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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

魔王を滅ぼせない私たちの使命

作者: 生涯人

 習作です。

 色々と拙い所があると思いますが、読んで、どこがダメだったか、どこが良かったか、設定について知りたい等、言ってくれれば幸いです。


「光の矢!」


 魔王という存在が私の世界にはいる。

 そして、その魔王は人類の脅威であり、魔王を倒すのは勇者以外には出来ないとされている。

 だからこそ、私は今勇者を無傷で魔王まで届けるために戦っている。


「ジンさん、そろそろ俺たちも……」

「いえ、私はまだまだ大丈夫です。勇者の皆さんは気にしないで付いてきて下さい。こっちです」


 異世界から召喚された勇者たち、戦いとは無縁で心優しい四人の少年少女達。

 彼らをこの世界へと呼び寄せたのは今でも私は間違いだと思っている。

 だけど、もう後が無かったのだ。と心の中で何度も言い訳をしつつ彼らの道を切り開く。


「有象無象が邪魔をするなぁ!」


 迫り来る魔物は全て私の魔法で、剣で殺し、攻撃は私に向けての攻撃以外は私の結界によって防がれる。

 流石の私も移動して五人を守ってくれる結界は作れなかった。

 更に言うとこの結界は中からの攻撃も防ぐので必然的に誰か一人は外に出て道を切り開く必要がある。


「炎の嵐!」


 少しばかり数の多い敵を広範囲の魔法でなぎ払う。

 そして、丁度その時に結界やこれまで使っていた魔法のしわ寄せとも言える負荷が自分に襲い掛かり血反吐を吐いてしまう。


「ジンさん!」


 案の定、それを見た勇者たちは黙っておらず、結界から出てきて自分たちも応戦しようとするが。


「私のことは気にするな!」


 私は大声で叫ぶ事によってそれを止めた。


「私は大丈夫です。敵ももう居ません。先へ進みましょう、こっちから魔王の魔力を感じます」


 そして、無理矢理彼らの進む道を教え、その先陣を切る。

 彼らの腑に落ちない顔を、私が傷つく度に悲しい顔をするのを見て自分の力不足を、不甲斐なさを恥じる。

 しかし、それでも時間は待ってくれないのだ。

 この機会を逃せば多分人類は二度と魔王に辿り着くことすら出来ないだろう。

 だからこそ、万全な状態で彼らを送る必要があるのだ。勝利を確実の物にする為に。


 ―――


「着きました。この扉の奥に居ます」


 息も絶え絶え、身体はそこら中傷だらけ、右目も潰れた。

吐き気も先ほどから止まることを知らない。

 だけども、ここまで送り届けることが出来た勇者たちには傷は一つも無い。

 私は自分の使命を達成することが出来たのだ。

 後は、後ろから来る魔王への援軍を食い止めるのみ!


「ジンさん、死なないで下さいよ。俺たちが勝つまで絶対に! 死なないで下さいよ!」

「……絶対に勝つ」

「私たちならやれます。でなければ、ここまでお膳立てしてくれた皆さんに申し訳が立たないです」

「当ったり前よ! 人類の底力見せてやろうじゃない!」


 最後はしかと、「私のことは気にするな」という私の言葉を聞いて魔王の元へ向かっていった四人。

 その背中を見て、まだ小さな背中になんて重い物を背負わせてしまったのだろうかという悔しさ、そしてそれを物ともせず歩いていく彼らの強さに頼もしさを覚える。

 彼らが扉を抜けるとその扉を閉め、凍結させる。

 これで、もし私が死んだとしても開けるのに手こずると、そして開ける頃には魔王は倒されているだろうと祈りを込めた。


 扉を凍結させて、数分もしない内に追っ手の魔物や魔人共が追いつき私の目の前に立つ。

 私は腰の剣を抜き、魔力を練り始める。


「ここから先は誰も通さない」

「死に掛けの人間一人に何が出来る!」


 そう言って襲い掛かる魔人の首を切り伏せ、炎の矢で身体と頭を焼く。


「こんなでも彼らが来る前は人類最強だったのだ。なめるなよ」


 だけども、数が厄介だ。

 こいつらはこれからどんどん増えていく。

 全部殺すのは正直自信が無い……。だが、私にはやるしかない。

 勇者たちに言われてしまったのだ「死ぬな」と、ならば死なないで生き延び、尚且つ防ぎきることこそが私の使命。

 使命を果たすことこそ、私の人生における最重要事項だから。


 ―――


 どれ程時間が経っただろう。

 もう立つのも限界だ。

 右腕が使い物にならなくなり、左腕もなんとか力を入れることが出来る程度。

 しかし、その左腕も剣を立てて、自分が立つのに使っている。


「人間の癖に良くぞここまで持った」


 多くの魔物と魔人の死骸を前に私を賞賛したのは一体の上級魔人。

 流石に今の状態で上級魔人の相手は出来ない。


「それに、全く予想できなかったタイミングでの奇襲。おかげでここに来るのに手間取った」


 この口ぶりからして恐らくは幹部クラスの奴らであろう。

 だけども、私がやることは変わらない。


「人間、名は? と聞きたいところだが、名乗るだけの体力も無さそうだ」


 こちらへ歩いてくる魔人に対し、敵意を見せ、魔力を練り始める。


「中々の根性だ。と言いたい所だが、残念なことに私に戦う理由は無い」


 両手を挙げ、近づいてくる魔人。

 戦う理由が無いとは一体どういうことだ?


「その疲労のせいか気付いてないのだろうが、既に今代の魔王は倒れた。私はそれを自分の目で確認するために来たのだよ」


 魔王が、倒れた?

 言われて改めて近くの魔力を感じる。

 よく知った四つの魔力、これは勇者たちのだ。そして、目の前の魔人のものと思わしき魔力以外を感じない。

 やった……。ついに人類は勝ったのだ!

 私は感極まり、糸が切れた人形の様にその場に倒れ、そして何時の間にか気を失っていた。


 ―――


 魔王討伐してから数ヶ月。

 国の文献にも残すように伝えたが、念には念をということで自分の手記としてここにジン・アルフレイドが残す。

 国の方も復興が順調に進んで、平和を感じられる日々が続いていた。

 勇者の少年少女達は自分の世界に無事帰すことに成功したが、向こうでどうなっているかが今の私の心配事の一つである。

 向こうで元気に過ごしていると祈るしか私に出来ないのが申し訳ない。


 私は魔王軍との戦争が終わったことと、右目右腕を失ったことで右側が完全に死角になったこともあり、聖騎士団を抜けて一般人として復興の手伝いをしている。

 左腕しか無いものの持ち運びは出来るし、現場を見て何が足りないか何が必要かを上に伝えることは出来る。


 そして、一つ気がかりがあるとすれば魔王が倒れたと私に言ったあの上級魔人のことである。

 魔王が滅ぶとき、全ての魔物、魔族、魔人が滅ぶとされているがあの魔人はそんなの微塵にも感じさせなかった。

 実は魔王は生きている……等と考えもしたものだが、あれ以来魔物や魔族、魔人が人間の前から姿を見せなくなったのも事実、恐らくは魔王は死んではいるが滅んでは居ない。

 それに、魔王は私たち人間と同じ何代も何代も出てきているという言い伝えや文献が残っているのは皆が知っていること。

 なので、私はこの二つを組み合わせ、魔王に一つの核がと思われる物があって、それをどうにかして滅ぼさなければ魔王はまたやってくる仮定した。

 既に魔王を殺した今代はそれを確かめる術は無く、確かめるにしてもどうすれば良いかすら、見当もつかない。

 丸投げであるが、これは次世代に任せるしか我々には無さそうだ。


 絶滅寸前の所でとはいえ、魔王を倒したこの時代の私たちが出来ることは次世代で魔王を滅ぼすための踏み台になる事、次世代の為に力を蓄えるだろう。

 そして、それが今の私たちの使命だ。

 願わくば、この手記が次世代を勝利に導かんことを。


 

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― 新着の感想 ―
[一言] 王道路線だなぁ~と思いながら、どんなオチが付くのかとまったり読ませていただきました。 そしたらなるほど、ひねくれていない落とし所って良いものですね。現地人側の苦労が・・・。 面白かったです、…
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