フリー素材 「TRPGとは? および用語解説」 V1.15
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●TRPGとは
TRPGとは、テーブルトークロールプレイングゲームの略称です。
MMORPGのようなことを人力で行うゲームだと考えていただいて差し支えありません。MMORPGがなかった頃は「ルールのあるごっこ遊び」と表現されていました。コンピューターを介するMMORPGと異なる点として、より自由度が高いというメリットがある反面、あまり高度な計算と処理は難しく、説明力と想像力が必要になるというデメリットがあります。
ちなみに、和製英語であるため海外では通用しない呼び名で、海外では単にRPGと呼ばれます。
・メリット
TRPGはGM(ゲームマスター。名称はシステムによって異なります。詳しくは後述)と呼ばれる進行役がシナリオを作り、処理を裁定をします。その根拠になるものとしてルールブック(後述)があります。
コンピューターではなく人間が判定をするメリットとして、柔軟さが挙げられます。例えばNPC(後述)から情報を聞き出す場合、「はい/いいえ」だとか3~4択の大雑把な選択肢ではなく、色々なアプローチに対してGMが適切と思われる反応を返すことができます(「PC(後述)1はNPCに食事をおごってくれるのか。だったらNPCの口を軽くしてあげよう」など)。
自由度の高さ故、展開が予想外の方向へ行くことがままあるため、シナリオはデータ類と大まかな流れを用意しておく程度のことが多いのが、通常の脚本と異なるところです。
・デメリット
一方、基本的に計算は暗算で行うため、複雑な計算はシステム上使われません。多くの場合、簡単な計算で処理できるものに限られます(キャラクターデータや装備品データ作成時に電卓を使って複雑な計算をするシステムもあるにはあります)。
もう一つのデメリットとして、ほとんどの描写を口頭で行うため、説明力と想像力が全参加者に求められます。特に重要なのは前者です。受け手のイメージの齟齬が大きくなるのは、あまり良い説明とは言えません。簡単な図や絵を用いることで、齟齬をかなり軽減することができます。
●用語集
・ゲームマスター
よくGMと略されます。このゲームマスターという名称を用いるゲームが多いですが、異なる名称を使うゲームも少なくありません。
前述の通りシナリオを考え、裁定を仕切る存在です。GMの決定はゴールデン・ルールと呼ばれ全てに勝りますが、同時にGMは独裁者ではなく、ゲームを公正なものにするために可能な限りルールに則った裁定をしなければいけません。逆に、皆を楽しませるためにあえてルールを破る決断が求められることもあります。
・マスタリング
GMが行う、プレイ中の諸作業全般を指す言葉です。
・サブマスター
副ゲームマスターのことです。サブマスとよく略されます。必ずしも必要ではありませんが、データの管理などのマスタリングを一部任せることで、格段にGMの負担が減ります。
・プレイヤー
意味するところはコンピューターRPGと変わりません。よくPLと略されます。
・プレイヤーキャラクター
意味するところはコンピューターRPGと変わりません。よくPCと略されます。基本的に1PLにつき1PCです。
・ノンプレイヤーキャラクター
意味するところはコンピューターRPGと変わりません。コンピューターの代わりにGMが操作します。NPCとよく略されます。
・キャラクターシート
キャラシ、あるいはキャラシーとよく略されます。PCの能力値などが書かれた紙です。コンピューターRPGでいえばステータス画面のようなものです。
・サンプルキャラクター
ルールブックの序盤に載っていることが多い、文字通りの見本キャラクターです。アーキタイプと称しているシステムもあります。これを使えば、キャラ作成ルールを読み込まなくてもすぐにプレイに移行できるというメリットがあります。
一方で、ガチガチの強キャラクターに組み上げられていることはあまりないため、プレイに慣れてくると不満が生じる可能性があります。
・プレロールドキャラクター
サンプルキャラクターと似て異なる存在で、GMが設定面まで事前に決めてあるキャラです。
・ロールプレイ
日本語にすると「役割演技」という意味になります。要はキャラクターになりきって芝居をすることです。RPとよく略されます。
・パーティー
意味するところはコンピューターRPGと変わりません。PTとよく略されます。
・コーラー
PTの行動をまとめ、GMに伝えるPLです。まとめ役ではありますが、リーダーとはまた違います。コーラーがルールで設定されているシステムは多くないですが、コーラーがいるとGMの負担がかなり軽くなります。
・ダイス
サイコロを意味する英語です。サイコロというとおなじみの正六面体のものを想像する方が多いと思いますが、10面体や20面体などのものもよく使われます。こうした変わり種のダイスは、テーブルゲーム専門店やネット通販などで入手できます。
・mDn
mとnには数字が入ります。mの個数分、nの面数のダイスを振ります(例えば、2D6なら六面体ダイスを2個振ります)。1Dnの場合は1が省略されることがあります。多くの場合は出目を合算しますが、D66 やD100やD%と書かれている場合は、色違いのD6(D10)の片方を10の位、もう片方を1の位として振ります。D100の場合、出目00を0とするか100とするかはシステムによって異なります。一種類のダイスしか使わないシステムでは後ろの数字を省略することがあります(六面体ダイスしか使わないシステムでは3Dなど)。
・ダメージボーナス
そのまま、能力値やスキルによって与ダメージに加算される数値です。よくDBと略されます。
・トランプ
おなじみのカードです。ダイスの代わりにこれを使うシステムがたまに存在します。
・セッション
ゲームの1プレイの意味です。1シナリオの解決に長時間を要する場合、日にちを分け複数回のセッションをする場合もあります。
・オフラインセッション
参加者一同が同じ場所に同席してプレイする旧来のスタイルです。メリットとしては、WEBカメラがなくても仕草を表現できることと、進行が早いことが挙げられます。また、ルールブックの回し読みができるため、用意するルールブックが少なくて済みます(本当は人数分揃えるべきなのですが)。デメリットは、場所を取る、慣れないとRPが恥ずかしい、騒音の発生源となるなどです。オフセと略す事が多いです。
・オンラインセッション
多くの場合、専用ツールとチャットを用いてプレイします。メリットとしては、場所を選ばない、遠方の参加者とプレイできる、ログが残るので過去の話を辿りやすい、楽な格好でプレイできる、騒音が発生しにくいなどです。デメリットとしては、参加者全員がルールブックを持っていなければならない、ダレやすい、チャットを使うため進行が遅い、知らないうちに回線が落ちてプレイに支障をきたすことがあるなどです。オンセと略す事が多いです。
・ボイスセッション
オンセをスカイプなどの通話ツールで行うものと考えてください。オフセの速度を維持しつつオンセのように遠方の仲間と遊ぶことができます。ボイセと略す事が多いです。
・テキストセッション
ボイスセッションの逆で、チャットなど文字を使うオンラインセッションをこう呼びます。テキセと略すことが多いです。
・ルールブック
ゲームで行う処理のやり方やデータ類、世界観が載っている本です。よくルルブと略されます。GM用のデータ部分だけ分けたり、PCのレベル帯によって分冊構造になっていることがあります。有料の市販品から無料の自主制作作品まで幅広くあります。有料のものはテーブルゲーム専門店やネット通販、同人誌即売会などで入手できます。文庫タイプや新書タイプのものは通常の書店のライトノベル書架で入手できる可能性があります。無料のものは基本的にネット公開が多いです。
・サプリメント
追加ルール&データ集、さらなる世界観情報などです。よくサプリと略されます。ルルブとの違いは、サプリには基本ルールが載っていないため、これだけでは遊ぶことができないという点が挙げられます。
また、発売されているサプリをすべて利用しなくてはいけないということはなく、一部のサプリのみを扱うといったことも可能です。基本的に、PTメンバー内で最も所持者の少ない状態に合わせると良いでしょう。
・ゲームブック
GMなしでプレイできるように作られているシナリオです。ランダムに配置されたシナリオ(専門用語でパラグラフと呼びます)を選択肢や指示に従って読み進めることでプレイします。戦闘などの処理はルールブックに従って解決します。最低一人でもプレイできるのが利点ですが、その分自由度が犠牲になっています。
・マスタースクリーン
テーブルの上に置く衝立です。シナリオをPLから見えなくすることで、ネタバレを防ぐ目的があります。高度なテクニックとしては、ダイスの出目をPLから隠す目的でも使われます(後述)。また、判定の早見表やデータ類が印刷されている場合もあり、マスタリングの助けになります。硬めのバインダーなどでも代用できます。
・オープンダイス
GMが、ダイスの出目をマスタースクリーンなどで隠さず、そのままPLに見せることです。ゲームの公正さが保証されますが、一方で手加減が難しくなり、「序盤の雑魚戦でPT全滅」などのハプニングが起こりやすくなります。ただし、オープンダイス派のGMであっても、敵が何人アジトに潜んでいるかなどのPLに知られると困る決定は、PLに見えないように振る必要があります。
・クローズドダイス
オープンダイスの逆で、GMがPLに見えないようにダイスを振るスタイルです。一見公正さを欠きますが、GMの目的はPLを楽しませることであるため、予定外の全滅を防ぐなどの目的で行われるものです。
・事故
運悪く極端な大ダメージを受けた結果PCが死亡した場合、よく「事故」と呼ばれます。
・コンベンション
TRPGプレイヤーがお金を出し合ってある程度大きな施設を借り、オフセに専念するイベント・定例会をこう呼びます。コンベと略されます。オンセ環境が生まれるまでは、見知らぬ人間同士がプレイできる数少ない場でした。
・野良
参加募集掲示板などで、見知らぬ人間同士で集まってPTを組み遊ぶことです。気心知れた仲間ではないので対人距離感などに気を使う必要がありますが、新たな出会いの場となる可能性を秘めています。
・リプレイ
プレイ記録をト書き台本のように書き起こしたものです。ゲーム内容をわかりやすく説明する手段として、黎明期より多用されてきました。中には、マンガ形式や動画形式のリプレイというのもあります。リプレイと称するものの、実際にはプレイしていないものもたまにあります。
・シナリオ
文字通り脚本ですが、TRPGは基本的にアドリブ(即興劇)で物語が進んでいくため、あまり細かく作っても意味がないことが多いです。ただし、商品として売られている公式シナリオもあり、こちらは通常GMが用意するものより細かく設定・解説がなされています。
・単発
一つのシナリオでプレイが終わるタイプのプレイです。
・キャンペーン
連続シナリオを、基本的に同一PTで行うプレイです。
・ダンジョンアタック
文字通りダンジョンを探検するシナリオです。ダンジョンハックと呼ばれることもあります。コンピューターRPGに近いプレイ感なので、初心者におすすめです。
・ハック&スラッシュ
戦闘と財宝収集を目的としたシナリオです。ハッスラと略されることがあります。上記ダンジョンアタックとの親和性が高いです。
・ウィルダネスアドベンチャー
別名、オープンフィールドアドベンチャー。野外を舞台としたシナリオをこう呼びます。
・シティアドベンチャー
街や村などで情報収集と調査を主に行うシナリオです。自由度が高いため、特にベテランが好みます。
●スラング
以下は、用語と呼ぶには少々マイナーなスラングです。TRPGコミュニティで使われる俗語が気になる方向けのもので、はっきり言って覚える必要はないです。説明も少々砕けた文章になりますことをご了承ください。「鳥取」と「煮え」と「回る」と「卓」、あとはぎりぎり「和マンチ」以外は侮蔑的なニュアンスが含まれるので、むしろ覚えないほうが良いかも知れません。
・鳥取
所属するゲームグループのことです。あるプレイヤーが自分のローカル環境の主語を大きくして「鳥取では~」と呼称したのが始まりと言われています。
・卓
セッションのスラングです。前述「鳥取」を指す場合もあります。
・マンチキン
マンチと略されることが多いです。自己中心的で自分さえ目立てればOKという協調性のない迷惑プレイヤーをこう呼びます。下記和マンチとの区別のため、洋マンチと呼ばれることがあります。
・和マンチ
マンチの名を冠するものの、その実態はルール至上主義者です。公式ルールを遵守するので洋マンチほど迷惑ではないですが、悪い方向に出るとルールを踏み外すことを認めない頑固なプレイヤーになります。また、ルールの隙を突いて裏技的なルール運用を行い、プレイを崩壊させることがあります。
・データマンチ
データッキーとも呼ばれます。ルール上での最強キャラを作ることに喜びを見出すプレイヤーです。一見和マンチ寄りですが、根底の動機が「俺TUEEE!」であるため、言動は洋マンチ寄りになることが多いです。
・ルーニー
お笑い至上主義のプレイヤーです。シリアスが要求されている場面でもボケようとする悪癖持ちが多いです。
・地蔵
RPに慣れていないなどの理由で、口数が極端に少ないプレイヤーをこう呼びます。
・エターナルチャンピオン
戦士ばかりやりたがるプレイヤーの俗称です。戦士キャラは主人公的ポジションであるという誤ったイメージから戦士を選ぶため(実際には全PCが主人公です)、洋マンチ予備軍となりがちです。だからといって魔導師ばかりやったり盗賊ばかりやったりするのが良いという訳でもありません。
・吟遊詩人
吟遊GMとも呼ばれます。NPC大事さのあまり、PCよりもNPCを活躍させてしまうGMをこう呼びます。
・煮え
やたら熱血だったり、ラブラブ度高めなど、見る方もやる方もこっ恥ずかしいRPをこう呼びます(ゲームに入り込んでいる証拠なので、悪いことではないのですが)。
・口プロレス
「ろぷろれす」ではなく、「くちぷろれす」です。プレイに熱が入ってしまうあまり、半ば口論で自分の主張を認めさせようとする行為です。
・リアルリアリティ
ファンタジー世界が舞台だろうと、未来のSF世界が舞台だろうと、「リアルで考えたら○○だから~」と現実世界の基準で物事を考えてしまう発想です。大概、上記口プロレスへと発展していきます。
・困ったちゃん
上記に挙げたような問題行動のほか、時間にルーズだったりプレイに集中しないなど、困ったPL、GMをこう呼びます。文字通りの意味です。困と略されることがあります。サークル単位だと困サーと呼ばれます。
・地雷
上記困ったちゃんに野良で遭遇した場合こう呼ばれることがあります。
・ムギャオー
困ったちゃんの言動をこう呼ぶことがあります。
・回る
クリティカルヒット(通常より強力な攻撃)が発生した場合にこう表現することがあります。由来は、ソード・ワールドRPGというゲームで、クリティカルが起こるたびにダイスを振って威力を加算していく様がまるで回転しているかのようであることから付けられました。転じて、クリティカルヒットが2連続で発生したら「2回転した」などと表現します。由来の関係上、ソード・ワールドRPG以外ではあまり使われないスラングです。