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voice  作者: 立花葵
府中
1/5

府中の街

新宿から特急で約30分。着いた駅は府中。時間帯もあり降りる人がなかなか多い中、彼らもまた降り立ったのだった。


?「ふわあ〜。よく寝た。新宿から長いなあほんとに毎回毎回」


シロ〖 たかが30分程度だよ、春。〗


?「シロの言う通り、たかが30分。まあでも、毎回となるとさすがに文句のひとつも言いたくなるよなあ」


ロク〖 雪まで文句言って〜。支部長たちに睨まれたらまたらお金減っちゃうんだからね〗


春「大丈夫大丈夫、なんとかなるって。お前ら駅出て人いなくなったら飛べよな」


雪「そうだぞ、荷物に加えお前らまでカゴに入れて持って歩かなきゃいけないんだからな、大変なんだぞ」


シロ・ロク〖 僕達を貨物扱いにするほうがどうかしてる〗


春・雪「はいはい」


駅から少し離れたところで、カゴに入れていた猫がでてきた。


春「見た目は猫のまんまなのになあ・・・」


ぼそっと言った次の瞬間、背中から大鷲のような翼が生えていた。


シロ〖 翼があったって猫ですよーっだ 〗


舌を出しながら、春に言う。


ロクは身震いしながら、シロと同じく翼を生やしながら、宙を舞う。


ロク〖 カゴの中は狭くて狭くて。やっと自由だよ〗


雪「ほら、2匹とも並んで。周りの人に見えなくするから」


そう言うと白い手袋を2匹に向けた。


雪「イリュージョニスタ」


2匹は白い光に包まれた。


シロ〖 電車でもイリュージョニスタしてくれれば自由だったのに〗


ロク〖 そうだよ、どうせ周りには見えないんだから〗


春「そう言ったって、お前ら自由にしてたらどこ行くかわかんないじゃん。いなくなって探すのが大変なんだよ」


雪「そうだよ、探索するのは目に見えてたからね」


シロ・ロク〖 ちぇっ。けちー!〗


そんなやり取りをしながら、地図で場所を探す春。一丁目、二丁目とどんどんすぎていく。


雪「どう春、そろそろかい?」


春「んー、そうだねえー・・・あ、ここだ」


春が指さす先には、なんの変哲もない道路だった。


シロ〖 探知するね〗


シロは道路へと降り、地面を触ること3分。


シロ〖 うん、ここみたい。春あたりだよ〗


春「よし、この中探しに行くか」


春は地面に手を当て目を閉じた。


春「グランドアンバー」


そう唱えると、地面に人一人分通れる穴ができた。見た目には分からないほどの大きさだが、それも春の魔術のおかげであった。


春「雪もシロもロクもこっちきて。エレベーターで下降りるよ。」


全員が集まったところで、春と雪は片手を合わせた。


春・雪「「シンクロウェーブ」」


たちまち2人と2匹の周りにはゼリー状の四角い箱ができあがっており、さっき穴を開けた上に浮かんでいた。


春・雪「「ダウン。最下層まで」」


チンという音とともに下へ下へとすすむ。


シロ〖 いっつも思うんだけどさ、すごいよね、このエレベーター。美味しそう〗


春「お前なあ、美味そうって感想はねえだろ。間違っても出るなよ。正確には触るな、か。今快適に過ごせてるここの空間一気に壊れて俺らは即死だからな」


シロ〖 わ、わかってるもん!!〗


雪「これ使えば最下層まですぐだから、辛抱しててね、シロ」


10分たった頃だった。チンと音とともにゼリー状のエレベーターはなくなった。


春「お、ついたみたいだな。どっちだ?ウォリス」


春が唱えると、足跡が地面に浮かび上がった。どうやら右らしい。


シロ〖なにこれきれい〜! 〗


雪「ただの足跡だよ、春の術で蛍光に光ってるだけだよ」


2人と2匹はその足跡を辿りながら、ひたすら歩いていく。2匹はじゃれ合いながら、春と雪は鼻歌を歌いながら。まさに遠足気分。そんな時ー。


??「旅人さんかい、ここら辺で流行ってるおやつだよ、食べていきなさいな」


春「おっちゃん悪いね〜、俺ら探しもんしてる途中だし、知らない人からは貰うなって言われてるから」


雪「僕も遠慮しておきます。流行病にかかりたくはないので」


そういうと、みすぼらし格好のおじさんは春と雪と2匹を見つめる。


シロ〖 ねえ、春。あの人見えてるんじゃないの、目があってる気がする!怖い!〗


ロク〖 わたしもそんな気がするんだけど、大丈夫かな?見えてないよね?〗


春「一般人には見えねえよ。まず見えてたら驚くと思うけど、そんな表情一切してないからなあ」


??「・・・そうかいそうかい、わかったよ。またの機会にね」


そう言うと、逆方向を歩いていった。口元に笑みを浮かべながら。


雪「・・・なんか、薄気味悪い人だったね。」


春「おとぎ話に出てくる悪役っぽかったけど、敵意がまったく感じられなかったから放っておいて大丈夫だよ」


足を進めること30分、ようやくたどり着いたのがー。


春「テンペスト古書堂!見つけた!これで古書堂10箇所目だよ」


雪「さっさと該当の本探さないとね」


春「よーし、さっさと終わらせて美味いもんくいにいこーぜ。ごめんくださーい!」


テンペスト古書堂のドアを開けるとそこには柔和な表情の老女がいた。


老女「いらっしゃい。来ると支部から連絡が来てたよ。探してる本はこれでいいかい?」


差し出された本の名は、【voice発生原理】。


春「そうそうこれこれ!ありがとうございます」


雪「voice関連の本は古書堂にしかないからね、なかなか見つけ出すの大変でした。おいくらでしょう?」


老女「テンペスト古書堂は貸すのみですので、どうぞお持ちになってください」


雪「あなたのお名前は・・・」


春菜「わたくしは、はるなと申します。」


春菜の名前を聞くと、はっとする雪。


シロ〖 雪どうしたのー?〗


雪「春菜さんは・・・その・・・voiceの被災者ですよね」


春「そうなのか?!なあ、教えてくれよ、あの日のこと」


春菜は、両手を揉みながら上を見ては考え、下を向いては考え何かをこらえていた。そうすること10分ー。


春菜「・・・わかりました。お若い2人と2匹ちゃん。あの日のことをお話しましょう。覚えてるだけのこと全てを。さあ、奥へおいで。」


そう言うと春菜は、店内の奥まった部屋へと案内してくれた。

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