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 - プロローグ 「 症例3:鷲頭藤也(わしずとうや) 」 -

鷲頭が巨人を見た、という少年の相談を受けてから一週間後。

小人を見た、という少女の相談を受けてからは四日後。


異変は鷲頭にも訪れた。


「おかしいのは私の方か、それとも、世界か?……私だろうなぁ、間違いなく」


そんな独り言を呟くのは、おかしくなってしまいそうな自我を繋ぎとめるためか。

幸いなのは、明らかにおかしなその独り言を誰にも聞かれていなかったことくらいだろう。


鷲頭の目の前の空間が歪んでいた。

目眩などで視界がぶれるなんてレベルではなく、明らかに視認できる空間の歪み。


まさか、別世界にでも通じているのだろうか。

アリスが不思議の国に迷い込んだように。

この歪みに触れれば、懐中時計を抱えた兎やハートの女王に、会えるというのか。


鷲頭は手を伸ばして、歪みに触れた。


「あなたはグリフォンかしら。私を海亀の所まで導いてくれるグリフォン」


少女の声が聞こえた。

手を伸ばした先に歪みはなく、少女が一人立っていただけだった。


「あ、えっと……」


鷲頭は混乱した。

どこからどこまでおかしいのか分からなくなってきた。

歪みは現実だったか、この少女は現実か、現実とはそもそも何か、私は誰だ?


「あれ、あぁ、そう、貴方もそうだったの。じゃあグリフォンにはなれないのね」


少女は何がおかしいのかケラケラと笑いながらクルクルと舞っている。


「君は、誰だ?」


私は尋ねた。


「知っているくせに」


少女は意地悪な笑みを浮かべた。


「私は……」


精神科医して働き始めて3年目。

受難は終わらない。


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