近づいてきたぞ! ここでレイプ魔を倒して俺は英雄になるんだ……!
走る。走る。長年の野望をかなえられるかもしれない、という希望を胸に、俺は声が聞こえてきた方の曲がり角を右折し、件の路地に出る。
そこで俺が目にしたのは、並んで立ち、既にベルトに手がかかっていて、これから行われることが待ち切れないのか、既に顔を紅潮させている二人の男と、その二人に怯えるように壁際に後ずさり、恐怖から、その白くて細い腕をその足を震わせている一人の少女であった。
くっこいつら……なんて羨まs……! …………下劣なんだ………! もう一人の女の子はどこに行ったか知らないけど、止めないと……!
「やめるんだ!」
俺の制止を聞いて、男たちが振り向く。
「なっ!?」
少女が俺に気付き驚嘆する。
「おいおいアニキィ……なんか面白そうなのが来ましたぜ? どうします? 混ぜてやりますか?」
「はぁ……冗談がキツイぞお前、今回は二人だけで………だろ?」
「ですよね兄貴! 」
こいつら………! 余裕ぶっこきやがって……!
「おいヤクザども! その女の子を解放しろ!」
「それは出来ない相談だな……コイツは俺らのやってる所を見てしまってたんだよ……」
「そうだよ兄貴の言う通りなんだ! まさかこのまま解放するなんて出来る訳ねぇ!」
「に、逃げて!」
少女が俺に言う。
「お前ら! その女の子を解放しろ! さもなければこうさせてもらう!」
よっしゃぁ! 結構カッコよく見えてるんじゃね!? ククッこのままの勢いでやってやるぜ!
俺は男に向かって駆け出した。男は後ろ手に持っていた直径2センチほどの鉄パイプで………………
……ん?
あれ? そういえば俺どうやって戦えばばいいんだ?
……………あ、
ボゴンッ!
…………あぁもう! 俺のチート能力って何なんだよ……
こめかみに食らった金属の直撃により視界が暗転していく中、俺は男に引きずられている摩擦を背中に感じていたのだった。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
暗闇の中、少女のいる壁の方を見て立つ、男二人。
「ねぇ兄貴ぃ〜早く俺にもヤらせてくださいね?」
髪の毛が金色の軽そうな男が懇願する。
「まぁ待て………焦っても気持ちよくなんてなれないぞ………?」
それに答えるのは落ち着いた雰囲気を醸し出した、黒髪で、角のある眼鏡をかけた男。
「ふふふ、まぁゆっくり楽しもうじゃねぇか………」
「はは………やっぱ兄貴は最高ですよ……」
そうした光景を前に、暗がりの中だとより一層黒く見えるダークグリーンの髪の少女の目からは涙が溢れ出し、吐き気を覚えているのだろう、彼女は左手を口元に当て、青ざめた顔で必死に耐えていた。
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う、うぁ………ぐぅ………頭がグラグラする………
側頭部にじんじんと響いてくる痛みに顔を顰めながら、俺はなんとか体を起こす。
あれ、俺は何をしていたんだ………そうだ、俺はこの世界に来た後、女の子の悲鳴が聞こえて………っ! や、やばい! そうだよ! 襲われてたんだ……! あの野郎! あぁ……あの子は今頃………! クソが! アイツら………!
俺はすぐに女の子の方を目指し、駆け出した。一番近くの角を曲がり、そのまた次を曲がり……と、先ほどまで自分がいた見覚えのある通路を探して奔走する。あぁもう! なんでこんな時に限って見つからねえんだよ運悪いなぁ! 頭の痛みも忘れて、無我夢中で走り回る。
どれだけ走っただろうか……今もあの女の子が危険な目に遭っているのかと思うとどうにも落ち着かなくなる。何でだろうな……俺ってこんなに正義感のあるやつだったっけな…いつもの俺なんかだったら、あのやろう俺の獲物を奪いやがって………! なんて思っていたかもしれないのに。あれかな? この世界に来て初めて出会った女の子だからかな? はぁ…そうやってすぐに女の子に対して特別感を抱くからこんな歳まで童貞なんだろうな…あぁもうどうしてこんな変な感傷に浸らなければいけないんだよ! それもこれも全部あの女神のせいだ! 理不尽な責任転嫁くらいしてないとやってらんねぇんだよ!
それに………! まだあの子が無事かもしれないんだ! そうだ! そうに決まってる! だって俺の嫁女神さまもいってたじゃないか! 俺にピッタリのチート能力だ、って…ほら、女の子の悲鳴が聞こえたときもそうだったじゃないか………! どっかで美少女が襲われててくれないかなぁ…って! そうだよ! 俺の身の回りの出来事がおれの思うがままに起こっているじゃないか! 都合のいい頭してる俺にピッタリのチート能力じゃないか! この世界の出来事は俺を中心に回ってるんだ! ご都合主義なんだ! おれのチート能力はご都合主義なんだ………!
フフフ………ふはっ…フハハハハハ! ほらぁ! 言ったそばから見えてきたぞ! この通路は見覚えがある! もうすぐに見つかる………! あぁ…待ってろよ! バラ色のハーレムライフはすぐそこなんだ!
はぁ…はぁっ! 息を切らしながら俺は暗い路地の中、地面を全力で蹴る。もうすぐ…もうすぐなんだ!
ぁ…はぁっ………!
狭い路地の両脇をかためる壁に反射された自身の息遣いまでつぶさに聞こえる。五感がどんどん研ぎ澄まされていくのが感じられる。
ハァっ! ハァ………!
いい加減にうるさいな、どんだけ反射して………いや、違う。俺の声じゃない! アイツら! クソっ! クソがぁ!
俺は焦燥感に駆られながら、最後の角を曲がる。
間に合っててくれ!
そして、目に飛び込んできた光景に俺は………
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その光景に息をのむことしかできなかった。 むせ返るような異臭がする。 あぁこれはなんと表現したらよいだろうか。いや、もう何がなんだか………。地面のところどころに半固形の液体が散見される。暗くてよくわからなくても、それがなにを意味しているのか、瞬時に想像できた。足元に何かが転がっているのを感じて視線を移すと、
ぅぇ……………
そこにあったのは死体だった。いや、ある意味死んでいると言っても過言ではない。手足は縄で縛られていた。目にはあるべきはずの輝きが感じられない。もう涙さえ出ないのか。彼女の口の周りや、彼女の服は先ほどと似た、暗闇の中であやしい輝きを放つ液体に濡れている。
ふふっ……ははは………なんだよ、全然都合良くなんてないじゃん……
そっか………もう…
俺は膝をつき、転がっていた彼女を抱き寄せた。
「………もう、大丈夫だよ………」
「ぅぁ………」
………
「安心して、俺は怖いことはしないから……」
「………」
俺はそうする事しか出来なかった。彼女を見つけた今、まわりなんて構ってられず、すぐに立ち去ろうとし、彼女の背中を俺の左腕に、彼女の両膝を右腕にして抱え、何とか持ち上げる。すると彼女は俺の後ろの方を指でさした。
あぁ…あいつらに見つかってしまったのか………はは、終わったな…
自分の未来を想像しながら振り返ると、そこにいたのは、熱く絡まりあう二人の男であった。
熱く絡まりあう二人の男であった。
………………………………………
濃厚に抱き寄せあう二人。全裸である。
なるほど………
俺は思わず彼女を落としてしまった。
「ぐぇっ」
うめき声をあげているが気にはしない。
黒い髪の男が足を浮かせている金髪の彼を壁に押し付けた。 それを受け止める彼は幸せの絶頂であるかのようで…………
………………。
うん。逃げよ。これは別の意味で身の危険を感じる。
……………すぅぅぅ~~~………はぁぁぁぁぁぁ~~~………
俺は全力で走った。
「もう意味わかんねぇよぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
「うぇぇぇぇ!? ちょっとなんで置いてくのぉぉぉぉ!?」
あ、やべ、そう言えばこの子は手足を縛られていたんだった。
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あの後俺は無我夢中で走り、やっとのことで表の通りに出ることができた。
はぁ…はぁ…どんだけ走ったかな………
「はぁ…はぁ…………いやぁほんとに怖かったよ………ずっとあんなの見せつけられててさ……」
「………そうだな」
「ははは………実はアレ、君が来る前にね、黒い髪の人と金髪の人が交互に攻めてて、三回戦に突入してたんだよ?」
「」
へ、へー………攻めるってナンダロウナー
「まるで見せつけるように激しく………もう、見てられなくってさ、吐いちゃったんだよね………」
………………………………わ、わぁ~~い、あの辺り一面汚れてたのは、まさかの吐瀉物だったよ♪ あ、じゃあ口元が汚れてたのって………
俺の視線の向く先に気付いたのか彼女は慌てて、手が縛られていたこともあってか、肩を使って服で口元を拭う。
あれ、そういえば彼女は手足を縛られてたのに俺はどうして………いや、アレだな。もうする事しか考えてなくてザルだっただけなんだな。
………そういえばもしやあの形容し難い匂いって実は彼女のゲロと…………あれ? やべ、今になってあの時の臭さが蘇って………
「吐いた後、出来るだけ逃げようと身をよじったら服にも、地面にも吐いたものが散らばっちゃって……ごめんね? 臭いよね?」
うわぁぁあっぶねぇぇ! 「ねぇ、ちょっとここら辺臭くない?」とか言わなくて良かったぁぁぁ! いやぁ良かった! こんなか細い声の天使様に嫌われたら死にたくなっちゃうよ!
あぁでも、やっと落ち着いてきた気がする………いやぁほんと、ご都合主義って何だよ…どこら辺がご都合主義なんだ…こんなんぜってぇチート能力じゃねぇわ……ふぅ………まぁでもつまりはこういうことだな!
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(時は遡る)
どっかで美少女が襲われててくれないかなぁ………………
……………
いや、そんな都合良くいくわけないよな……あったらご都合主義にもほどがあるわぁ〜………いやぁ嫌いなんだよねぇ〜ご都合主義……何というか現実感が無いってゆーかさぁ〜読んでて納得感がないってゆーか……まぁつまりはご都合主義はゴミだってこt…
そこへ暗い空間を切り裂く少女のものだと思われる悲鳴が聞こえてきた。
「きゃあぁぁぁぁぁ! 」(実は男の声)
(訳: うわぁ! そこに女が居やがりますぜ兄貴ぃ! とりあえず逃げられないように縛っておきましょう!)
うわぁぁぁぁぁキタァァァァァァァァァァ! ウッヒョオォォオ! いやぁご都合主義最高だなぁ! 誰だよゴミとか言ったやつ! 神は俺を見捨てなかった……! ふはっ、あの女神たまにはいい仕事するじゃないか、正式に俺の嫁へと昇格させてやろう……よぉし待ってろよ美少女! 今すぐ俺のハーレムに加えてやるからなぁ!
(うわぁぁぁぁぁぁぁ! オレあんな金髪男を惚れさせようとしてたぁぁぁぁぁぁ!)
先ほどの悪口はどこへやら、俺は歓喜に体を震わせ、走り出す。(うわっキモっ!)力の限り地面を踏みしめ、前へと進む力に変え、まだ見ぬ美少女との出会いを求めて足を進める。
「や、やめてください!」
(訳: どうして人前で堂々とおっぱじめようとしてるんですか!?)
な、何!? さっきとは違う別人の声だと!? それも女の子! ククク…これは願ったりかなったりだぜ…いやぁまさかここでしょっぱなから美少女二人を救って恋に落としてしまうとは……俺はなんて罪作りな男なんだろうか! ふふふ……くふ…アハハ! さぁ近づいてきたぞ! ここでレイプ魔を倒して俺は英雄になるんだ……!
(やっべぇあの金髪も女の子にカウントしちゃってるじゃん!)
走る。走る。長年の野望をかなえられるかもしれない、という希望を胸に、俺は声が聞こえてきた方の曲がり角を右折し、件の路地に出る。
そこで俺が目にしたのは、並んで立ち、既にベルトに手がかかっていて(※ 今まさにシようとしていたところ)、これから行われること(※ (ノーコメント))が待ち切れないのか、既に顔を紅潮させている二人の男と、その二人に怯えるように壁際に後ずさり、(※ あまりに頭のおかしな男たちへの)恐怖から、その白くて細い腕をその足を震わせている一人の少女であった。
くっこいつら……なんて羨まs……! (おぇぇぇ! 羨ましいとかじょーだんじゃねぇよ!)…………下劣なんだ………! もう一人の女の子はどこに行ったか知らないけど、止めないと……! (※ そもそも女の子は一人だけ)
「やめるんだ!」
俺の制止を聞いて、男たちが振り向く。
「なっ!?」
(訳: ヤバい! 更なる獲物が………!)
少女が俺に気付き驚嘆する。
「おいおいアニキィ……なんか面白そうなのが来ましたぜ? どうします? 混ぜてやりますか?」
(訳: どうします? あとで3Pでもします?)
「はぁ……冗談がキツイぞお前、今回は二人だけで………だろ?」
(訳: 今日は二人きりの逢瀬………だろ?)
「ですよね兄貴! 」
(訳: あ、兄貴ぃ……! キュン♡)
こいつら………! 余裕ぶっこきやがって……!
「おいヤクザども! その女の子を解放しろ!」
「それは出来ない相談だな……コイツは俺らのやってる所を見てしまってたんだよ……」
(訳: こいつはもう俺らがキスしてるところを見ちまったんだよ…)
「そうだよ兄貴の言う通りなんだ! まさかこのまま解放するなんて出来る訳ねぇ!」
(訳: そうだ! 最低でも俺らの濃厚な愛を見せつけてからだ!)
「に、逃げて!」
(訳: こんなとこにいたら、あなたまでもこいつらの餌食に………!)
少女が俺に言う。
「お前ら! その女の子を解放しろ! さもなければこうさせてもらう!」
よっしゃぁ! 結構カッコよく見えてるんじゃね!? ククッこのままの勢いでやってやるぜ!
(わーどこら辺がカッコイイんだろうなぁー)
俺は男に向かって駆け出した。男は後ろ手に持っていた直径2センチほどの鉄パイプで………………
(うぉ…どうして鉄パイプがやけに細いのか………本来何に使うつもりだったんだろうか……)
……ん?
あれ? そういえば俺どうやって戦えばいいんだ?
……………あ、
ボゴンッ!
…………あぁもう! 俺のチート能力って何なんだよ……
(※ ご都合主義ではありません)
こめかみに食らった金属の直撃により視界が暗転していく中、俺は男に引きずられている摩擦を背中に感じていたのだった。
(※ とりあえず邪魔なので、深く考えず、どこかに捨てられた模様)
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暗闇の中、少女のいる壁の方を見て立つ、男二人。
(多分金髪が前で、黒髪が後ろなんだろーなー(白目))
「ねぇ兄貴ぃ〜早く俺にもヤらせてくださいね?」
(訳: さっさと俺にも攻めさせてくださいね? さっきからお預けばっかで待ちきれないんすよぉ~♡)
髪の毛が金色の軽そうな男が懇願する。
「まぁ待て………焦っても気持ちよくなんてなれないぞ………?」
(訳: さもないと俺が攻めているときにも気持ちよくなれないからな?)
それに答えるのは落ち着いた雰囲気を醸し出した、黒髪で、角のある眼鏡をかけた男。
「ふふふ、まぁゆっくり楽しもうじゃねぇか………」
(訳: よし………ゆっくり行くぞ……)
「はは………やっぱ兄貴は最高ですよ……」
(訳: いつも硬派なのにこういう時に優しい兄貴やっぱイイ………!)
そうした光景を前に、暗がりの中だとより一層黒く見えるダークグリーンの髪の少女の目からは涙が溢れ出し、(※ 今まさに行われていることに)吐き気を覚えているのだろう、彼女は左手を口元に当て、青ざめた顔で必死に耐えていた。
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ハハハ…俺、終始ピエロだったよ…ふっ終わっちまったぜ俺の異世界英雄譚…あれ? でもなぜか俺の見ているはずがない光景まで見えて………
「あ、あのぅ………」
こんな展開ないぜぇ嫁女神さまよぉ…まぁ女の子が無事でよかったんだけどさぁ
「ちょ、ちょっと聞いてる?」
彼女がためらいつつもオドオドしつつ肩をたたいてきた。
「ん? どうした?」
「あ、あのさ、いつまでこんな状態でいなきゃいけないのかな?」
「あぁ…そう言えばまだ縛られたままだったな…あ、でもほら、俺も両手ふさがっちゃってるし」
「いやだから! 早く下ろしてって言ってるんだよ?」
そういわれて初めて俺は、まだ彼女をお姫様抱っこしたままだ、ということに気付いた。
いやぁそれにしても女の子の体ってこんなにも柔らかいのか………
「あぁ! ご、ごめんね? いや、ほら、このまま身動き取れない状態にしておけば色々できるんじゃないかと思ってさ」
「………………………………(ゴミを見る目)」
あ、やっべ、お目目が死になさった。うわぁつい安心感からか口が滑って………
「………すうぅぅぅぅぅ~~~………」
やべぇ! 早くほどいてあげないと! これは大声で周囲の人に訴えるつもりだ!
俺は慌ててほどいて差し上げた。
「私、その、汚れた服、着替えなきゃいけないし、それじゃ………」
あぁ、やってしまった………美少女と仲良くなるチャンスが………
「あ………。あのさぁ!」
「お、おぅ…どうしたんだ?」
「………れおな」
「………え?」
「レオナ! 私の名前………だよ?」
「へ!?」
そう、目を左下の方へ伏せつつ言った彼女の頬は、夕方の赤い日の光のせいか、ほんのり色づいて見える。
「そ、それじゃ! また!」
「ちょ、ちょっと待って!」
そう言って走っていった彼女の、レオナの抹茶のように濃く、短い髪の毛は、沈む夕日に照らされて、不思議と艶やかに輝いて見えた。
はぁ…オレ一文無しなんだけど………どうしたらいいか教えてくれる展開じゃないの?
彼女が走り去っていく背中を眺めながら、俺は途方に暮れていた。
いやぁなんて心温まる話なんだ………(白目)
ほんと途中まで死ぬほど誰得な展開……