忌命の森
前回のあらすじ
アスタ「軽く飯食って、街周辺の見回りをするぜ」
メリル(屋台のサンドイッチとか串焼きとかか?)
女将「へい、おまち!」 ( ゜ω゜)ノ(巨大な腿肉)
メリル(……軽く?)
昼食を食べ終えた僕らは店の外に出るとまだまだ途切れない列を見かける。あれからも匂いにつられたのか、客がどんどん並んでいるようだ。
金持ちそうな商人などもしっかり並んでいる所を見るに、権力者を横入りさせるような事もしないらしい。それも人気な理由の一端かもしれないな。アスタが予約しといてくれて助かった。
それにしても…
「かなり量多かったね。お腹が重い気がするよ」
「そうか…?そんなに多くなかった気がするんだが」
獣人は燃費が悪いのかもしれないな。結構な量が運ばれてきたのだが、殆どアスタが平らげてしまった。なのに平気そうな顔を見るといったいどんな胃袋をしているのか気になる。
<記憶>の世界の牛は4つも胃があるらしいが、もしかしてアスタも…?
いやいや、獣人といっても内臓は他の人族と変わらないはずだ。でも先ほどの食いっぷりを見るに、ありえない話ではないと思えてくる。
「何難しい顔しているんだ?」
「アスタの胃は4つあるかもって推測していた」
「何言っているんだメリル、一つに決まっているだろう」
「体を切り開いて証拠を見せてくれ」
「出来るかっ!馬鹿なこと言っていないで、見回りに行くぞ」
「わかったよ」
街の外まで出て、少し歩くと後ろを付けてくる嫌な雰囲気がする。前回まで、魔法効果のあるローブでまいていた僕の護衛達だ。
しかしローブはカレルに没収されているし、何かと目立つアスタと行動しているとすでに知られてしまっている。
さて、どうしたものか。他の護衛ならいざ知らず、リーダー格の男には何を言っても引いてくれないだろう。幼い頃に地の果てまでついていくとストーカー宣言をされているし。
「おい、メリル。後ろのやつらに気付いているか?」
前を向きながらアスタが話しかけてくる。そうするのは尾行している連中に彼らに気付いていると悟られないためだろう。
だが、杞憂である。あれは僕の護衛だ。
まあ、アスタの立場からすれば知りようのない事であるが。
「あれは最近この街に来たやつらだな。俺の実力でも推し量るつもりか、メリルの誘拐に
でも来たのかもしれねぇ」
護衛の仕事です。
思わずそう口に出しそうになるが、ぐっとこらえる。 この状況を利用すれば彼らを撒いて、気楽な冒険ができるはずだ。
そもそも僕がこの街に来る前に危険な存在がいないか調査済みである。
ケロルベスとオルトロスの群れが現れたのはあくまで例外だ。それ以外に危険な存在といえば…ああ、エリーニュスがいたな。だがあれも極めてまれな例だ。あんな小さなダンジョンにあのレベルの化け物が出る事は滅多にない。
しかし、こう振り返ると…なんかわりと危険な目にあっているな、僕。 やっぱり護衛について来て貰ったほうがいいのでは?
いや、ダメだな。護衛がついてくると、例えば森なんかに行こうものならば、彼らは先回りしてめぼしい獲物を全滅させるので、ぜひ街で休暇をとっていてもらいたい。
もう2度も危険な目に会っているんだ、3度目は無いだろう──いや、<記憶>の世界のことわざに2度ある事は3度あるっていうものが──忘れよう、あれはあの世界のことわざだ。
やはり護衛達には久々の休暇を取って貰おう。
「よし、なら撒くか。面倒は勘弁だしね。」
帰ったらカレルに何を言われるか分からないが、気楽な冒険が出来るなら安いものだ。
「そうだな、なにかいい考えはないか、メリル?」
「…魔法を使えば何とかなるかも」
「俺の魔法の出番か?」
「出番があると思うの?」
「…冗談だ。」
アスタの魔法は手から砂が落ちていくだけだろ。
「それでどうするんだ?」
「魔法で人影を創って、全員違う方向にばらけさせるんだ」
「そんなことが出来るのか?」
「ああ、ただし問題がある。闇魔法で作るから人影は真っ黒なんだよ。このままばらけさせても僕らとの違いはまるわかりだ。どこかいい感じに暗いところある?」
「それなら森の方へ行こう。木々が生い茂って日の光があまり届かないはずだ」
「よし、森はどっちだ」
「こっちだ、ついてこい」
進む方向を変え、アスタの先導についていく。やはり人を追跡したり、撒くには地理に詳しい人がいると安心だな。
街の外まで出ると、追跡者たちとの距離が近づく。本来の暗殺者など後ろ暗い連中なら障害物が少ない外ではもっと距離を離すはずなのだが、彼らは普通の追跡者ではない。
護衛である。
街中よりも危険が多い外だからこそ距離を詰めているのだろう。この事は僕にしか分からないが。
「おい、この追跡者たちの動きがおかしいぞ、メリル。街外にでたらすぐに距離を詰めて
きやがった」
「一回も振り返ってないのによくわかるね、アスタ」
「長く冒険者やっていると、色々と身につくのさ。しかしこの堂々とした感じ、よほど自
分達の腕に自信があるらしいな」
そりゃああるだろうな。公爵家の護衛を任せてもらえるだけの実力があるという自負と自信が。後ろの連中を総合すると並の貴族の屋敷ぐらいは制圧できる戦力である。
「それは怖いね。襲い掛かられたらたまったもんじゃない」
「ああ、それに俺は人を斬りたくねぇしな」
「アスタって対人戦はできるのかい?」
「多少の経験はあるが、あまり自信はねぇな」
まあ武器も取り回しが悪い大剣だし、対人戦に向いているとは言えないだろう。雑魚をまとめて吹き飛ばすパワーは驚異的だが、当たらなければ意味は無い。
「訓練しといた方がいいかもね、より上位の冒険者だと身を狙われるかもしれないし」
「そうだな、参考になる人物でもいればいいんだが」
僕がぱっと思いつくのは父だ。しかしアスタが父を参考には出来ないだろう。参考と言うには少なくともその動きぐらいは見ておきたいが、アスタが父に会うのは立場的に無理だ。
「まあ、それは追々考えるとするか。まずは目の前の、いや後ろの事を考えるか」
「森が見えてきたね」
「ああ、後ろの連中が早めに仕掛けてこないで幸いだったな」
それは大丈夫です。
たぶんいつまで待っても仕掛けてこないよ。
「よし、じゃあこの辺で…ほいっと」
そう言って僕は自分達の背後に巨大な闇の塊を出現させ、そこから人形を生み出す。僕とアスタと似たような形をかたどり、ペアをつくっていき、並ばせる。
もちろん僕が操作しているのであぶれるものはいない。ペア相手を見つけられないボッチは存在しないのだ。
おっと、そんな事を考えている場合ではないな。
ここまでやったら護衛達は僕らが何をやろうとするか察するだろう。あまりもたもたしている時間は無い。
「アスタ、これからバラけるわけだけど本体の僕らはどこに行く?」
「そこは考えてある。俺についてこい」
「分かった」
アスタが走り出すのについていき、同時に人形達を違う方向に走らせる。
森の暗さと相まってうまく攪乱できるだろう。
道中は不思議に思うほどモンスターには出会わなかった。こういう森では小型なモンスターの魔力がいくつも感じられるはずだが、この森にはいないらしい。
アスタについていった先には入り口付近よりも大きな樹木たちがそびえたっている。森の内部に入るほど栄養が豊富なのだろうか、木の種類が違うからか。植物には詳しくないのでよくわからないな。
「アスタ、この森は…」
「おお、そうか。お前は知らないのか」
僕が何を聞こうとしているのか察したようだ。
「この森は全くモンスターが出て来ない場所でな、この周辺じゃ「忌命の森」って呼ばれ
てる」
そんな場所があるのか、しかし変だな。
「それならもっと有名になってもおかしくないはずだ。人が安全に来られる森なんて中々
無いぞ」
「昔、騒ぎになりかけたらしいな。でも、ここの樹木は脆くて使えやしないし、ろくな食
べ物や薬草もないから誰も近寄らないんだ」
なるほど、だから街からも近いのに伐採された痕跡がないのか。
「一応盗賊が棲みつかないように見回りだけは街の冒険者達でやっているんだがな」
食べ物も無いからモンスターも寄ってこず、盗賊も棲みつかないとなるとたしかにこの状況は納得だな。動物を忌み嫌う森…いや、忌み嫌っているのは動物の方か。
この森には本当に何もないから──いや、本当にそうだろうか?
「アスタ、この辺にも鳥種モンスターはいるだろ?」
「そりゃあいるだろ。大抵の鳥種モンスターは飛べるんだから、どこにでも現れる。」
「アスタはこの森で鳥種モンスターを見たことある?」
「ある訳ねぇだろ、忌命の森だぞ。」
いや、それはおかしい。モンスターだって疲れはするし、木に止まって羽休めぐらいするだろう。
アスタが偶然にも一度も見かけなかった可能性もゼロではないが…
この森には何か秘密があるのかもしれないな。
少し、調べてみるとしよう。
もし何か秘密があるのなら──帰りの日までには判明してほしいな。
昨日は投稿できなくてすいません(;´・ω・)
寝落ちしました




