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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

亡国

国民Aの永遠

作者: 柚木めろ子

うーん、たいようがまぶしいっ!

青い空、白いくも、ひろーい大地。

すごいでしょ、でもね、この村はほかになんにもないの!

お下がりの麦わらぼうしはぶかぶかでぼろぼろ。

かぶっててもそうじゃなくっても、あたしのかおにはちょくしゃ日光あたりまくり。

でもね、あたしは今日もがんばるよ!

さあ、今日も畑耕しますかー!



ふんふんふふんふーん。

見てよこのかれいなるクワさばき! タクミと呼んでくれてもよくってよ!

じいさんもばあさんも父さんも母さんもなくなっちゃったから、あたしはずっとひとりで働いてるんだ! えらいでしょー。


よくってよといえば!


ここからじゃもちろん見えないくらいとおくに、あたしの足じゃたどりつけないくらいとおくに、おおきなお城があるんだって。

小さいころ母さんがオキサキサマの話をしてくれたの。

オキサキサマはお城をだめにした悪い虫なんだって!

おおきなお城をだめにするって、どれだけすごい虫なんだろう?

そんな虫がもし畑にいたらどうしよう! あたしこわい!


って、そんな虫ここにいたらすぐわかるよねー。


オキサキサマなんてどーでもいいんだった。

ごめんね、あたしさいきんあたまがまとまらないの。

お城にはね、かっこいいオウジサマもいたんだよ。

オウジサマはいっぱいいたらしいけど、あたしが知ってるのはひとりだけ。


カミーユさま! ほんとにすっごくかっこよかったんだから!


え? ふふん、そう、「知ってる」の。

カミーユさまはこの村になんどもきて、あたしとおはなししてくれたの。

ほかにはなすひとなんかいないからうれしかったなあ。

カミーユさまのおつかいだってひとがきて、小麦を両手一杯分おいていってからはしばらくだれもきてくれなかったけどね。


ああ、それに。

何回か種をまくきせつがきて、カミーユさまがきれいな女のひとと来たとき。

その女のひとひどいの! あたしのからだを見てきたないって言ったの!

あたしのからだだって、すきであんなところにあるわけじゃないのに。

かおがきれいならなに言ってもゆるされるとでもおもってるのかな?


でもカミーユさま、くびにくさりがついてたけどどうしたんだろう?

いまはああいうのがはやってるのかな?

あたしはもうこの村からでられないからわかんないや。


あ、またはなしがちがうところにいっちゃった。

えっとね、それでね、あたしそれを見てすっごくかなしかった。

カミーユさまもかなしそうなかおで、あたしのからだのまわりに花をたくさんおいてったよ。

あんな花、どこからもってきたんだろう?

もうこのあたりにはずっと雑草だってはえてないのにね。

なにか穴もほろうとしてたみたい。穴なんかほってどうするんだろうね?


女のひとが怒ってカミーユさまをつれてっちゃって、その日はそれでさよならしたの。




でもカミーユさま、あたしずっとがんばって働くから、いいこにしてるから、また会いにきてね!




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