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友達のつくり方


 自分でも僕の立場は素晴らしいものだと思う。優秀ゆえにこれ以上勉強することを強制されず、自由気ままに過ごせるのだ。


今頃シオンは修練場で剣でも振っている頃だろうが、僕は自室のソファで大福のようにとろけている。だがこんなに努力の差があるのに、腕の差は縮まらない。


 一年早く産まれた以上の差が僕とシオンにはある…これは母が言っていた話だっけ。なるほど、これならシオンが病むのは無理もないし、母もシオンばかり気にかけたくなるのだろう。


 だがシオンもそんなに劣等感ばかり感じなくてもいいと思う。僕には無くてシオンにはある良い所なんて探せばいくらでもあるのだから。


 ……ニコナデポすらも出来そうなイケメン度とか、人望多い所とか。



「だらしないですよ、メリル様」


「だらしない訳じゃないよ、カレル。だらしなくしているんだ」


「つまりだらしないじゃないですか」


「そうとも言う」


「……何かすることないのですか?」


「今日のスケジュールは?」


「ありません」


「課せられた課題は?」


「ありません」


「じゃあやる事ないな」


「友達でも誘…」


「はいストップ」


 今はだらける時間だ。カレルにからかわれる時間ではない。


「メリル様にも気軽に誘える友達がいるじゃないですか」


「空気とか植物とか本とか言うなよ」


 言ったら今日は本気でふて寝だ。


「言いませんよ。アスタさんがいるじゃないですか」


「………………えっ!?」


「何で驚いているのですか?」


「だって3日間ほどの付き合いだし…」


 かなり濃密な時間を過ごしたが、長さで言ったらわずかである。


「メリル様にとってアスタさんは何ですか?」


「仲良くなった知り合い」


「友達と何が違うのですか?」


「ほら、重ねた歴史とか互いの思いやった時間とか…」


「彼女ですか。……友達に求めるものが重いから友達いないのでは?」


「…重い?」


「重いですよ。友達はもっと気軽に作れます」


「友達ってそんなに簡単に作っていいのか!?」


「ええ。お互い仲良くする気があればもう友達です」


「……なるほど、じゃあアスタは友達なのか」


「ええ、向こうはそう思っているはずですよ」


「……なんか照れるな」


 始めて自分から作った友達かと思うと、なんかアスタがとても大切な人に思えてきた。皇子達とは親同士の付き合いで、自意識がはっきりしていない頃から遊んでいるので自分から友達になったわけでは無いのだ。


 だがアスタは僕自ら、自分の意志で友達になったのだ。いや、こう振り返ると自分も一歩ずつリア充街道に進んでいるんだなぁ。


「カレル、僕は人として成長した気がするよ。…いや、進化と言っても差し支えないな」


「差し支えあります。これくらい皆子供のころから出来ていますよ」


「僕が特殊な立場だという事も考慮してほしいね?」


「シオン様も殿下たちもあんなに友人がいるのにですか?」


「…………アスタの所に行くぞ。準備しろ」


「かしこまりました」






「…って言う事があったんだ」


「すまん、メリル。その言葉だけじゃ何も伝わってこねぇ」


 アスタのいる街に行き、久しぶり…でもなく彼に会ったので再会の挨拶をした。


「心で通じ合えば伝わると思ったんだ」


「俺は心読める特殊能力とかないぞ?」


「知っている」


 友達だし、以心伝心とか出来るか試しただけだ。案の定無理だったけど。


「こんなに早くまた会えるとは思っていなかったぜ。貴族って結構暇なのか?」


 こんなすぐに再会したせいか、アスタが突っ込んでくる。


「ちゃんと忙しかったさ。学院入学を祝うパーティーに出たしね」


「おお、やっぱりメリルは学院に入るのか!」


「そりゃあ貴族だし、入学は義務だよ」


「ちゃんと勉強していい貴族になるんだぞ!」


「分かっているよー」


「なんか反応薄いな。もしかしてデミグみたいに勉強嫌いか?」


「勉強頑張る意味ないからなぁ」


「意味はあるぞ!知識を…」


「あー違う、そういう意味じゃない。学院でわざわざ勉強しなくてももう十分頭に積み込まれているって言う事」


「えっと、どういうことだ?」


「家はちょっと厳しくてね。学院でいい成績とるために学院に入る前から勉強しているんだ」


「ほー、貴族も大変だな」


「一部だけさ」


「厳しい家だからメリルは大人っぽいのか?」


「そうなのか?自覚無いけど」


「変に大人びているとは思うぞ」


「子供っぽくしようか?」


「別に見たくないぞ」


「アスタは子供好きだろ、遠慮するなって。」


 思いっきり目を輝かせながら付近にあった露店を指す。


「アスタおじちゃんあれ買ってあれ買って!」


「……」


「おい、無視して先に行くなよ。渾身のギャグだったのに」


「寒気がしたんでな、見ない努力をした」


「アスタの魔法ギャグよりは寒くねーよ」


 アスタの魔法なんか魔法というにはおこがましく、大道芸と呼ぶにもつまらなさすぎる一発芸以下の見ごたえしかない何かだ。


「お、言うじゃないじゃねぇーか!俺が開発した新魔法を見せてやる!」


「いいよ、べつに見たくないし」


「遠慮すんなって」


「台詞パクるんじゃねぇ」


「新魔法・目つぶし!」


 そう叫ぶとアスタは左手から砂を出し、全力でうちわ代わりに振っている左手で風を起こして前に飛ばした。


 だが所詮手で起こす風なんかたかが知れたものだ。石粒はあっけなく地面にパラパラと落ちていく。以前よりもわずかに飛距離が伸びているが、だから何だというのだ。


 砂が軽く当たるだけで当然威力もくそも無い。つまるところ依然と大差ない。


「…………で?」


「いや、お前ならわかるだろ!この革新的な進歩が!実用性が!」


「誰の目をつぶすの?犬か?ネズミか?それとも虫に砂かけて遊ぶのか?」


「……ゴブリンくらいならなんとか届くんじゃねぇーか?」


「そんなに接近する殴ったほうが早くね?」


 右手で魔法を、左手で風を起こすために魔剣カラドボルグを手放さなければならないというクソ技だ。もちろん一瞬両手が使えなくなるというリスクに見合ったリターンなどあるはずもない。


「…そうだ!足りないなら足せばいい!」


「何だ急に」


「飛距離が足りないなら大自然力を利用するまで!」


 そう言って天に手を掲げ再び魔法を発動するアスタ。


「はっはっはっは!これなら……ん?」


 だが都合よく風が吹いいてくる訳もなく、砂粒はアスタの顔にかかった。


「あー目に砂が入った!」


 笑えるネタとしては以前よりも進歩しているかもしれないな。やっぱアスタの魔法センスは壊滅的だ。魔剣を握っている時とは別人のようである。


 ちなみに僕は碌な事にならないと想像がついたので、アスタが魔法を発動した瞬間にその場から離れたので難を逃れた。




「おい、仲間なら一緒に巻き添え食らうものだろ!」


「あんな間抜けな自爆に巻き込まれる訳ないだろ」


「間抜けってなんだ!」


「アスタは魔法を使うとポンコツになるんだから、もう封印したら?」


「う~ん、でも孤児院の子供達へのウケはいいからなぁ」


「実用性どこいった。完全に遊んでいるじゃないか」


 というかウケがいいとか完全に嘘だろう。孤児院で披露していた時はあんなに笑っていた子供たちが一瞬で白けていたぞ。


「メリルも精進しろよ」


「今のアスタよりは確実に魔法を使いこなせるよ」


「ほう、試してみるか?」


「……いつも思うけどその自信はどこから出てくるんだ?」


「心だ!」


「…自信持つのは魔法以外にしとけよ」


「見ていろ、今に魔法でお前を追い抜いてや…」


「ママーあの人たち変なの!」


 近くにいたらしい小さな女の子が僕とアスタを指してそんな事を言いだした。


「どこが変なの?」


 いや、止めろよお母さん。そこは自分の子供の言動を止めるところだよ。


「さっきから見ていたけどそこのおにーちゃんが急に子供になった」


「あらそうなの、大変ねぁ。病気かしら」


「……」


「隣のおじちゃんは急に砂遊び始めたよ。いいなー」


「私たちも帰って遊びましょう?」


「うん!」


「……」


 親子は離れていった。


 だが周りからの注目を集めてしまったようだ。


「ママー、あの人たち…」


「シッ!見ちゃいけません!」


「でも…」


「ダメなものはダメ。帰るわよ」


 そして今度は他の親子から攻撃が飛んできた。このままこの場に留まるのは非常によろしくない。戦略的撤退をしよう。


「……ギルド行こうぜ」


「……ああ」


 アスタの返事はちょっとやさぐれていた。




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