表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/13

オニオングラタンスープ

静かな部屋の中でザクザクとパイを砕く音が響く。

琥珀色のスープが顔をのぞかせる。

栄治は熱いのでゆっくりと掬って飲んだ。


・・・・・・あなたはいつも私に無関心なのよ。

・・・・・・あなたが好きなのはあなただけ。

・・・・・・さびしくないの?

・・・・・・もういいわ。


オニオンスープが大好きで、シャブリとチーズが大好きだったカホはいつも頑張っていた。

そんな頑張っているカホを見るのが栄治は好きだったのだが、

いつもカホは栄治に聞いてきた。

『さみしくないの?』


そう聞かれて、栄治はいつも同じ調子で答えていた


『さみしさも、孤独も僕の一部だよ。』


栄治が今、思い出すのは、元気いっぱいで頑張るカホではなく、泣き疲れて表情のなくなったカホの顔。


記憶ははっきりと冷たい味がした。

これが孤独の味だと、栄治は熱いオニオングラタンスープを流し込んだ。



今朝、ひさしぶりにカホからメールが届いた。

彼氏ができたのでチョコレートケーキとオニオングラタンスープのレシピを教えろ。

と、相変わらず上から目線の手紙だった。


カホがいなくなってからオニオングラタンスープを作っていなかったので、久しぶりに作ることにした。

薄切りにした玉ねぎをバターでゆっくりと飴色になるまで炒め、さらに小麦粉を入れて炒める。時間がかかるがこれをカホに任せて、小麦粉入れて真っ黒に焦がしたときのことを思い出していた。

飴色になった玉ねぎに市販の缶コンソメスープを入れてのばし、塩コショウで味付けする。アクが出るので丁寧にとっていくと綺麗な琥珀色のスープができる。

小さなカップにスープを注いで、細切りにしたグリュイエールチーズをたっぷりかけて、冷凍のパイシートを半解凍して、卵黄を塗ってぴったりかぶせる。

それをオーブンで焦げ目がつくくらいに焼いたら出来上がり。


焼いている間にチキンソテーとサラダを作って食べようとすると、亮平から電話があった。

いま飲んでるから来いということだった。

丁重にお断りすると、今日のメニューはなんだよ。とお決まりの質問が来た。


「オニオングラタンスープとチキンソテーだよ。」

と言うと、長い付き合いの亮平はさも分かった風に

「ほぉ、お前でも感傷にひたれるんだな。」

と素直に感心したように言ってくるので、栄治も思わず

「まぁな。」

と笑ってしまった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ