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序盤の終幕

「随分とやるじゃない。」



無名の丘にある獄蝶の崖。



「あんたと闘うつもりは、ないんだけどな。」



余裕の神奈子に、勇樹も余裕な感じで弾幕を放つ。

神奈子はその弾幕を難なく避けていった。



(さてと、どうするかね……一撃でぶっぱなすって手もあるけどあいつの後ろに早苗はいるし……)



避けながら、そう考える。突然早苗の声が聞こえて目の前を見る。



「神奈子様!!」


「!?」


「【神具:洩矢の鉄の輪】!」



スペルカードで相殺しようとしたとき、後ろから大きな鉄の輪が飛び出てくる。

直後にスペルカード宣言した声の主が神奈子をからかうように現れた。



「神奈子鈍くなったんじゃない~?」


「うるさいわね……ちょうどスペルカード使おうとしたところであんたが来たのよ。」



神奈子は諏訪子にそう言う。


勇樹は諏訪子の後ろにいる龍二をじっと見て、そし笑みを浮かべる。



「やっと決意したか……」


「……俺はヒーローなんかじゃない。その考えは同じだ。けど少しでも、俺に助けを求めてる人がいるなら……ヒーローじゃなくても、ヒーローみたいに頑張ってはみるさ。」



龍二はそう言い、青龍剣を構えた。



「勇樹は俺一人で大丈夫だ。後ろにいる早苗を頼む。」


「了解!」


「あいよっと。」



諏訪子と神奈子は真っ先に早苗のところへと向かう。

勿論、簡単に渡すまいと勇樹も動きだした。



「はあぁ!!」



右手に炎を宿し、それを前方へと放つ。

しかし、それを龍二が弾幕で相殺し、神奈子と諏訪子は勇樹を通りこした。



「ちぃ!」



勇樹は再び炎を出そうとする。



「アンタの相手は……!」


「!?」



すぐに龍二の方に向きを変えてやってくる弾幕に炎をあてる。



「めんどくさいことを……」


「神奈子、諏訪子、有難う。あとは大丈夫だ。」


「だから、アンタねぇ……」


「大丈夫、俺がこいつを倒す。」



龍二がそう言う勇樹は高笑いする。



「何がおかしい。」


「倒す………か。そう言って失敗したのを忘れてたのか?お前一人じゃ俺を倒すことは出来ない。」


「……過去と今は違う。」



眉をひそめ、静かに答える龍二に勇樹は不機嫌な表情に変えて呟く。



「気に入らないな……あの人が惚れる理由がわからねぇ。」



そう言い、今度は自分の双方に小さなたつまきをおこす。



「出来ると言うなら……止めてみろ。」


「言われなくても……そのつもりだ!」



青龍剣を高く振りおろし、弾幕を放つ。



「ここからは俺とあいつの闘いだ。……離れててくれ。」


「…わかった。」



まず神奈子がそう答えて離れ次に諏訪子が離れる。

しかし早苗はただそこで立ってるだけだった。



「今の俺じゃ不満か?」



龍二の問いに早苗は首を横に振った。



「頑張ってね!」



早苗はそう言いその場からはなれた。

早苗が去るのを見送ると突然、前方から弾幕が来る。



「よそ見してる場合か……?」


「……決着をつけなければ。」



そう言い再び弾幕を張る。



「決着か……それは俺に対してか?」



勇樹も龍二の弾幕を避けながら弾を放つ。

その弾を龍二は避け、服の懐に手を入れる。



「違う……雪菜に対してだ。」



スペルカードを一枚、服の懐から取りだして叫ぶ。



「【彩符:百華繚乱】!!」



懐から出したあと、剣を両手で持ち、一回転をする。

一回転した剣から弾幕を出して龍二の周りを囲むようにした。



「自己防衛か?自分を守る、お前らしいな!【炎符:フレイムロッド】!!」



そう言い炎の槍を龍二に放つ。一歩下がり、炎の槍を避けながら弾幕を張り続ける。



「弱いな。後先のことを考えないから………こうなる。」


「!?」


「伏せて!!【秘術:グレイソーマタージ】!!」



後ろから声がして、すぐに伏せる。刹那、急に速くなった炎の槍と、赤と青の弾幕がぶつかり合う。

少し経つと、龍二の横に早苗がやって来た。



「結局負けそうだったね。」


「すまない…」


「失せろ、アンタには何もわからない。」


「貴方に関しては文さんから聞きました。」


(随分とお喋りな天狗だ…)



龍二はそう思ったが流石に口には出さない。



「私も昔、虐められてました…宗教女だの、気持ち悪い髪型してるだの……いろいろなことを言われた。けど、それでも支えてくれる人がいた!!」


「それが俺にはいなかったんだよ!!」



勇樹はそう叫び、弾幕を放つが早苗の弾幕が相殺した。



「ううん…そんなことはない。現に貴方には、一緒にいてくれた友達がいた!貴方は人の悪の言葉に惑わされただけ……周りに支えてくれる人はいたんです!!でも、大丈夫です。これからは、私達が貴方を支える!」



弾幕で星をつくりながら早苗は言う。



「雑音だ……いっそのことお前達二人を消してやる!!」



勇樹はそう言い、スペルカードを一つ使おうとした。しかし勇樹は何かを感じ、表情を変える。

勇樹の様子に早苗は近づこうとする。が、それを龍二は肩をつかんで止めた。



「どうして……!」


「行かない方が良い……嫌な予感がする。」



そう言ってると、勇樹がゆっくりと顔をあげた。

いや、中の人は違う。龍二はすぐに気づいた。



「おかしいなあ。僕は龍二君を説得するよう命令したのに……憎しみの心が強すぎたかな?」


「貴方は……神崎勇樹じゃないの?」



早苗の問いに、神崎勇樹の身体は振り向いてにぃと笑い、答えた。



「そうだなあ……その答えそのものには違うと答えるべきかな?」



今度は龍二の方を見て言うが龍二は何も言わず、ただじっと睨んでいるだけだった。



「あらら……相変わらず僕のこと嫌い?」


「さあな……アンタに関しては俺自身わからない。」



龍二は苦笑いをするかのような表情をする。しかし、決して苦笑いはしない。

その表情で、早苗は察した。



「まさか貴方………」


「お、もしかして君わかるの?嬉しいなあ。僕も有名人になったんだね。」



明るい口調でそう話すその表情はどちらかというと女の子のようだった。



「………説得するとはどういう意味だ?」


「単純な意味さ。君を僕たちの仲間にする。そして行こう?外の世界を潰しに……。」



“潰しに”という言葉は二人には本気にしか聞こえなかった。



「うーん……でも、僕は君の恋人になりたいし……そうだ、いっそのこと夫婦になろうよ!」


「………笑えねぇ冗談だな、東條。」


「冗談じゃないさ。僕は責任感が強い君が大好きなんだ。」


「そいつの身体で言われるのは気味が悪いな……さっさと勇樹の身体から離れてくれ。」



皮肉混じりな言葉で龍二は言う。



「そうだなあ…けど、まだ身体は復活してないし……けど、すぐに君のところに行くから待っててね。」



そう言う雪菜に、黙って話を聞いていた早苗が反抗する。



「貴方は間違ってる……どんな事情があるのかは知らないけど外の世界を潰しには行かせません!!」



そう言いスペルカードを取り出す。



「【奇跡:ミラクルフルーツ】!!」



果実の弾幕が雪菜に襲いかかろうとする。



「ある本で見たよ。この世の酸っぱいものを甘くする……その奇跡こそが甘いね!!【虚無:ロストメモリーズ】。」



そう宣言し、雪菜の後ろから無数の弾幕が早苗の弾幕を突く。



「甘酸っぱい程度が僕は好みだな……」



そう言ったころには既に雪菜の弾幕が早苗に直撃していた。

気づかず被曝した早苗は後ろに吹き飛んで壁にぶつかり、気を失った。



「早苗っ!!」


「動いたら、今度は尖った弾幕を当てるよ。」



そして、早苗の周りに針のように長細い弾幕を沢山張る。

龍二は雪菜の方を向いたまま、何も出来なかった。



「嫉妬しちゃうなあ……もしかして巨乳派?それとも腋が露出してるのが好き?まあなんにせよ、次会ったときには君好みの女性になってるよう少しは頑張るよ。」



そう言い、黒い何か包まれる勇樹の身体……

それを龍二はただ見ていただけだった。


雪菜が消えてしばらくすると早苗の周りにあった弾幕は消えた。が、龍二の心には何も助けられなかった悔しさや、怒り、そして悲しみでいっぱいになり、その場で叫んだ。



「早苗は無事なのか?」



あれから少し時間が経ち、早苗の様態を確認しに、龍二は早苗を預けた永遠亭へ来た。

早苗が寝てる傍で龍二は優曇華院に聞く。



「一応、命に別状はないです。ただ……」


「ん……」


「早苗!?」



説明の途中で早苗が起きた。ぼーっとした表情で龍二を見る。



「………誰?」



早苗は龍二に、そう言った。

少し間があいて、早苗は首をかしげる。



「あ、えっと……あれ?人違いだ。ハハハ…」



戸惑いながらも、龍二はそう答えた。



「うどんげ、ちょっといいか?」



優曇華院は頷き、二人は部屋の外へ出た。



「記憶が失ってるようです……先に神奈子さんや諏訪子さんに来てもらいましたが覚えてました。他の方の名前を出しても……ただ、」


「俺のことは覚えてない…か。まあ俺が原因だから仕方ない。」



そうしてしばらく、龍二は考え込む。



「なあ、うどんげ。確か前に俺のところに駆けつけた上白沢慧音って……」





「慧音先生またねー!」


「ああ!気をつけて変えるんだぞ!」



そうして再び時間が経ち次の日の昼下がりの人里。

上白沢慧音は、寺子屋の子供達を見送っていた。



「ふふっ可愛いなぁ……」


「アンタ、寺子屋で先生をやってたんだな。」


「おや、お前はこの前の……」



振り向くと、そこには龍二がいて、彼は近づきながら用件を伝える。



「アンタの能力で頼みたいことがある。」



外じゃ少し暑いからと、慧音は寺子屋の中へ案内して、用件を聞く。



「……それで、頼みたい事はなんだ?」



少し沈黙が流れ、龍二はふっと息を吐いて用件を告げた。



「幻想郷の住人全員の記憶から、俺の幻想郷での動きをなかったことにしてほしい。」

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