よくあるけど理解できない謎現象
皆さん、コロナウイルスの影響がある中、いかがお過ごしでしょうか。最近二回ほどマックに行ったのですが、ポテトに塩を振られていない悲劇に襲われました。
僕が考えた策は漫画でよくあるような、主人公とライバルが戦ってなんかいい感じになって、お互いを認め合って別れるというあれである。
もちろん別に自分が主人公とか、イコンがライバルとかそういう関係では無いのだが、男が認め合うには拳を交わせばいいとはっきりとわかる例だ。
今回はそのよく分からない理論を使わせていただこう。なんかいい感じに戦えば勝手に何か察して満足して帰ってくれる気がする。
「剣を抜け、イコン」
「……」
返事がない、ただの屍のようだ…と言いたくなるレベルで反応がないイコン。地面に両手をつき、項垂れている。
……イコンだよな、名前間違っていないよな?なんで返事しないのさ?
side イコン
……これはチャンスなのだろうか?
夢を諦めきれず、情けない姿を晒し続けていたこの俺を憐れんだ運命の慈悲か。それとも誰かが裏で仕組んでいるのか。
……いや、今はどうでも良い事だな。
あのメリル・シュティーアが剣を抜け、お前の全てを見せろと言っている。憧れて、努力しても近づけなかったあのメリル様が自分から声をかけてきている。
……ああ、やっぱり自分はいまだに夢を捨てきれなかったらしい。
あの鮮烈な姿を、あの海千山千の貴族たちをも相手にしなかった自分の憧れが自分を見ている。
ここで剣を抜かねば、ここで自分という存在を刻ませてやるのが戦士というものだ。腰にある剣を握り、ゆっくりと引き抜くにつれ自分の笑みが深まるのが良く分かる。
──全てがこの時のため、この戦いのためだったのだと考えると自分の歩んできた人生が誇らしいものに思えてきた。
武の頂を目指すために剣を振るい続け自らを磨き上げた日々も、いつまでたってもゴールが見えない道に心が荒んだ時でさえも──
──全ては今、この瞬間のために。
だがメリル様に挑むにはまだ少し心が引ける。本当に自分はメリル様に挑むだけの資格があるのだろうかと。
side メリル
イコンじゃなくて遺恨にでも聞こえたのか?はっ…まさか名前の由来が「遺恨」で、それについてコンプレックスでも抱いているのか!?
そしてコンプレックスを刺激されて意識を失ったのか!?
……頭に衝撃を与えれば目が覚めるかな?
「……どういうおつもりですか?」
ようやく反応が返ってきた。よかった、いつまでたっても反応が無いから「権力者パンチ」か「偉い人キック」か「最高位貴族チョップ」で目を覚ましてやろうと検討している所だった。
ここからは僕の演技力…というより場をうまく誤魔化す力の出番だな。
「力を求めて剣を握ったんだろ?日々修練を積んだんだろ?」
「…昔の話ですよ」
「その身のこなし。その体つき。…僕の目は誤魔化せないぞ」
ちょっと今のセリフは危ういか?戦士として鍛えているのが分かるという意味で会って決して他意はない。
「未練がましいと笑ってくれてもいいんですよ?無駄なのに諦められずにあがき続けている姿が滑稽だと…」
……勝手に言って勝手に落ち込んでやがる。こんな短いやり取りで若干鬱になったらしい。
「精神的に不安定だから帰ります」って言ってくれれば喜んでサヨナラするのに…まあ、無理だろうな。
さっきまでは「どんな罰も受け入れます」みたいな顔だったのに…いまや「早く自分に裁きを!」とこちらを急かしている顔だ。
精神的に不安定だと自分から裁きを求めるようになるのか…人の心とは難儀なものだ。まあ難儀だろうが何だろうがさっさと帰ってくれればそれが一番うれしいのだが。
「もう一度だけ言おう。剣を抜け、そして僕に見せてみろ」
早く剣を抜け、なんか良い感じに戦うぞ。
Side イコン
「もう一度だけ言おう。剣を抜け、そして僕に見せてみろ」
……一体この方は何がしたいというのだ?
改めて目の前の人物——メリル・シュティーアに目をやる。この国に並ぶものがいないほど強大な権力を持つ貴族。
かの「四家」すらも軽くあしらうことが出来る最高位の貴族。国の柱であり、武を束ねる最強の貴族。
……そして俺が家から飛び出したきっかけになった人物。
そんなシュティーア家の御曹司が俺の前にいる。メリル・シュティーアという人物にはいろいろな噂を聞いたことがある。
──いわく社交界に出ているのに誰も見つけられないとか。
──ありとあらゆる才能を持っているとか。
──大人すらも彼の前では形無しとか。
一聞しただけでは眉唾ものだと一笑に付すような噂ばかりだが、それが決してまやかしや嘘ではない事を大体の貴族が知っている。
まだまだ子供だと侮った「四家」の当主が勝負を挑み、叩きのめされたのを皆目にしていたからだ。
ボードゲームを挑めば、片手間で弄ばれ。国を導くために必要な知識とか言いながらその当主が得意な分野で知識比べをしても敗北。
最後には理性の線を越えたその当主がまだ幼かったメリル・シュティーアに決闘だと叫んだ。
子供相手に決闘を申し込むなどと周りが止め始めたが、なんと国王がそれを承諾。そしてなんと国王に続きメリル様の父である王国騎士団長すらも決闘を後押し始めた。
言外にお前は子供以下だと言われ激昂した当主は機甲を顕現させ、会場に悲鳴が上がったのだが──次の瞬間にその当主は黒い檻の中に閉じ込められていた。
檻から抜け出そうと必死になって暴れるが、機甲のパワーをもってしても壊れないなど一体どんな魔法だったのか。
そして次第に抵抗が弱くなっていき、まるで力をすべて奪われたかのように四家の当主は倒れ伏した。
その時、誰もが誰が明確な勝者か理解した。四家の当主は相当苛烈な人物だったのにそれ以来牙を抜かれたように社交界では大人しくなっている。
幼いながらも社交界に強烈な印象を与えたメリル様の周りには、気に入られようと誰もが周囲に集っていった。
機甲を顕現させられる年齢にも達していないのに、力を示したメリル様に近づこうとするのは当然の動きだ。
欲望と野心を忍ばせて何人もの貴族がメリル様に近づいた。だが逆にメリル様は冷たい目であしらっていき、そしていつしか社交界の会場に姿を現さなくなった。
シュティーア家の放任主義…というより子供に冒険させるという慣習は有名だ。社交界で姿を見なくなったが、どこかで冒険しているだろうと思っていたがまだかこんな所で会うとは。
……出来れば見られたくなかった、こんな堕落した自分を。
憧れたのだ──会場中の注目を全て引き付けたこの人物を。
世界で一番強くて頼りになると信じていた父すらもあしらうこの人と対等に話せるようになってみたかった。
あれほど隔絶したあらゆる「力」をもったこの人の見る景色はどんなものなのだろう?羨望の眼差しで見る事しか出来ないが、いつか追い付いた時にどんな顔されるだろうか?
そう思って努力し──届かないと挫折して捻じ曲がった今の自分を見られたくはなかった。
周り者達は、騎士団の仲間達は慰め、応援してくれた。お前はまだ若い、まだまだ伸びる余地があるだろうと。
だが彼らに俺がメリル様に追いつきたいと言ってみたら全員ありえないという反応した。それを見て確信した、やはりそんな事は夢物語にも劣る妄想だ。
凡人が考えるにもおこがましすぎる荒唐無稽な話だ。だが頭で理解しても…心で納得させられても俺はどこか諦めきれなかった。
やめよう、諦めようと思っていたのに剣を振らない日はなく。誰もが驚愕したあの魔法を自分なりに再現するべく始めた魔法の訓練もやめられなかった。
かつて──いや、今もなお俺が憧れるその強さを!
「──参る!」
Sideメリル
やっと剣を抜いたか。
またもやなっっっっっっっっがい回想シーンに入りやがって、妄想しないと死ぬ病気なのか、こいつ?
まあこれでようやく「なんかいい感じになって帰ってもらう」作戦が出来るというものだ。
さあ、見せてもらおうか。
拳を交わせば友情が築かれるという謎過ぎる現象を。
イコンの回想シーン
メリル様は冷たい目であしらっていき
→え、なにこれオッサンばっかり近寄ってくる。絶対野心隠し持っているだろ、そういうのは父の所に行けばいいのに。僕は同年代の友達を作りに…ん?なんか同年代には避けられているような…
そしていつしか社交界の会場に姿を現さなくなった。
(初期の頃)→会場にいても碌な事ねーや、庭で友達がいなさそうなボッチでも探すか。…おいおいどこ見ても隠れてイチャイチャするリア充ばっかり。他所でやれよ庭はボッチの聖域だぞ?
(現在)→ 社交界なんて詐欺ネームやめろ。交わるとか嘘だろ同年代は誰も近寄って来ないぞ。え、招待状が来た?誰が行くかそんなクソイベ。




