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剣士ユーサクのダンジョン戦記  作者: 椎木唯
1章 王女様じゃねぇか編
21/24

イメチェン

 気が付けば一ヶ月ほど経った。いや、経ってしまったと言うべきなのだろう。

 泊まり始めた二日目からぐらいに「そう言えばなんでここに居るんですかね? 貴方にはツキヤノさんとの愛の巣……うっ、すいません。考えるだけでも吐き気が……」と、問われたとこがあった。愛の巣云々は無視しといたのだが……なんて答えたんだっけか? まぁ、のらりくらりと過ごしていたら一ヶ月ほど経ったと言うことになる。その間はヒモニート生活をエンジョイしていたのだが最近はミフユの視線がクズを見る目からゴミを見る目に変化しつつあったので店番をしてみることになった。真夜中のコンビニ並みに客が来ないのでただ突っ立っているだけで良さそうなのだがそもそもの問題、コンビニのアルバイトをしたことのない俺が言っても何の説得力もないと言う。

 そんなわけでコネ入社して入った家具店なのだが意外にも始めての来店者は女性だった。

 立地的にガッツリ無法者や筋肉に包まれた男女、鍛え抜かれた人しか入ってなかったのだが意外にも入ってきた人物は華奢な姿だった。Yシャツにチェック柄のミニスカート、ここまでなら女子高生かな? と、思ってしまうのだが絶対領域から覗かせられる領域は鍛えに鍛えぬかれてスラりと、無駄な脂肪が削ぎ落とされた足があった。黒髪にわりと整っている容姿、Yシャツ……まぁ、完全に狙ってきているその服を来ている女性の名前は



ーーツキヤノ。



 おめぇ何とか組合とかそんな感じのアレの規則はどうしたんだよ、反抗期か? と、思ってしまったのだがさっきからチラチラと見てくるのに押し負け、声を掛けることにした。


「どうした? 規則とかあったんじゃないのか? しかもお前がその格好は留年しただけに思えて不名誉だな。いや、お前が高卒なのかは知らんけど」

「もっと、こう第一声は『可愛いぜ!』とかじゃねぇのかよ。しょっぱなで規則とか持ちだんすんじゃねぇよ夢がないな」

「普通はそうなるだろ……何で俺のほうが軽くディスられなくちゃいけないんだよ理不尽すぎるだろ?」

 軽く社交辞令のようなものを交わす。ツキヤノいわく歩き疲れたから座って話をしたいとのことで奥のほうから椅子を引っ張りだし手頃なテーブルに向ける。流石にお茶とかは……あったっけ? カウンターを漁っているうちに高そうな茶葉を見付けたのだがしばかれそうなので素直にすぐ隣の業務用のパックを手に取り、席に戻る。しっかりとポットの熱湯を使ったのだが……埃被っていたけど大丈夫だよね? 水腐ってないよね? 熱消毒って意味あんの? と、思考の渦に巻き込まれそうになってしまった為すぐに考えるのを放棄した。当たっても精々が腹痛止まりだし大丈夫だよな。

 そんなこととは知らずに旨そうにお茶を啜るツキヤノ。そこですかさず一度使ったパックでもう一度お茶を作る辺りユーサクも一般的な庶民なのだ。まぁ、普通は家具を爆買いなんかはしないだろうけど。


「ふぅ、取り敢えず本題に移ると私の所属している場所が何者かに襲撃されてなんやかんやあって倒産した。その結果がこの自由な私服って訳」

「おーう。しょっぱなから良くわかんねぇよ……って、ことは今無職?」

「おう、まぁ、フリーター何だけどな。正直ユーサクが戻ってダンジョン入れるようになんないと一生飲食店の店員で生きていかないといけなくなるんだぜ……あ、いけなくなるんだわ」

「その結果がこの女子高生ってのも笑う話だよな。ちなみにその場所を教えてくれたら永遠といじり尽くすネタができるんだけど」

「それを言われてから言う奴はいないと思うけどな……てか、普通な感じだから想像しているようなニャンニャンとかはやってないぞ?」

「……チッ」

「おい何故舌打ちをした」

 やっと、楽しいことが起きそうな予感がしたのだがそんな予感は予定で終わってしまい、未定になってしまった。例でニャンニャンが出てきたことに違和感を覚え迷推理で探り当てる、と言った技もあるのだが正直めんどいとの考えで一瞬で却下された。


 ミフユは出掛けてからまだ帰ってきていない。

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