どっちですか?
「皆様の目が節穴だってことはよく解りましたが、わざわざそれを周知しなくてもよろしかったのでは? 今後に差し支えるかと思いますが」
義妹を虐めているだなんだとイチャモンをつけられている最中、不意に前世の記憶が流れ込んできた。
異世界転生や悪役令嬢ものが流行していたが、さらっとしか見ていなかったため、流石に『これはあの作品で、私は悪役令嬢の○△ね!!』とはいかなかったが、とにかく私のおかれている状況がおかしいことだけは解った。
だってさぁ。義妹、めっさツヤツヤしてんのよ?
ちゃんとケアされてるのもあるだろうけど、髪の毛も爪もツヤツヤ。
ヒロイン補整とかの前に栄養行き渡りまくってるわけ。
義妹の主張するように食事抜かれたり、侍女がつけられてなかったら、こんなツヤツヤになんねーから。
片や私の髪の毛はパサパサで、爪に至っては縦線が入ってたり二枚爪になってるところもある。
これって、絶対私の方が虐待されてるっていうか、まぁとにかく兵糧攻めされてるのは確実じゃない?
だって。
私、何等かの事情で断食してるとかじゃないもん。
手首とか見てみなよ。
義妹と比べたら私のなんて骨だからね?
ていうか、義妹が本当に優しい子なら、私のこの状況に疑問を持って然るべきだし、改善させると思うのよ。
気付いてない時点でお察しなわけ。
あと、このドレスね。
流行り廃りはともかく、サイズ合ってないでしょ?
こんなでも貴族だから、やっぱ嘗められたら終わりなのよ。
新しいドレスを仕立てる財力もないのかなんて思われたくないから、借金してでも仕立てるか、親の時代に流行ったのを着る場合でも、そうと解らないくらいにはリメイクするの。
義妹が着てるドレスは流行りのものだし、サイズも義妹に合わせて作られてるのが一目で解るよね?
うん。
じゃぁ、それをふまえて私のと比べてみようか。
さっきも言ったけど、サイズは合ってないし、流行りにも乗れてないでしょ?
――というようなことを、ついつい大声で言ってしまった。
仕方ないよね。
こうでもしないと解ってもらえないんだからさぁ。
「……じゃあ、改めて聞きますね。
虐げられているのは義妹ですか?
それとも私ですか?」
「は? 聞こえませんよ。
さっきみたいに、もっと大きな声で。
ちゃんと皆に聞こえるように言わないとダメじゃないですか」
「もう一回聞きますよ。
ロクに食事も貰えないくらいに虐げられているのはどっちですか?」