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剣士ユーサクのダンジョン戦記  作者: 椎木唯
1章 王女様じゃねぇか編
2/24

運命的な出会い(良い意味での解釈)

 何かがおかしい。そう思うのには余り時間が掛からなかった。


 ユーサクが保有するダンジョンは全31階。五倍の数ずつで中ボスが配置されラスボスヘとつながる。極々一般的な下に降りていくタイプのダンジョンだ。

 唯一他と比べて違うのは人形の生物が多いってところだ。小鬼、大鬼、腐ってるっぽい死体など種類は多数あるがその殆んどが人形なのだ。腐ってるっぽい奴以外は普通に思考し、武器を携え、作戦を練って襲ってくる。

 一番厄介なのが連携プレイなのだが今日ダンジョンに入って一時間ちょい。所々で剣を置き、体を伸ばしながら休み休み進んでいき既に二階層目だ。元々一階層が日本で言うところの千葉県程の大きさなので結構早いと言えるが……この間、一切敵の気配を感じ取れなかった。

 ダンジョンに通じる虚空は町中にも現れる。そのせいで何千、何万と人が死んでいったのだが今は王族の力もあってか現れなくなった。それでも王族が働く前に出現したダンジョンは今でも元気にモンスターを排出してるしそれを駆逐するために日に三度、国の保有する自衛軍がダンジョンの最下層まで攻略する。

 全てのダンジョン内のモンスターが殺された場合、死体だけを残して消える。その間一時だけモンスターがいない状態になるのだが……


「最後に攻略したのは昨日だ。早朝とはいえ1日中発生しないとなると……」


 未だ人類が成し遂げていないダンジョンの完全破壊か?

 一瞬、そう考えてしまったがすぐに顔を振って考えを消す。もし、それが本当ならノーベル賞を幾千個貰っても足りないぐらいだが……考えてみよう。この現象を伝えてみるとしよう。今の現状、確たる証拠はなく、何日いや何週間もかけて調べることになるだろう。その間働き口を失う訳だが……まぁ、それは政府が金を出してくれるだろう。

 だが、問題はその後だ。調べて結果が出た。どのようにすればダンジョンを不能にするのかも分かった。この人類が一歩先に踏み出す切っ掛けをつくったユーサクにノーベル賞を授与しよう! 世界の人々は自分の近くの稼働しているダンジョンが稼働しなくなり、モンスターの恐怖にさらされていた日々とはおさらば。口々にユーサクを称える声が聞こえてくるだろう「ユーサク万歳! 世界の危機を一つ救った勇者よ!」「これで怯えていた日々とはおさらば出来るわ、抱いてっ!」と世界中の人々が言い、気分は良くなるだろう。だが、その後は? 不能になったダンジョンの隣に自分の城を構えている俺はどうなる? ノーベル賞はもう働かなくても良いんだぜ? 的な物ではない、純粋に世界を変える行動を称える賞なのだ。


 結論を言おう。名誉は手に入れるが金は入らない、と。


 人によっては名誉の方が大切だと語るものもいるのは知っている。だが、この男は保身的なのだ。……保身と言って良いか謎だが。

 よって、この事態を一人で、かつ迅速に対応しなくてはならないのだが……未だに二階層にいた。十分早い、そうは言えるが……一日で問題は明るみに出ないだろう。そう念じながら進んでいくと二階層から三階層目の継ぎ目の場所に来ていた。まだ上層部だし、問題は最下層か?


 そう仮定し、継ぎ目を渡る。このダンジョンはご丁寧に下へと続く階段はないのだ。その代わり謎のテレポート的な継ぎ目がある。そっちの方が大変だろうに。

 一瞬意識が飛ぶような感覚になり、地面に足がついてないような錯覚になるがテレポートが済んだのかテレビの砂嵐の状態だった継ぎ目から、ど真ん中に道が見えてきた。やはり、これには慣れないな……そう思いながら左手に持った松明を握り締める。もう片方の手はいつでも剣を抜けるように構える。真剣な表情とは裏腹に内心では


「(出た瞬間襲ってきたりは……ああ、まぁ、想像つくけど……で、でもエリアチェンジで即死攻撃はこないよね? ね? これ、もう帰ってノーベル賞貰った方がよかったんじゃ……)」


 ガクガクのブルブルだった。生まれたての小鹿など屁でもなく、ある意味人間らしさを詰め込んだ形と言えるが……エリアチェンジって言葉が出ている辺り、ゲームと混同している感がある。だが、それを含めてもユーサクと言う名の剣士は強い。

 道が見え、三階層に出る直前気配を感じた。だが、それは普段感じるモンスター故の禍々しさではなく、近いもので例えるなら……人間だろうか? まぁ、人間だった場合不法侵入で私罪が認められているのが唯一の救いだな。家よりもダンジョンに侵入する方が罪が重いって……ま、まぁ世界を変えるた衝撃で出来た資源が発掘できる場所だもんな! しょうがないもんな! 新しい鉱石手に入れたら「ユーサク鉱石」と名付けよう。


 そんな内心とは別にユーサクの行動は早かった。合ってなさすぎて裏表リバーシブルタイプの上着擬人化したんじゃね? と感じてしまうのだが等の本人は明かりの確保のため、手に持っていた松明を地面――と言ったら多少の語弊があるが――に叩き付け、火を消す。代わりに自分の周囲を回る光球を生み出す。ファイブ……いや、魔法と言った方が分かりやすいか? を使用した典型的な例の一つだ。

 一つ息を吸い、二つ息を止め、三つ力を振り絞って……剣を降り下ろす。その瞬間「……ぇ?」と、地味に間抜けな声を発した少女が構えていた剣に当り、金属音をたてながら地面に落ちる。すぐさま無防備になった少女の足を払い、転ばせ何時でも首を切り落とせるように首筋に剣を当てる。すぅー、と血が重力に従い首を伝って地面に落ちる。


「……今の現状をつくったのはお前か?」


 静かな怒りを乗せ、発する。内心では「これで無事解決っ! 警察に付き出してさっさとモンスター狩って換金しないとなぁ」と、考えているのだから人間とは推し測れないものであると再確認できる。まぁ、全てのモンスターがってのは確認してないから分からないが今日一日未満でダンジョンが回復するとは思えないのだが今のユーサクにはそんな考えはなかった。

 絶体絶命な状態の少女(ユーサク原因)――金髪に黄金のローブを羽織ってる時点で只者ではないが例え、王族であろうと無許可でダンジョンには入っていけないのだ。そんな事実がユーサクを更に突き動かす。


「はっ、黙りか……なら」


 悪魔のような含み笑いを見せ、首に当てていた剣をゆっくりと胸元に移動させる。この行動が意味することは……


「(このままだと命の前に女として大事なモンを奪われてしまうってことだよッ!)」


 年齢的には成人している筈が精神的には十代前半の後先考えずに行動する子供っぽい。まさに大きな子供って訳だが別に本当に襲ってしまうってつもりは一切ない。だって十代中盤位の少女に性的興奮を覚えるとか……事案発生だねっ!

 屑のなりかけ、云わば半熟状態なユーサク(腐)は一般常識は普通に守れる常識的な大人なのだ。だが、一度やって良いと分かってしまうと歯止めが効かなくなってしまう。そんな雨にさらされ続けた自転車のブレーキみたいな男なのだが……相手に変化が訪れる。

 正面のハッキリ分かる狂気ではなく、他の場所から感じる狂気を察知したのか少し、胸元が開いた服を押さえながら小さく呟く。


「……逃げてください」

「あ?」


 気合いを込めて抜いた剣の相手が一瞬で決着つくような相手で、しかも侵入した目的は? と脅しを入れながら聞いても言わないクソガキにそろそろキレそうな立派な二十歳、ユーサクだった。

 今すぐに体とおさらばさせて三日三晩家の前で飾ってやろうか? 晒してやろうか? と思ったのだが地面に転がった宝石が刀身まで散りばめられ、絶対戦うようじゃないよね、バカなの? と問い質したくなるブツを持とうと動く少女を……手で制止させる。「なんで……どうして」と、言う少女を無視しながら何か気配を感じた奥の方に意識を向ける。微かにだが……普通では考えられないほどの密度を持ったナニかが向かってくるのが感じ取れた。


「はぁ、何かは知らないけどこれが終わったら後で警察行こうな? ね?」


 本音は「ここで俺の圧倒的実力を見せ付けやるから地面に頭を擦り付け、懇願でもしとけこのボケがぁ『ユーサク様の圧倒的な実力を前に腰が抜けてしまいましたわぁ……そして子宮の辺りがじんじんくるこの感覚は……』」……いや、子宮云々は色々と面倒だしそれは要らないか。

 背負っているリュックを地面に下ろし、軽く体をならす。一応の礼儀として剣は鞘に仕舞っているのだが……近付いてくる感覚は分かるのだが霧が出てきて姿はまだ、認識出来ていなかった。

 一応言っておくがこのダンジョンはそんな高度な技術は一切存在しなく、唯一ある罠は落とし穴と典型的なもののみだ。それがまぁ割りとダメージになるのだから納得がいかない。深さ十数メートルって……海潜ってる訳じゃないんだよな。

 少し、時間が空いたので気になっていた少女の名前を聞いてみる。届け出とかにも住所氏名書く欄はあるもんな。


「……因みに名前は? ああ、俺はユーサク。さんでも君でも好きに呼んでもらって良い」


 だって、直ぐにブタ箱にぶち込むんだもん。でも未成年っぽいし観察処分って感じで終わりそうだよな……。

 そんな別のことで悩んでいるユーサクとは違い、なんなのか張り詰めた糸が緩んでしまったのかへたり込んだ状態で地面に辛うじて座っていた。良く見ると黄金のローブには決して軽くはない赤黒く固まった血が浮き出ていたのだがユーサクは知るよしもない。だって首以外見てないんだもん。

 そして数秒の思考の末、ボソリと名前を口に出した。そんな言って減るもんじゃないし躊躇うなよ……と、背中で思っていたユーサクなのだが丁度、相手さんの容姿も見れてきた。


 見て分かるほどの張り上がるほどの筋肉に赤い肌。肌には軽く布は巻いているがただ巻いてるだけ、それ以外の認識はできなかった。

 そしてユーサクの金髪とは正反対の銀色の長髪に鋭く刺すような双眼。手には固く握られた刃がガタガタにこぼれてしまっている刀……ジャパニーズソードの愛称で知られる日本刀を担いでいた。そして極めつけは額から付き出した黒曜石のような深い黒の角。これは……


「鬼……いや、昇華種の方か?」「アースクレッド・ノアリです……」


 ほぼ同時に言ったせいで気持ち悪いシンクロを見せてしまったじゃねぇか。つか、野蟻……あ、アースクレッド・ノアリって……


「絶賛家出中の王女様じゃねぇか」

「絶賛ではないんですけどね……」


 照れながらそう答える少女――ノアリはダンジョン内で場違いなほどに光輝いていた。

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