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生徒が教師に勝てないのは道理

 DSC付属ルリアーノアカデミー。

 DSC付属の学園としては、全体的に日本人が多いのが特徴である。

 その所在地は、不明、というより不定である(これはそのほかの学園にも言えることだが)。

 なぜかというと・・・・・・・・

 「にしてもすごいですねー」

 「何が?」

 「まあアタシも言いたいことはわかるわ」

 ユースケ、アリス、メリッサの三人がいるのは、学園に併設されたカフェ。ある人物の呼び出しを受けて来ていた。

 カフェとしては豊富なメニューと学生に向けたリーズナブルな価格がウリとなっているこのカフェには、もうひとつウリがあった。

 すぐそこに屋外カフェが併設されており、ちょうどこの時期は暖かさもあってやってくる生徒も多めだが、それ以外にも理由があった。

 すぐ外のほうを見てみると・・・・・

 「こんな雲海が外を覗き込むと広がってるんですからねぇ」

 「まったくどうなってんのかしらね、本当に」

 「カイ・・・先生に聞いたけど、原理不明」

 ルリアーノアカデミー。その実態は空中学園都市であった。

 学園そのものはドーム上になっており、おおむね四季にあわせた気候調整がなされているほか、校舎の外は演習区域と市街区域に分かれており、演習区域の市街エリアは、日本の地方都市の景観が再現されている。

 市街区域も、学生の寮が点在するほか、学生や学園関係者が利用するコンビニなどのショップが存在しており、休日は学生でにぎわっている。(大体某戦車のアニメの学園を想像していただければよい)

 「お、全員いるな。感心感心」

 ぼーっと外を眺めていたところで、ようやく3人を呼び出した主、1年1組担任のカイト・アルデールである。

 「感心もなにも、アタシたちを呼び出したのは先生じゃないですか」

 「まあそういうなって」

 「ところで、俺たちに話って何ですか?」

 「ああ、実はな、お前ら3人にSSUに加入してもらいたい」

 「「えっ!」」

 「SSUって、あの?」

 「お前は意外と驚かないんだなアリス」

 まあそんなことは別にどうでもよくて

 「え、え、SSUってあのSSU?なのユースケ!?」

 「え、SSUっていったらあのSSUしかないんじゃないんですか!?」

 SSU・・・・Students Special Unitの略で、簡単に言えば学生による部隊である。

 DSC系列のどの学園でも採用されているシステムで、戦闘面において優秀と認められた生徒によって編成される実戦部隊である。

 当然、実戦を行うからには高い戦闘力と冷静な判断力が必要とされるが、どの学園のSSUも、学生でありながら本職と比較しても見劣りしない実力を持っている。

 「でも、なんで俺たちを誘ったんです?というか、先生にそんな権限あるんですか?」

 確かにもっともな話だ。SSUは学生隊長かSSU顧問の教師のスカウトがなければまず入隊はできないはずなのだが・・・・・・・・

 「ああ、それは大丈夫大丈夫。だってSSUの顧問って、俺だから」

 「「「・・・・・・・・え」」」

 「お、今度こそ驚いてくれたか」

 「ちなみに俺たちをスカウトする理由を聞いてもいいですか?」

 「ああ、そりゃもちろん、この前の授業を見ての判断だ」

 「授業ねえ・・・・・」

 授業といったからにはアレしか思い当たらないのだが・・・・・と時系列的に約1週間前のことをメリッサは振り返っていた。


 「さて諸君、入学してからのガイダンスご苦労だった。よーやく今日から本格的な授業の開始だ。まあ俺も一発目が演習科目じゃなくてもいいとは思うんだけどな、時間割の都合上仕方がない」

 場所はルリアーノ学園シミュレータールーム。一週間にわたる長々としたガイダンスがようやく終わってやっと授業に入ったと思ったらいきなり演習科目だったというのが今現在の1年1組の状況であった。

 で何をするかというと・・・・・・

 「さて、今日はお前らにシミュレーターで機龍の動きをつかんでもらう。まあ入学前に操縦マニュアルを読んできただろうが、イメージと実際に動かすのとではかなりの差異があるからな。まずはシミュレーターでよく動きを把握してもらう」

 そういって今度はシミュレータールームの奥にある大きなモニターをを指差した。画面がシミュレーターと同じ十分割されている。

 「あのモニターで、今シミュレーターを動かしているやつがどんな動きをしているかがわかる。順番待ちのやつは、あれを見て参考にするといい」

 そうして、今度は1枚の紙を配り始めた。

 「んで、これがグループ分けな。まあつっても事前訓練のメンバーそのままだけどな」

 「じゃあ何でわざわざ紙使ったんです?」

 クラスの男子から声が上がった。まあ当然といえば当然の疑問である。

 「知ってるか?企業付属とはいえ、教師の給料はけっして高くはないんだぜ?これは、そんな学園への俺からのささやかな報復なんだよ」

 聞いてみたらとてもどうでもよかったというのは質問した男子の後の弁である。

 「ま、そんなことはどうでもよくてだ・・・・・シミュレーターは13台あるからな。そこに書いてあるとおり、2番から13番を使え。入ってるデータは最新のジークフリートのものだ。稼働時間は一人20分だ。あとは・・・・特にないな。環境設定は学園のアリーナに設定してあるから、まあ自由に動かして体感してくれ。以上だ」

 というわけで、メリッサ、ユースケ、アリスの三人もシミュレーターで訓練を行うこととなった。順番は、機龍の操縦経験があり、残り二人もまずは様子見といきたかったためアリス、ユースケ、メリッサの順番となった。

 「まずは・・・・・」

 アリスの手つきは慣れたもので、てきぱきと起動シークエンスを行っている。ほかのチームでは、まだ起動にあっちゃこっちゃやっているところもある。

 「ぽち・・・・ぽちぽち・・・・・・ポチっとな」

 なんだかどこかで聞いたようなフレーズが聞こえた気がしなくもないが、起動シークエンスを終えたシミュレーターに学園のアリーナの映像が映し出された。

 「さすが最新機。あの欠陥機とはぜんぜん違う」

 アリスの言う欠陥機というのは、もちろんカイト専用のあの機龍のことである。まあ確かにカイト以外操縦できず、汎用性を求める兵器としては立派に欠陥機だが。

 機体の状態をチェックしてみると、どうやら武器は設定されていないようである。

 「とりあえず、このくらい」

 それはアリスの得意とする役割においては、まったく必要の無い技術ではあったが

 「このぐらいはできるようにしておけ」

 と彼女の保護者から教えられた戦術であった。もっとも武器は無いので見立てでやるしかないのだが

 「ターゲットを捕捉」

 敵と相対していると考え、100メートルほど先に敵を仮想する。

 「円の動きで追い込む」

 敵へ近づきながら回り込むようにしてアサルトライフルを掃射するふりをする。

 「そこへ集中砲火」

 掃射が終わったところで今度は頭部機銃と即マガジンを交換したアサルトライフルで一斉射撃するふり

 「最後は中央を突破!」

 そして、突撃。対ドラゴン用ハンマー敵を粉砕する。

 「あきれるほど有効なコンバットパターン」

 保護者いわく、キメ台詞は忘れてはならないとのこと。アリスには理由がいまいち分からなかったが。

 この後は、軽い動作チェックをしただけでアリスの時間は終了となった。


 さて、次のユースケの番だが、こちらも起動シークエンスはアリスのを見ていたのもあっててきぱきとこなしていった。

 「ほ~うこりゃすげえや」

 入学前に読んだ操縦マニュアルを思い出しながら、まずは右足を一歩踏み出してみる。

 「比較的似ているのはモビルスーツ?いやそれともレイバーか?はたまた戦術機?いやでも外観は明らかにバトロイドなんだよなあ」

 分かる人にしか分からない単語をつぶやきながら二歩目を踏み出す。ついでに足の動きに合わせて腕も動かす。

 ここまでしてしまえばユースケにとっては慣れたも同然で、三歩、四歩と行き、ついには走り出す。

 「よし、あれやってみますか」

 もちろん武器は持ってないのでふりだけだが。

 「アサルトコンバットパターン・ファイ―――」

 以下省略!

 

 そうしてようやくかといった様子のメリッサである。ちなみに前の2人を見ていて一番驚いたのは2人ともまったく同じことをやっていたことである。

 「・・・・・いけないいけない。どうせなら違うことやろう」

 あのコンバットパターンをやろうかと一瞬考えたがすぐに振り払って違うことをしようと考える。だが、いざ考えると、思い浮かばないものである。

 「よし、決めたわ!」

 敵を正面に仮想し、ライフルを掃射するふりをしながら前進、途中回転をしてフェイントを加える。

 そのまま敵に肩から突撃、すぐさまパンチを2発。そして、至近距離から一撃を見舞った。

 「・・・・・・・・・」

 なお、終始メリッサは無言だった。


 全員のシミュレーター登場が終わったところで、一度全員集められた。

 「さてさて、まあとりあえず全員にシミュレーターを体験してもらったわけだが、感想は後で提出してもらうとして、今から名前を呼ばれたやつ、前に出ろ」

 いきなりなんだというのがクラス全員の思いであり、そこら中でざわざわとし始めた。

 「あー、安心しろ、これから呼ぶやつは初めてにしては比較的良く乗れいていたやつだ。別にヘタクソを公開処刑する気はないし、するのも無駄だからな」

 ほっと一安心したのかクラスは静かになった。

 「よーし、んじゃ名前読んでくぞー。まず、アリス・クーパー」

 こくり、とうなずいただけでアリスは無言のまま前に出た。もっとも、あの動きを見て確実だなと思われていたので特に驚いた反応は出なかった。

 「――――次、5人目、野村勇輔」

 「あ、はい」

 軽く返事をして前に出る。自分では選ばれるとは思っていなかっただけにちょっと驚いている。

 「・・・・・・・最後、メリッサ・バーミリオン」

 「は、はい」

 「やりましたね姫さん」

 「次また言ったら一発ぶん殴るわよ!?」

 メリッサも最後の10人目に選ばれた。これでドラゴン遭遇組は全員選ばれたことになる。

 「さてさて、これからお前らには、ちょっとしたレクリエーションをやってもらう」

 レクレーション?とクラス全員が思った一方で、ほかのクラスメイトより少し早くカイトのことを知っていた3人は少しいやな予感をしていた。

 「これからお前たちには、シミュレーターで俺と戦ってもらう。もちろん10対1、加えて開始から3分は1歩も動かないというハンデつきだ」

 「いやそれはさすがに僕らが勝ちますよ」

 「そうです、さすがに舐めすぎです」

 3人以外の面子からそんな声が聞こえてきたが、それならばといった具合でカイトはさらに条件を付け足してきた。

 「おいおい俺を甘く見るなよ?なんなら加えて俺に勝てたらこの授業の評価5をやる」

 基本ルリアーノアカデミーの授業評価は5段階で、当然ながら5というのは最高評価である。

 10対1、3分間的は動かない、加えて勝てば最高評価がもらえるということもあって、3人以外のメンバーはクラスメイトも含めてやる気を存分に見せていた。

 「うし、じゃあ準備しろ。とっととはじめるぞ」

 かくして、1-1生徒が始めて担任の実力を知ったレクリエーションが始まった。


 「なあなあ、野村、お前たち先生の戦い見てたんだろ?どんな感じだった?」

 「どんな感じっていわれてもな~」

 準備の間、メリッサ、ユースケ、アリスはほかのメンバーからの質問攻めにあっていた。もっともそこまで戦闘に通じていない3人なので、答えられることはあまり無かったが・・・・

 「でもこれだけは言えるわ」

 「油断してると3分後に全員瞬殺」

 「またまた~、オーバーすぎでしょ」

 クラス全員が、答えたことに関してもあまり信じなかった。

 「えっと確かこうしてこうして・・・・・・」

 準備の前に指示されたとおりに全員機龍に武装を設定していた。

 ほとんどはジークフリートの標準装備だったが、アリスだけ1人違った装備をしていた。

 「アリス、それはいったい?」

 「対ドラゴン用特殊弾装備専用スナイパーライフル」

 アリスの装備は銃が本体といわんばかりの長砲身の銃に頭部にセンサーを増設した長距離狙撃スタイルの装備だった。

 「なぜにそれを?」

 「これが私本来のスタイル」

 後日聞いたところによると、カイトがアリスの狙撃の才能を見出して訓練させていたらしい。

 カイトが言うには

 「教えていた俺もすごいが、あれはなかなかの才能だぞ。これまであいつが弾をはずすのは10回に1回くらいしか見たことがない」

 とのことである。

 「よーしお前ら、準備はいいか~?」

 「「「「「「はい!」」」」」

 通信でのカイトからの連絡が入り、全員それに元気よく答える。

 『まもなく模擬戦へと移行します。健闘を』

 システムメッセージ的なのあったんだ・・・というのが戦いにはいる前の全員の感想だった。


 シミュレーターの場所の設定は先ほどと同じアリーナであった。

 「えっとほかの人は・・・・」

 ほかのメンバーはどこかとメリッサが周囲を見渡してみると、両サイドに全員が並んでいるのが確認できた。あとは・・・・・

 「よーし、全員いるな」

 前方およそ150メートル先に、標的はいた。使用しているのはこちらと同じ、標準装備のジークフリートだった。

 「今から3分間、俺はここから一切動かない。これからこの弾丸を投げる。それが地面に落ちたらスタートだ。いくぞー」

 ジークフリートのアサルトライフルの弾丸を放り投げ、それが徐々に落下してくる。落ちるまで5・・・・4・・・・3・・・・2・・・・1・・・・

 「ゼロッ!」

 4人が左右から回り込むようにして分かれるようにして突撃、メリッサ、ユースケを含む5人はその場で一斉射撃を始めた。また、アリスは1人後方へ下がって狙撃の体勢へと移行していた。

 「ほうほうなるほど、全員で打ち合わせをしたわけでもないのに、この動きができるとは、なかなか悪くないな。けどな!」

 カイトは装備されていたランスを浮遊させてまず1人の攻撃を受け止め、さらにナイフ2本も同様にしてさらに2人の攻撃も受け止めた。残った一人は向けてきたランスを左手でつかんで止めた。その一方で、弾丸の嵐をマトリックスよろしく目の前で停止させていた。これらすべて、魔術の基礎中の基礎、物体浮遊によるものであった。

 「「「「「「うそぉ!」」」」」

 これには観戦していた生徒も含む全員が驚きを隠せなかった。

「驚いてる場合じゃねえよっ!」

先程の動きに全員が唖然としているうちに、ランスをつかんでいる左手をおもいっきり振って武器を奪取、そのまま持つ向きを変えてもともと持っていた相手に返す。それによってまず一機が沈黙した。

「ほらまず一機」

突き刺したランスをそのまま回収しようとしたが――――

「させない」

アリスの狙撃によってランスは弾き飛ばされてしまい、持ち主と同時に消滅してしまった。

突撃した3機は一度下がって他の6機と合流した。

「オイオイオイオイ!なんだよありゃ!」

「だから俺たちは言いましたよ」

「油断してると即全滅・・・・」

今ので十分理解したのだろう。3人が言っていたことが誇張でも何でもないことを。

「でもどうする?このままじゃ勝ち目ないよ?」

 担任の実力は今のでよく分かった。さっきやられたやつが昨日ステーキ食ってたのは関係ないと信じたいが。

 だが、そうこうしているうちに時間は過ぎていく。

 「アタシに考えがある。少なくとも、このまま無策よりは勝率は上がる・・・・と思うわ」

 「俺はその作戦乗りますよ」

 メリッサの考えに真っ先に乗ったのはユースケだった。

 「ユースケ・・・・・」

 「私も乗る」

 「アリス・・・・・・」

 「伊達に姫さんとチームは組んでいませんよ。ほかの皆さんも、どーか協力してもらえませんかね?」

 一瞬だけ沈黙があった後

 「わかった」

 「わかったわ」

 「あの教師に一泡吹かせてやろうぜ!」

 全員の賛同を得ることができた。

 「それで、作戦なんだけど・・・・・・」


 「う~ん・・・・あれ以降動きがねーな」

 思ったよりも先ほどの攻撃が良かったのでついちょっとだけ本気を出してしまったカイトはコックピットの中で生徒たちの様子を伺っていた。時間も、もうそろそろ3分経とうとしている。

 「てっきりこっちが動かないと踏んで3分以内に勝負を仕掛けてくると思ったんだが、当てが外れたな」

 逆に言えば、生徒たちはカイトの予想よりも良い逸材だったということであり、そのことはカイトにとってもありがたいことだった。

 「まあ、そろそろ3分経つし、かる~く、こっちからいってみるか」

 時間もちょうど開始から3分を指していた。頃合だろう。

 そうして一歩、踏み出した瞬間だった。

 「おっと!」

 ヤケを起こしたのか、一人が突撃してきた。いや、一人だけではない何人か後ろに続いて波状攻撃をするかのように突撃してきた。

 危なげなく回避するが、この意外な行動に驚いたのは確かだ。

 「さーてそういうことか。おもしれえ、乗ってやるか!」

 改めて、ランスを手に取り、突撃部隊へと相対した。


 「あー回避されちゃいましたね」

 「大丈夫よ。これも作戦のうちだわ。みんな、とにかく先生の気を引きまくって!」

 「「「「「「「「おう!」」」」」」」

 回避されてもいい。大事なのは、とにかく気を引くこと。それが、メリッサの立てた作戦の、大事なことの1つであった。

 とにかく波状攻撃を仕掛けて、カイトの気を逸らし、アリスの狙撃で仕留める。これがメリッサの立てた作戦であった。また、攻撃を仕掛ける際、なるべく砂煙を立ててアリスの場所を視覚で捕らえられないようにもしていた。

 最初のうちは意外と被害が少なくすんだが、何度も繰り返すうちに周りがやられていき、気づけばアリスをのぞけば残っているのがメリッサとユースケだけになっていた。

 「ユースケ、生きてる?」

 「生きてますよ~っと。何とかですがね」

 目の前で戦いを見ているからある程度戦闘力に差があるのは分かっていたが、ここまで差が開いてるとは正直なところ予想はしていなかった。

 「そろそろ十分気を引けたんじゃないですかね?」

 「そうね。なら、もう少しの辛抱よ。アリス、準備はいい?」

 「オーケー」

 チャンスは一度きり。

 「じゃあ、いくわよユースケ!」

 「はいよっと!」

 先ほどから突撃による一撃離脱戦法から、足を止めてカイトと2対1による接近戦を繰り広げていた。

 「オラオラ!もっと攻めて来い!」

 防御重視で立ち回る2人だが、カイトの攻撃が正確無比に隙を突いてくるため、防御重視に舞わざるをえないというのが実情であった。

 だが、カイトのほうも、多少手加減をしていたとはいえここまで粘る2人には驚きを隠せなかった。

 「思ったよりもやるじゃねえか。じゃあ、こいつはどうだ!」

 先ほどと同じ、(メリッサたちから見て)左上から右下への単純な薙ぎ・・・・ではなかった。

 「えっ・・・・・どこ!?」

 確かに槍は薙ぎの攻撃をしていた。が、そこには肝心の持ち主がいなかった。

 「後ろだっ!」

 カイトは薙ぎで一瞬気を逸らすと同時に2人の背後へと回っており、その両手にはナイフが握られていた。

 それを、機龍の背中の中央、コックピットのある辺りへと突きたてようとしたが・・・・

 「うわっと!」

 「ごめん、ユースケ。後は、頼んだわ」

 「え!ちょま!」  

 かろうじて反応できたユースケはとっさに距離をとってかわすことができたが、メリッサは反応できず

撃破判定を受けてしまった。

 「え~・・・・・ちょっとこれは無いですよ~・・・・」

 状況は、ユースケとカイトの1対1。だが、そんなことでカイトが攻勢をゆるめるはずもなく、防御が精一杯といったところだったが・・・・

 「くっ、たとえ俺がここで倒れても、第2第3の俺が―――」

 「セリフに捻りが無いから50点だな」

 「うわあああああああああ!」

 余計なことを言ったためにすぐに片付けられてしまった。

 これを見ていたメリッサは「何がうわあああああ!よ。こっちはみんなしてうわぁ・・・だったんですけど!」と後に語っている。

 だが、これはこれとして、作戦は当初の目的どおりに動いてきていた。

 「シュート」

 ユースケを倒したまさにその瞬間、今まで戦闘に介入せずに姿をくらませていたアリスから、1発の弾丸が放たれた。

 その弾丸は、ユースケを倒して無防備となっていた背中へと向かっていた

 「だが、惜しかったな!」

 しかし、その弾丸は、一直線上に現れたナイフによって阻まれた

 「「「「「うそお!」」」」

 当然、アリス一人では勝てるはずもなく、速攻でやられ、これにて模擬戦は終了となった

 

 以上が、メリッサの思い出していた「授業」の内容である。

 まあ結果から見て分かるとおり一方的な結果ではあったものの以外にも得るものは多かった。

 もっとも、実機を動かせるようになるのはまだ先のようで、

 「とりあえず飛べるようにならなきゃ話にならん」

 とのことであった。

 「まあ、本来であれば飛行術を教えるのはもう少し先なんだが、SSUに加入に当たってはそこらへんのことは前倒しで教える予定だから心配するな。それに、上の学年の連中も、いいやつが多いからな」

 「私は入る」

 「即決ですかアリスさん!?まあ俺としても断る理由が特に無いんでいいですよ」

 「アタシも。強くなれるなら、それにこしたことはないわ」

 「ようし全員決定だな!もろもろのことは俺がやっておくから、来週の火曜の放課後、SSU作戦室まで来てくれ。場所は分かるだろ?」

 SSU作戦室とは、文字通りSSUが出撃する際に司令室ともなるリリアーノアカデミーSSUの拠点である。

 SSU出撃時においては、担当の教員がここで指揮を執ることとなっている。普通の場合は。

 「作戦室ってあそこですか?校舎の地下区画の」

 「そうだ、あそこから直接SSU専用の格納庫へとつながってる」

 「分かりました。来週の放課後、そこへ向かいます」

 「おう、待ってるぞ」

 こうして、メリッサ、ユースケ、アリスの3人は、SSU加入へと相成った。


 そういうわけで次週の火曜日、メリッサ、ユースケ、アリスの3人は、校舎地下区画のSSU作戦室の前にやってきていた。

 「なんかだか改めて来ると緊張するわね」

 「おや、どうしたんです?姫さんらしくもない」

 「う、うっさいわね!」

 「とりあえず、早く中に入ろう」

 SSU作戦室はセキュリティがほかの部屋よりも高めで、SSU隊員の証であるIDカードがないと入れないが、特別な来客者用のIDカードがあり、今回は1人1枚ずつ事前にカイトから渡されていた。

 「確か、ピピッてやるのよね」

 IDカードを入り口のリーダーのかざして、扉を開ける。ちなみにこのときIDを持たない人物がくっついて入ろうとすると警報がなる仕組みになっている。(ゆえに1人1枚である)

 扉が開き、中の様子が見えたが、なぜか部屋の明かりは消えていた。

 「あのー、誰かいませんかー?」

 ユースケが声を掛けてみたがまったく反応がない。無いだけならいいが、人の存在すら感じられなかった。

 ピシャ。

 ゆっくりと歩みを進めていると。何か、液体を踏んだような感じがした。

 「「え・・・・・」」

 つい声を出してしまったメリッサとユースケ。

 恐る恐る下を向いてみる。

 そこには、赤い液体を流して倒れている、男子生徒の体があった。

 「「ギャアァァァァァァァァ!」」


                                    つづく

 「え、こんなところでつづくでいいんですか!?」

 知るかバカ

 

 


 


 

 


 

 時間がかかって申し訳ありませんでした。ちょっとリアルでゲームの周回にいそしみすぎていただけなんです。次回以降はなるべく早く投稿するようにするのでどうぞこの作品を読んでいただけたらと思います。

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