ドッグファイト
danger zone聴きながらお楽しみください。何か面白くなると思います。
F-14にヘルメットディスプレイとかミサイルにこれおかしいとか色々ありますが仕様です。
――アラビア海 南方 アメリカ海軍空母艦隊・・・
砂漠の大地からはるか南。黒海の退け払うかのように前進するイージス艦とミサイル巡洋艦や補給艦が随伴し、ニミッツ級の原子力空母がいた。
民間派遣軍のミトが自前で購入しそれを自らの指揮で行動させていたと思いきや。
「うわ今時F-14かよ」
「見てみろF-14だぜ。懐かしいな」
カタパルト・オフィサーと言う戦争映画にいる変なポーズを取って戦闘機を発進させる連中らが、F-14と言う艦載機を見て冷やかしていた。
甲板に並んでいるのはF/A-18と言う戦闘爆撃機で今でも現役であるが、そのなかに可変翼機が混じっているので浮いてるのだ。
「むう・・」
火のついたラークのタバコを口に不機嫌そうなミト。
黒色のパイロットヘルメットを脇にかかえている。
かわいらしい黒猫のシルエットは彼女の叔母である"ヘルキャット"からきていた。
空母を自費で変えるほどの会社ではないので、結局はどこの艦に戦闘機ごとお邪魔しなくてはならない。
正規軍の弾除けとして雇われた身にもなりながら、馬鹿にされるミトは内心悔しくて仕方のである。
「こっちはお前ら10人分の弾除けとして雇われたんだ!感謝しろってんだ!」
カタパルト・オフィサーにぶちキレたミトは吸い途中のタバコを投げ捨て艦内へ。
その連中らは他人事のように聞きながら口をポカーンとあける。まるで誰に言ってるんだと。
薄暗い艦内の喫煙所。古い自販機前に立って、ポケットから2$コインを投入。
直毛を束ねた髪を揺らしながら、落下で凹んだコカコーラ2本を手にしてテーブル前置く。
カシュッと言う炭酸が弾ける音と飲み口から溢れる泡。
甘ったるく冷えたコーラの液がミトの口と喉を潤し、全身を涼んでくれる。
「ああ美味い・・」
こうしている間にも戦闘指揮所内では敵をレーダーで捕らえたので内部は慌しくなっている。
ディスプレイに映し出される敵マーカーは緑で表記される。
「空母からの距離、100マイル(大体160km)...」
レーダー監視員がつぶやく。
無線から戦闘指揮所内に、
『国籍不明の戦闘機に襲われている!』
「了解。すぐそっちにアレを向かわせる」
圏内に侵入した敵機を迎撃すべく艦全体に警報が鳴り響いた。
スクランブルである。
ミトは驚きのあまりパイロットスーツにコーラを溢してしまうが拭く暇もないので、すぐに甲板へ。
飲みかけのコーラと未開封の缶がテーブルに置かれ、水滴が静かに垂れ落ちる。
黒猫シルエットのF-14の操縦席に乗りると後方のレーダーオペレーターをするミトの友人フランカも同乗した。
現代戦闘機にありがちな後方席はレーダーの監視と武装管制を主に行っている。
今回のフォーメーション、1番機がエイミー、2番機がミトと2機一個小隊。
1番機のF-14がカタパルト発進が完了する。
カタパルト・オフィサーは"止まれ"の合図で両手を上げた。
轟音と共に射出されるF-14はカタパルトの力で、黒海の大空へと羽ばたいていく。
だがミトは不機嫌だ。
なぜなら無線から"待機せよ"の命令がだされたからである。
「クソ..」
「まあまあ、そんなに怒らないで」
「あいつ一人で出動したんだ。何を考えているんだ...!」
空母から発進したエイミーのF-14は可変翼でスマートな形に変化していた。
アフターバーナー全開に、指揮所からくる無線や機内レーダーを確認しながら位置を把握すると、エイミーの目に6機の機影が目に入る。
「あれね!」
紛れもなく敵機である。ダークブルーに混じる銀翼は味方だと一目でわかった。
(ダークブルーのMIG29を6機相手によくもまあ生きていること..)
エイミーはニヤっと微笑んでいた。
だが同席のレーダーオペレーターは顔色は突然顔を変化させ、
『ブレイクブレイク!』
と慌てた声でエイミーに伝える。
ロックオンの警告音にエイミーは操縦桿いっぱいに倒す。
F-14は円を描くように急旋回。
エイミーはエンジン出力を抑えて機首を持ち上げながら機体を左回転。
MIG29は急なロースピードのF-14の前に飛び出してしまうと、エイミーは「フォックス2!フォックス2!」と酸素マスク越しからレーダー管制員に伝えた。
F-14のHUDの光学照準はMIG29を捕らえる。レーダー員のミサイル発射ボタンが押されると、翼下からAIM-9(サイドワインダー)が発射された。
AIM-9は回避しようとするMIG29を追尾すると敵機はあっけなく空中で爆砕。
残り5機。
マッハの空間で戦う中で酸素マスクに呼吸音が反響される。
特にエイミーの体力の消耗が激しいからだ。
(これは無理ね・・・!逃げるので精一杯・・・!)
指揮所内でもエイミー機が危険だとレーダーの状況でもわかっていた。
「P.D.M社の2番機を発進させろ、あの曲も流してな」
指揮所のトップの男が全隊に指示をだした。
甲板のカタパルトで待機するミトのF-14内からも『2番機発進準備』と告げられた途端、
「ん・・?」
大音量で聞覚えのある音楽が流れ始め、カタパルトオフィサーや整備士、待機中のパイロット達はノリノリの様子にミトは違和感を覚える。
すると機内から無線を通じて流れ始めた。
トップガンのテーマ曲、denger zoneである。
「クソ、舐めやがって・・。遊びでやってんじゃないんだ!」
「まあまあ落ち着いて・・・」
フランカは内心ノリ気味である。
デンジャーゾーンの前奏からすでにスロットルは全開。いつでも発進できる体制にカタパルト・オフィサーから"発進"のポーズと共に、カタパルト射出されると青いアフターバーナーを噴かしてF-14をは海上へと羽ばたいた。
静かに揺られて風に流される白煙だけが甲板に残っていて、カタパルト・オフィサーらはキレているミトを見届けた。
空を切り裂いて上昇するF-14はフルスロットルでエイミーのいる空戦空域までいち早くたどり着こうと、彼女自身、また愛機も必死であった。
両翼4発のAIM-9ミサイル、胴体したに2発の空対空ミサイルのAIM-7、同じくAIM-54が装備されていた。
ラジオのように流れるテーマ曲はすでに1番を終えて2番に突入していた。
うっとおしくて仕方ない。切ろうにも切れない。無線を通じているからコールサインを取れずに連携が崩れる恐れがあるからだ。
高度7000m。
2番機に7機の機影がディスプレイに映る。
テーマ曲のさびを耳にしながら、ミトはエイミーを助けるべく敵機に急激に接近。
HUDのロックオンカーソルが1番機後方のSU-27に捉えられ、緑から赤に変化。
「フォックス2、フォックス2...」
F-14からAIM-9が放たれた。
一直線上にのびるミサイルは回避する余裕を与えずに敵機を撃墜。
後方の敵機の撃墜に気づいたエイミーのF-14はひとまず急旋回。
ミトは後方に敵が回り込まれ、機体を横転させながら減速すると相手も同じ動作で円を描いていく。
「ミト、後ろ!」
警告音に焦るフランカは後方を見続けながらミトに言う。
ミトの操るF-14と敵機のMIG29はダンスのように回り続けていると、真下からエイミーの操るF-14が敵の腹をつくようにAIM-7を撃ちはなった。
フランカは火玉を目にままポカンとなり、一体何が起こったのかわからない顔をしているとレーダーからまた1機敵消失。
「グッキル、グッキル」
エイミーを褒めるミトは操縦桿を引いて機体を上昇させながら相手をドッグファイトに持ち込んだ。
(残り3機・・・!)
両者が同じ数、3対3。各自が1機ずつ襲いかかると、その中でもっともキルマークの多いMIG29がミトのF-14の真後ろに張り付いた。
相手から見るF-14は容易いものだと思い込んでいる。
両機はアフターバーナーの黒煙を引きながら旋回する。
フランカはヘルメットディスプレイを起動させると、真上にいる敵機に首を向けてロックオンした。
だがこれではミサイルが撃てない。
「ミト、何とかならない!?」
荒い呼吸と共にミトに言うと「もう少し耐えて!」と言いF-14をMIG29を機首から縦横の60度範囲内に入れようと必死だった。
だがMIG29はどんどんF-14の後方へと回りこんでしまう。
旋回戦に勝てずともS字飛行をしながら不規則な飛行でF-14はフレアを撒き散らすと、ミトはエアブレーキを作動、減速した機首を持ち上げる。
MIG29のパイロットは衝突寸前を恐れてミトのF-14を真上を通過。
即座に減速した機体を持ち直しオーバーシュートしたMIG29を追い始めた。
だがヘルメットディスプレイにすでに補足されている。
60度範囲内のMIG29にロックオンカーソルが重なった。
「フォックス3、フォックス3!」
空対空ミサイルのAIM-54が撃たれるが、MIG29から火の玉を撒いて、ミサイルは標的に追尾しないままあらぬ方向へと消えていく。
F-14の機銃からガトリング弾が撃ちまくられ、MIG29はエルロンロールしながら宙返りした。
F-14も後を追う。
ミトは視界が暗くなるのに耐えながらスロットルを絞った。
そして宙返りは完全にミトが後ろを取ると「フォックス2、ファイア!」フランカのミサイル発射ボタンが押されて、炎を噴いたAIM-9がMIG29の後を追い始め、射出されるフレアも虚しく敵機は撃墜された。
「グッキル!グッキル!」
「フー!やったぜ!」
すでに敵機の姿は見えておらず、助けられたF/A-18とF-14をつれて母艦へと還ろうとするミトの姿は、どこかと嬉しそうな表情をし、例のテーマ曲はとまることなく繰り返し再生されていた。
母艦に着艦後、甲板に集まるパイロットの歓喜を背中にミトは飲みかけのコーラを飲もうと喫煙所に向かった。
パイロットヘルメットを脇に抱えながら・・。
「あれ、ない・・・」
誰かが捨てたのか、飲んだのか。薄暗い喫煙所のテーブルに飲みかけのコーラと未開封のコーラがなかったのである。
エイミーは知らない顔で自販機にコインを入れた。
スプライトを1本、そして缶コーラを1本・・、ファンタのオレンジを1本と続けさまに購入しながら、
「ねえ二人」
とコーラを一本ミトに投げ渡し、フランカにスプライトを。
「今日のお礼・・だから」
と言いつつ背中をそっぽ向く。格好つけたことが恥ずかしかったのだろう。
「あ、うんありがとう」
「エイミーが珍しいなぁ」
二人は言う。
空戦で乾いた喉を潤すジュースは格別に美味いとミトは確信し、終わりの一本にラッキーストライクを咥えてライターを取り出した。