機甲技
待たせたな!( ・`д・´)
「ではいくぞ!」
その言葉と同時にラータウロの握っている大剣に重々しい魔力が集まる。ラータウロの放つ雰囲気がさらに強くなり、プレッシャーも大きくなった。
ラータウロが大剣を振り上げる。
「機甲技──」
来るか!
「<ブレイクスマイト>!!」
技を叫ぶ同時にラータウロは4人の騎士付近の地面に大剣を叩きつける。空間を軋ませるような音を放ちながら爆発する衝撃波に4体の機甲は吹っ飛ばされた。
4人は地面に叩きつけられると限界を迎えたようで、顕現が解除されて地面に転がる。 先ほどの地面を陥没させた一撃も凄まじいものだったが、今回はその比じゃない。修練所の中心で放ったのに、奥の壁にまで罅が入っている。
衝撃が壁まで届いた上に、破壊するのに十分な威力を誇っていたという事だ。
僕の記憶が正しければ、<ブレイクスマイト>は誰にでも習得できる機甲技の中でも初歩な部類に入るはずだ。接近する相手に牽制したり、雑魚モンスターに囲まれたときにまとめて吹っ飛ばす技。
それが、この威力。機甲が強ければ、初歩的な技でもここまですさまじいものになるというのか。
素晴らしい。
しばらく放心していると、父が四人の騎士を引き連れ、こちらにやってくる。
「どうだ、メリル?これが父の実力だ」
大人げない&本気出してないだろとは流石に言えないので、父の問いに返す。
「本で見たよりも迫力がありました。父の背はまだまだ遠いという事がわかりましたよ」
「うむ、そうだろう。父の背中は簡単に飛び越せると思わないことだ」
「最後の機甲技も素晴らしいものでした。そういえば吹っ飛ばされた4人は大丈夫なのですか?」
「もちろんだ!私の騎士団では軟な鍛え方をしていないからな。そうだろう、お前達?」
4人を代表するようにフルレイダの機甲使い、ヌエダが体を引きずるように前に出て答える。
「もちろんです。ご指導ありがとうございました!」
後ろの3人も息ばっちり合わせていたので、改めて彼らが規律を重んじる騎士団所属なんだなとか場違いな事を思った。……いや、体育会系かと言った方が正しいかな。
おっとそういえば聞きたいことがあるんだった。
「そういえば、父上。試合中にこちらに注目していたようですが、何かあったのですか?」
「あぁ、その事か」
父は目を細める。
「メリル、お前に当てはないのか?試合中にも関わらず全員お前に注目した理由が」
あれはやはり僕を見ていたのか。しかし、そういわれても当てはない。こちらとしてもいきなり注目されたのでびっくりしている。
「ヌエダ達はなんでこっち向いたの?」
分からない事は人に聞いてみることに限るな。こういう時、父は大体わかりやすい答えをくれないし。
「それは突然恐ろしいものに睨まれたような感じがしたからです。まるで肉食獣が獲物を見定めているようでした」
あの周辺にいたのは僕だけだが、まさか僕がその恐ろしいものとやらだろうか。納得していない表情をしていると、父が口を開く。
「彼らの言うとおりだ、メリル。私もその異様な雰囲気を感じてお前の方を見たのだ」
「しかし、僕はまだ機甲の顕現もできないような少年ですよ。異様な雰囲気など出ません」
「異様な雰囲気は確かにお前から漏れ出ていたものだ。私の予想ではお前の中の機甲が目覚めかけているのだろう」
「機甲が……」
もしそうだとすれば飛び上がるほどうれしい。少なくとも自分は機甲が顕現できる事が確定するのだから。
「お前の機甲は尋常じゃないことがわかる。顕現もさせていないのにあれ程の存在感を放つとは、全くお前の才能は末恐ろしいものだよ」
これは未来が明るいのではないだろうか。
早急に自分の機甲がどんな方向にするか考えねば。少なくとも望んだタイプにはなるらしいのだから。
「父上は機甲を顕現させるとき、どんな風に望みました?」
これには4人の騎士たちも興味あるようで、前のめりに聞いている。
「私の時は…そうだな。どんな敵でも打ち倒せる攻撃力と仲間を守れる頑強さを望んだぞ」
攻撃と防御か。
どっしりと構えて敵を粉砕するラータウロは確かに父の望んだとおりの機甲だな。
自分はどんなものがいいのだろう。欲張ると、バランス型になる。攻撃も防御も素早さも捨てがたいものだ。
まあ、まだ時間はある。
じっくりと悩める時間が。
「父上、今日はとても有意義な時間でした」
「おお、そう言って貰えるとこの機会を設けた甲斐があったな」
「騎士たちも、この二日間素晴らしいものを見せてもらった。感謝する」
と礼を述べる。これは心から思う。彼らから学んだことは多い。
「うむ、それでは終わりにするか。メリル、先に帰っていなさい」
「はい、父上」
父は部下とまだ話すことがあるようだ。反省会かもしれないし、何か他の事かもしれない。
それに興味はあるけれど、帰れと言われた以上それらを聞くわけにはいかないだろう。
今の自分は機甲の事を勉強し、ますます外への関心が高まった。そろそろ屋敷の外に出て見分を深めるのもいいかもしれない。
この数日の予定を頭の中で確認し、自由な時間を見つける。その日は街に出て、歩き回ってみよう。そうだな、例えば冒険者から直接話を聞くのもいいかもしれない。
そんな事を考えながら、僕は屋敷の方へ帰っていくのだった。
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