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人里へ買い物

「龍二、行きたいところはある?」



朝、突然早苗がそう言った。



「行きたいところ…?いや、特にないが……そもそも幻想郷にどういうのがあるのかよくわからないし。」


「なら人里に行かない?」


「人里?」


「うん。1番人間が多く住んでる所だよ。」


「良いけど…」



龍二はすぐに答えた。すると早苗は喜ぶ。



「やった!これで荷物が軽くなる!!」


(あ、荷物持ち役か。)



龍二は納得して断ろうと思ったが何故か断る気にはなれなかった。



「あらあら、朝から二人でデート?」



ふと、声がする。ニヤつきながら言ったその声の主は紫だった。



「ち、違います!ちょっと買い出しの付き添いに……」


「そうかしら?昨日の今日なのに?」


「はぅあ!何故それを!?」



早苗は顔が赤いまま言う。



「まあ知ってるのは私だけよ。にしても若いわね~」


「だから違いますって!!」



二人がそういうやり取りをしてる間、龍二はただ見ていただけだった。



「やれやれ…行くんだろ早苗?ならさっさと行こうぜ。」


「え?あ、ちょっと待ってよ!」


「待ちなさい、貴方達。帰り方わかるのかしら?」


「???」



どうやら二人ともわからないらしい。今まで気がつかなかったみたいだ。

紫は小さくため息をついて



「しょうがないわね………二人とも、いくわよ。」


「へ?きゃあ!?」


「うぉっ!」



紫はすぐにスキマを二人の足元に開いて、二人をスキマの中へ落とす。

そこは人里の近くの草原。早苗はそこに落とされたのだ。



「いたたた…あれ、龍二は?」



早苗は辺りを見回すが龍二はいない。ふと下から声がする。



「ここだここ……」


「わ!ゴメン、大丈夫?」


「一応な……ん、あそこが人里か?」



向こうにある人里に気づく。早苗は頷いた。



「あそこが人里。だいたい江戸時代幕末に似た風景だよ。」


「ん~……俺歴史苦手なんだわ。ていうか勉強そのものが。」


「えぇ、意外……」


「全然意外じゃないだろ。主に見た目とか。」



人里に入ると、確かに風景は江戸時代幕末の風景とそっくりだった。



「すごいな…みんな和服だ。」



周りを見ると自分の服が目立つのがよくわかった。



「まあ確かに和服の人が多いけど、たまに外来人が混ざってるよ。」


「へぇ…でも流石になんか恥ずかしいな…服買おうかな……」


「まあそのうちね。」



最初に来たのは八百屋だ。品揃えは外の世界とあまり変わらない。



「いらっしゃい!おや?早苗ちゃんじゃないか。その人は彼氏かい?」



八百屋の店主であるおじさんは笑いながら早苗にそう聞く。



「違います!新しく私の神社で居候することになった外来人ですよ。」



ふと、龍二はまだわからないことがあることに気がついた。それは早苗が自分を居候してくれる理由である。

彼女は恩返しと言った。しかしこの前初対面のはずなのに、何故恩を返されなければならないのか?会っていたとしてもそれは何時の話だろうか?

彼は未だにわからないままだ。



「だいぶ買ったし…ちょっと休む?」


「ん?ああ…そうだな……」



しばらくして、早苗がそう聞いてきて、龍二は頷いた。

入ったのはとある茶屋である。



「ここの団子美味しいんって評判が良いから、一度行ってみたかったの。」


「へぇ。」


「ご注文は何にしますか?」



狼耳の女性の店員が近づいてきて聞いた。狼耳の女性はお茶を二人分置く。



「えーっとみたらし団子ください。龍二は何にするの?」


「そうだな…じゃあ三色団子をください。」



龍二は近くにあった品書きを見て頼む。

店員が行ったあと、龍二はあのことを聞いた。



「なあ早苗、」


「?」


「前にさ、早苗は恩返しって言っただろ?でも俺、お前と会った覚えがないんだ……俺、なんか感謝されることしたのか?」



龍二はそう聞く。早苗は少ししょんぼりした。



「やっぱり覚えてないか…」



早苗は俯きながらそう言う。

みたらし団子が来ると、早苗は食べはじめた。



「私がまだ中学生で、外の世界にいた時、虐められてたんだ…緑色の髪だし、いつも虐められていたの。京都に行ったときも私は虐められていた。そしたら妖怪がいきなり出てきて……虐めっ子は私をおいて逃げたの。私は妖怪に捕まって私は自分の無力さが嫌になった。まだ死にたくなかった。だから私は大声で助けを呼んだの。そしたらホントに助けが来たんだ……」



そこで龍二は思い出した。それは龍二が私用で京都に来ていたときのことだ。

早苗は話を続けた。



「妖怪を光が吹き飛ばしたの。幻想郷で言う弾幕みたいな光…次に男の子が私の前に現れたの。紺色の髪で青い瞳………彼は妖怪を倒したあとも、私を送ってくれた。お礼をしようと思って名前を聞いたけど彼は名乗らなかった。」



『名乗るほどの者じゃない。俺はただの…しがない学生さ。』



「彼はそうしか言わなかった。けどその姿は今でも覚えてるし後から聞いた話で名前もわかった。藤崎龍二……妖力を使う人間……」



すべて思い出した。

中学の頃はいろいろありすぎて覚えてなかったが早苗と話してるうちに思い出してきた。



「確かあれは一昨年の…そうか。まさか早苗だったとはな。」


「龍二のおかげで自信を持つことが出来た。………有難う。」



早苗は笑顔でそう言った。

しかし龍二は何故か首を横にふる。



「俺はなにもしてない。礼を言われるようなことは全くな。まあでもこれで納得出来たよ。嫌な思い出を掘り出してすまなかった。」


「ううん。良い思い出でもあるから…」


「そうか。」


「さて、そろそろ帰ろう。」



残りの分も買い終わった頃、早苗がそう言う。

龍二は両手に袋を三つずつ持って答えた。



「そうだな…帰るか。」


「今日は有難ね。また助けられたよ。」


「こういう人助けは初めてだけどな。」



苦笑いで龍二は答える。



「まあ、また頼んでよ、居候の身だし。」


「うん、わかった。」



二人は守矢神社に帰ってきた。人気はない。



「あの二人はまだ…か……」


「あ、早苗達だ!」



後ろから聞こえたのは諏訪子の声だ。振り返ると神奈子も隣にいた。



「二人とも、今帰ってきたのか?」


「うん、そっちは?」


「私達も今来ました。」


「そっか。それよりお腹すいたよ~」



諏訪子はそう言った。



「今日は冷し中華です。」



早苗は答えた。



「おっそいつは楽しみだ。早苗の冷し中華は美味しいからね。」



と神奈子は反応する。



「そうなのか。じゃあ俺も期待するか。」



龍二もそう言った。



彼の幻想郷の生活はまだまだ始まったばかりだ―



「よう、調子はどうだ?」



幻想郷のどこかにある場所で男性は女性に聞いた。



「まだまだだよ…あの少年は強い力を持っていたから、完全復活はまだまだ時間がかかる…」


「その少年がここに来たみたいだ。」


「彼が?」



女性は聞いた。男性は頷く。



「どうやら、あんた目的ではないようだが…」


「そうか…彼がここに……」



女性はそう呟くと笑いだす。



「なぁんだ。わざわざ向こうまで行く必要がなくなった。あいつを利用して彼を…藤崎龍二を再び絶望へ……」



女性はそう言った。

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