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すれ違い

学級委員長内山くん、改め家庭教師内山くんはとても優秀だった。


放課後二人で机を並べて勉強する。

内山くんが自分のノートを元に大事なところを中心に解説してくれる。

全くわかっていなかったけれど、なんだか少しわかってきた気がする。


内山くん、神だ。

もう内山くん無しで私の高校生活は考えられない。




「じゃあ、今日はこの辺にしようか」

内山くんがそう言って今日の補講は終わりになった。

優秀な家庭教師の内山くんは手早く明日までの課題を出してくれる。

そつがなさすぎて、泣ける。


荷物をまとめて二人で並んで教室をでて、出口まで歩く。

部活も終わったのか、人影は少ない。話し声が廊下に響いた。

「明日は英語にしようか。あとは化学と…」

思い出したようにバッグからノートを取り出す。

「これ、俺の化学のノートだけど、明日までに時間あったら見といてよ」

「え、いいの?」

「化学は一通りまとめてあるから」

内山くんのノートに手を出したら、私たちに声がかかった。


「真依」


そこにいたのは、まさかの王子だった。


「あれ?もう部活終わったの?」

そもそも今日は部活の日だから、もっと遅い時間になるはずだ。王子から一緒に帰ろうとも言われていなかったし、迎えにもこなかったから、今日は別行動だと思っていた。


王子はいつも周りに見せるようなキラキラした笑顔で内山くんと私を見る。

それを見て思わず背筋がゾワっとした。


なんだ、あれ。

思い切り不機嫌じゃないか。


周りが見たら素敵だと勘違いするような笑顔だけど、私にはわかる。

ああいう時の王子はとても不機嫌か、怒っているか、嫌がっているか……とりあえず良いことはない。


王子はその胡散臭いほど爽やかな笑顔で一歩私たちに近づいた。

「二人で、勉強?」

内山くんはチラッと私を見た。とても残念なものを見るような目で私を見る。

「うん。試験前だから」

「そう、熱心だね」


そうして私と内山くんを交互に見て、内山くんの持っているバッグが私の腕に触れているのを見て、片方の眉を上げた。

「真依、帰るよ」

そういうと、先に一人で歩き出した。

私は内山くんと顔を見合わせて、それから王子を追いかけた。だけどそこに内山くんの声がかかった。



「五十嵐、明日も佐藤さんと勉強しても、いいかな?」



王子は私の前でぴたりと足を止めた。

振り返った顔には、さっきまでのキラキラ笑顔はもう無くなっていて

完全に感情のない無表情だった。



何も答えずに、私をチラッと見る。内山くんはそんな王子に、笑顔で話しかける。

「佐藤さん、俺に勉強を教えてもらいたいみたいなんだよね。だから、いい?」

その言い方にちょっとだけ引っかかったけど、内山くんが笑顔で私をみて、同意を求めるように

「ね、佐藤さん」

そう言ったから、私はつい頷いてしまった。


王子は内山くんと、それから私を見て小さく舌打ちした。

「好きにすれば?」

言うだけ言って、また前を向いて歩き出した。


内山くんを見ると、笑顔で手を振る。私は軽く手を振って、急いで王子の後をおった。





「王子」

王子はいつもよりもずっと早く歩いて、走ってようやく追いついた。だけど私の方を見ようともしない。

「ねえ、王子」

手を伸ばして、だけど王子かが拒絶するような空気が溢れていて、思わずその手を止めた。

「もしかして、怒ってる?」


違うかもしれないとは思うけど、もしかしたらと思って聞いてみる。

王子はぴたりと立ち止まった。


そこはもう駅で、いつもよりも学校の人が少ない駅は、静かだった。



「どうして怒ってると思うの?」

「……話してくれないから」

私は困って下を向いた。


話してくれないし、何も説明してくれないし、どうしたらいいかわからない。

王子が、変だ。


「話すことがあるのは、真依じゃないの?」


「え?」


王子はとても静かに私を見つめる。



いつもはもっとはっきり嫌な顔をしたり、からかうような顔をしたり、不機嫌な顔だって見せるのに

今日はなんの感情もわからない。


オロオロする私を王子はじっとみている。

そして悲しそうに笑った。


「俺に話すことが、あるんじゃないの?」



考えたけれど、それが何かはわからない。

「話すことって……」

「もう、いいよ」


王子の冷たい声が聞こえた。


とても冷たい目で私をみると、ため息をついた。

「イラっとする」


それだけ言うと、私を置いて先に駅の中に入る。

「王子?」

声をかけるけれど、今度は足を止めることなく行ってしまった。

追いかけることもできなくて、私は一人途方にくれた。





翌日、王子は私と話さなかった。

話すどころか、私の近くに来ることもなかった。

視線すら、合うことが無かった。



今まではそれが普通だったのに、それが無くなったら急に胸にぽっかりと穴が空いたみたいだった。


「佐藤さん、始めようか」


内山くんが隣から声をかけてきた。

「うん」

そう返事をしたけれど、結局何も頭に入らなかった。



気がついたら、王子の席をみていた。


今までだったら、いつも見えるところにいて、すぐ近くに周りのみんなと話している王子がいたのに


すぐ近くに王子がいるのが当たり前だったのに。



今日に限ってその姿は無かった。


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