腐敗した弓道部
「おい、一年!!なんでぼーっと突っ立ってんの?暇なら差し入れでも買ってこいよ!」
「ごっ、ごめんなさい……」
「『ごめん』じゃなくて『すみません』だろ?そんなことも分かんないの?ほんっと今年の一年は質が悪いんだから」
吐き捨てるように言うと、三年の先輩は近くにいた子を突き飛ばした。
その反動で、その子は弓立にぶつかり、立てかけられていた弓が倒れて床を打つ。
乾いた木の音が道場に響いた。
「は?何やってんの。弓が倒れたじゃん。これの総額、分かってる?あーあ、弁償してもらわないとねぇ」
怯えた一年生は顔を真っ青にしながら、
「すみません、すみません……」
と繰り返し震えている。
……これは、さすがに見過ごせない。
火の粉が自分に降りかかるのは承知の上だ。
「申し訳ありません。悪気があったわけではないと思います。どうか、許してあげてください」
私がそう言った瞬間、先輩たちの視線が一斉にこちらへ向いた。
「あんた……水元だっけ?偉そうに何言っちゃってんの」
「そうそう、中学から弓道やってるんだっけ?へぇ〜すごいじゃん」
にたりとした笑み。
だがその口元は、次の瞬間には毒を含んでいた。
「でもさぁ……調子乗んなよ、ブス」
低く響く罵倒とともに、弽をした手で私の腹部を思い切り打たれた。
「……っ」
鈍い痛みが走る。
けれど、顔に出すのは癪だった。
「お気になさらず。大丈夫ですので」
私がそう口にしたとき、先輩たちの顔が怒りで真っ赤に染まる。
「はぁ?何その態度!クソブスが、てめぇ――」
「はいはーい、一旦おーわり。顧問が来るから、練習再開ー!」
間の抜けた声で部長が制止する。
その場の空気はひどく歪んだまま、再び矢が番えられていった。




