ペルーダ
昨日の作者
まだタイトルに納得いかないなぁ…
そうだ!ことわざを使ったらいいもの出来そう!さっそくググろ—
→兼業ってなんかカッコいいタイトルじゃないからこの部分変えるか。あと英語で書いた方がウケがよさそうだな。
それで完成したのが――
「NISOKUNOWARAJI~貴族と冒険者~」
秒でボツにしました。
僕の人懐っこいキャラを演じるのはあっさり失敗したが、今回の趣旨ではないので気にしないことにする。
「それでアスタさん、どうやってモンスターを探すの?」
「ああ、この周辺はモンスターの出現情報も多いし、こうやって話しているだけで向こうから来るだろうさ。」
自分を餌にするとはぶっ飛んだ発想だな。しかも傍らに依頼者もいるのに。
「というか演技はやめないんだな」
「まあ今日だけ付き合ってくださいよ。練習になりますし」
というよりも今、演技をやめたら本当の素が出る気がする。急にあれに戻ると、アスタも受け入れがたいだろう。カレルが言う分には、冒険者相手にはやめた方がいいと言っていたし。
「お、右から何か来るみたいだぞ」
「流石、冒険者はそこらへん鋭いですね」
僕もモンスターの魔力が近づいてくることを悟る。やがてそのモンスターははっきりと目視できる距離まで近づいてきた。
……知らないモンスターだな。
あれは蛇…だろうか?
緑色の硬質な皮膚に、鋭い牙。目はギラギラと輝いていて凶暴そうだ。背中には甲羅を背負っているし、なんとも珍妙なモンスターだな。
「あれはペルーダだな。火を噴くことと、生命力が高いのが特徴だ。メリル、一人で戦えるか?」
「やってみるよ、アスタさん」
「かなり凶暴だから気をつけろよ」
「うん」
腰に装備していた剣を取り出す。この剣は魔剣ではないが、切れ味だけを追求して作られた逸品だ。大貴族が大金払っただけの価値はある剣に相応しい性能を持っている。
しかし、僕だけに戦わせる理由は何だろうか?実力を測る…という意図でもあるのかな。
まあ、すぐに分かる事だろう。ペルーダは僕たちに気が付いたようで一直線のこちらに向かってくる。亀と蛇を足したような生物なだけあって、動きは機敏ではなさそうだ。火だけには気を付けないとな。
こちらも剣を構えて走り出し、ペルーダに肉薄する。
そしてペルーダが反応するよりも早く、その頭部を切り落とした。
だがまだ油断しない。
モンスターはもとより人より遥かに生命力が高いのに、わざわざ生命力が高いのが特徴と言われていたモンスターだ。首を切り落としても動く可能性はある。
案の定、ペルーダは頭部を切り落としたのに、尻尾で薙ぎ払ってこようとした。
頭部を切り落としたのに、全くどういう原理で動いているのやら。
こちらに向かってくる尻尾も途中で斬り飛ばし、後退する。
尻尾を振った勢いのまま一回転して頭部があった場所をこちらに向けたペルーダの首を突き刺し、甲羅の内部まで剣を貫かせる。
それでようやく、ペルーダの動きが止まる。落ち着いて見てみると、ペルーダがなぜ動けたか判明する。
なんとペルーダは甲羅の方にも意識が存在しているらしい。
とても分かりにくいが甲羅の方にもこちらを睨んでいる目がついていた。頭を斬り飛ばしても動けていたわけだ。
つまり、ペルーダはまだ生きているという事か。
「そこまででいいぞ、メリル。あとは俺がやる」
そういってアスタは背中からカラドボルグを取り出し、甲羅に叩きつけた。
魔剣は雷鳴を響かせながら甲羅を焼き、絶命させる。黒焦げになった甲羅を見てみると、半分以上の深さまで剣が刺さっていた。
魔剣の性能もあるだろうが、やはりアスタのパワーは末恐ろしいな。身体能力が高い獣人の中でも抜きんでている。
機甲とも正面から戦えそうだ。
「なあ、メリル。今転がっているペルーダはどれくらいのランクのモンスターだと思う?」
なんでいきなりそんな事を?
「あーDランクとか?いや甲羅があるし、火が吹けるらしいしCランクかな」
「違うな、ペルーダはBランクモンスターだ」
Bランクか。
ベテランの冒険者パーティが相手にするぐらいだな。そもそも冒険者もモンスターと同じくランクで分けられている。Bランクといえば修羅場を潜り抜け、経験を積んだ熟練者と言われている。
あくまで目安なので、必ずしも正しいとは言えない。
コネで自分の実力以上のランクになってしまう者もいるし、戦闘力以外で評価されるケースも多い。つまり、AランクだからってAランク相当の戦闘力があるとは限らないのだ。
まあ、逆にランク相応以上の実力があるものも稀にいるが。そういえば、<記憶>の小説ではこのランク相応以上の実力を発揮してありえない速度で成り上がっていくパターンが多かったな。
ちなみに<機甲>を顕現できると、最低でも戦闘力はBランクだ。だからこそ顕現できれば勝ち組だし、総合的にスペックの劣っている純人族が人族の中で最強なのはこの理由だ。
「さっき説明した通り、ペルーダはBランクでも防御力と生命力が高いモンスターだ。それを一撃で頭部を斬り落としたお前は異常だ」
「頭斬り落とすぐらいアスタさんも余裕だろ?」
そもそも甲羅を剣で斬っていたし。
「俺はAランク冒険者で、武器は魔剣だ。でも、お前は違う。15歳ぐらいの少年がこのランクのモンスターを相手どれること自体おかしい」
「僕だって武器はいいもの使っているよ?」
腰から剣を抜いて、アスタに見せる。
「…確かにいい剣の様だな。それでもお前はただものじゃないと俺は思っている」
「かなり訓練したしね。これなら合格だろう?」
「そうだな、お前なら足手纏いにはならないだろう」
合格していなかったらどうなっていたのだろう?街まで帰されたのだろうか。
「早速敬語が抜けているぞ。戦闘後だからか?」
「あっ…もう練習とかどうでもいい気がしてきた」
「そっちの方が話しやすいな」
「じゃあこのままでいいや」
「アスタさんはいつも街の外でモンスターを駆除しているの?」
「ああ、討伐したモンスターの素材を売って稼いでいるよ」
「依頼を受けたりはしないの?」
「そうだな気まぐれで依頼などは受けるぞ。でも、俺は護衛とか貴族の道楽は受けん」
貴族の道楽とはあの幻のモンスターを見てみたいから捕まえてこいとか、あの伝説の素材が必要だから見つけてこいとかだ。
あとは…今回の様なパターンも「貴族の道楽」扱いされる部類だろう。
貴族の依頼は基本的に金払いがいいので、無茶ぶりでさえなければ人気の依頼のはずだ。
「貴族の依頼を受けないって事?」
「いや、そうじゃねぇ。俺は力無い人々を守れるような冒険者になりたいんだ」
ほう、それは立派な願望をお持ちで。英雄願望でもあるのか?興味はないので話題を変える。
「これまでアスタさんが討伐したモンスターで一番やばかったのは何だい?」
「そりゃあ、間違いなく最近出現したドラゴンだ。あの件で俺はAランク冒険者に認められたんだよなぁ」
「それはすごい。ドラゴンなんて楽な戦いじゃなかっただろ?」
「ああ、今までで一番の修羅場だったよ」
ドラゴンか…いつか戦ってみたいものだ。
しかし、ドラゴンか。
なんか引っかかる様な…。ああ、最近食卓にドラゴンが出ていたな。
父の好物、ドラゴンのシチューとして。あのドラゴンはもしかしてアスタが討伐した個体かもしれない。
「ドラゴンの素材は高く売れたんじゃない?」
「ああ、ギルドマスターがどこかの大貴族が半分以上の素材と全ての肉を買い取っていったって言っていったな。おかげで懐が潤ったぜ」
たぶんシュティーア家だな。思ってもみなかったアスタとの縁が感じられて、僕は少し親しみを持った。
倒したペルーダを解体していき、魔石を取り出す。ペルーダの魔石は赤と緑が混ざり合ったような色をしていた。
二つの色はまるでペルーダが二つの意識を持っていたことを表す様で、面白かった。中で魔力がまだ渦巻いていて、まるで模様の変わる宝石の様だ。
魔石とはモンスターの心臓の様なもので、濃密な魔力を持っている。モンスターの素材の中でも高く買い取りされていて、様々の用途がある。
しかし、こうやって鑑賞するのも中々良い用途ではないか。そう思えるぐらいには美しかった。
「なんだ魔石なんかじっと見ていて」
「中で渦巻いている魔力を視ているのさ」
「…そうか。それにしてもよく表情も変えずに解体できるな」
貴族に限らず、普通の子供は生き物の死体の解体なんてできないだろう。内蔵など見るだけで生理的嫌悪が湧き上がってくるはずだ。
「まあ、解体している所を眺めていることはよくあったから」
訓練と称して人が殺されている場面を見せられた事もある。
父の方針として、世界を旅するにはこれぐらいの耐性を付けておかなければならないとの事だが、10歳にも満たない子供に見せるものでは無いと思う。
「アスタさんは魔石がきれいだと思わないの?」
「魔石は見慣れているからな。宝石の方がきれいじゃないか?」
そうだろうか?宝石は確かにきれいだが、魔石は絶えずに模様が変わるのだ。こちらの方が見飽きないと思う。
いや、普通の人は魔力なんて見えないからただの色のついた石にしか見えないのか。たしかにそれだったら宝石の方がきれいに感じるだろうな。
解体し終えたペルーダを魔法袋に詰め終え、近くにある川で休憩する。
「メリルこの川がどこにつながっているか分かるか?」
「えー、この辺りだとディータニアン湖か?」
「正解。あの湖の魚は格別なんだ」
「そう聞くとぜひとも行ってみたいものだね」
「ああ、今度――」
「きゃああぁぁぁぁ!」
突如、空気を切り裂くような女性の悲鳴が上がる。
その声を聴いてアスタはすぐに立ち上がった。
あれは間違いなく人の悲鳴だ。襲っているのはモンスターか、盗賊か。
「すぐに行く、いや……」
なんだ、歯切れが悪いな。
こっちを見ている視線に一応は依頼者の安全を気にしていることを理解する。
「気にしなくてもいいよ。並みのモンスターや盗賊程度、どうって事はない。」
「…分かった。悲鳴は西の方角からだな、行くぞ!」
二人で悲鳴がする方へ走っていく。
アスタは冒険者だけあってかなりスタミナがあるようだ。足の速さには自信があったので、アスタを置いて行ってしまうのではないかと心配だったが、杞憂だったようだ。
向かっている間に思う。
相手は盗賊だろうか、モンスターだろうか。
どちらにせよ、討伐しなくてはならない。
この付近はまだ街の近くで、薬草などを摘みに来る一般人もいるのだから──とでもアスタは考えているのだろうな、と。




