宝探し
「あの、ここは何処ですか?」
「ここは俺の家だよ。そんで君は上の階にいるお兄ちゃんの妹でローズヴァッギーナって名前なんだよ」
「ヴァッギーナ……ですか?」
「うん。まぁ、言いにくいから皆ローズって呼んでるから自己紹介はローズだけで良いかもな。因みに俺はユーサクって名前で上にいるお兄ちゃんがツキヤノって名前なんだけど……もしかしてそれも忘れてる?」
「はい……思い出そうとしても……」
ううう、と泣き崩れそうになるノアリ改めヴァッギーナ……ローズを支える。このまんま面白い情報を与えるってのも手なんだが俺はそこまでゲス野郎じゃない。それならそもそも少女を殴ったりしない。
「本当になにも思い出せないのか? 印象に残ってることとかはないのか……?」
「ごめんなさい……」
本当に知らないのか手を顔を隠し、シクシクと泣き始めるローズを横目に少し考える。これが演技だとしたら腹に剣を突き立てよう。そう考えて次はどんな嘘をねじ込もうか考えていると階段を下りる音が聞こえ、ツキヤノが顔を出した。その顔は軽蔑しているような表情だった。
「そうかそうか、お前はーー」
「力で負けた負け犬な存在がなにをほざいてるんだか……」
「なっ!」
顔を真っ赤に染めているーー何時もの変態チックな服に着替えているため表情は分からないがーーと感じ取っている俺は何かを悟ったような気分になった。これが俗に言う賢者タイムと言うやつか……
「んで、そこにいる顔に布を巻いている“彼”が君のお兄ちゃんだ」
「ちょ、なにを吹き込んでんだよ!」
「ち、違うんですか……?」
既に泣いていた為、目が腫れていたのもあってか渋々ツキヤノは頷いた。まぁ、彼氏彼女で言わないだけ優しいと思えよな? 口に出しては絶対言わないけど。確実にもぎ取られる、それか収穫されてしまう。結果的にはどっちも変わらないが。
昼飯を食べ終わった俺達は食器を洗っていた。主に俺が食器を洗い、布で水気を拭き取り戸棚に収納していった。……あれ?
ローズと一緒にバラエティー番組を見ているツキヤノに耳打ちをし、軽く準備をする。愛用のリュックはおいてけぼりだし、基本的な物はあの中に入っている。予備として買っておいた深緑のリュックを二階の部屋の奥の方から引っ張りだし、冷蔵庫で冷やしておいた瓶タイプの回復薬を三つほど入れる。腰のポーチには二つ入れる。タオル、食料品をテキパキと詰め込む作業を慣れた手付きでやる俺に惚れたのかローズが隣にいるツキヤノに話し掛けていた。おい、準備はないとはいえもうちょっとあるだろ? ほら……ね? なんかあるだろ?
「えっと、ユーサクさんはどこに行くんですか? 結構な大荷物ですし……」
「ん? ああ、俺とユーサクでダンジョーー「ピィィイィイイックニックに行くんだよなっ!?」……そ、そうだった。壇上近くにあるピクニック場に行くんだが留守番できるか?」
記憶を思い出しかねない単語を口ずさみそうになったツキヤノの言葉を遮る。だから襲われて一夜ともに明かすことになるんだよ……昨晩はお楽しみでしたね? 的な感じで言った方が良いんだがここ俺のうちなんだよな……シーツどうすっかな。どうせドパドパだろうし。
既に思考がシーツをクリーニングに出す方に移転してしまったがリュックの準備も終わり、背負った。その時には話は大体終わっている様子だった。変質者と少女の組み合わせってただの事案発生なんだよな……
「ここの部屋の中に宝物を隠してあるから見付けろよ? 制限時間は俺達が帰ってくるまでだからな?」
「うんっ! 宝物は“布面積の少ない女の人が載っている本”だよね!」
「ブッ……まぁ、“この部屋には”ないから大丈夫だけどな」
と、小さく呟いたはずだったのだがツキヤノにはバッチリ聞こえていたらしく「二階も散策オッケー」と指示が出た。いや、だから俺の家……
卑猥ではないっすよね?(´-ω-`)