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転生モブが小さな幸せ見つけるための3つの法則  作者: 林檎とエリンギ
3rd Theory : 取るに足らない事件
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Chapter 014_大きな木の下で

「着い…」


「思い出の場所」…ベルナールが思い至り辿り着いたのは

”プルーツリーの狩場” であった。


昼間であればプルーナッツが跳び回っているが、今は夜。

ブルーツリーを中心とした広間になっている”その場所”は

月光に照らし出されて美しく、幻想的ですらあった。



「…っ」「ひっ!」


しかし、

ベルナールとベリーチェの2人の瞳は”そんなモノ”を

捉えなかった。


美しい…とか、幻想的…なんて言葉

2人の脳裏には()ぎらなかった。



「かっ…はっ…」


レオンは確かにソコにいた。

大きな木の前で膝立ちとなり、袈裟斬りにされた傷口から血を溢れさせながら…




「く…な…」


来るな!


光を失いつつある瞳に映った”かけがえのない仲間”の姿に

レオンは”そう”伝えたかった。それは理屈なしの友情であり

理屈なしの本能だった。


しかし、彼の掠れた声は



「レ…オ?ど、どうした…?」


…届かなかった。




「レオ!大丈夫か!」


レオンの正面には、ひとつの小さな影があった。


月光が無ければ見つけられなかったであろう、

小さな小さな影だった。



『!?』


無言のソレは、背後から現れたベルナールに驚いて『ピョン!』と跳ね。体全部を使ってレオン、ベルナール、そしてベリーチェを交互に…繰り返し…視界に入れた。


…蜘蛛が恐怖で小刻みに震えていたコトに3人が気付くことはなかった………



「…っッツ!!」


…直後。



「ギャアァァーーーッッッ!!!」


ベリーチェは金切り声に近い悲鳴を上げた。



「っ!!…べ、ベリーチェちゃん!?」


レオンの惨事に気付いたばかりのベルナールは

ベリーチェの声に心底驚いた。


一方のベリーチェは

心の器に流れ込んできた恐怖と後悔と絶望の奔流に()まれ

精神を決壊させた。



「あ゛っ!あ゛あ゛!!あ゛あ゛ああぁぁーー!!」


…あの時。そう、”アノ時”だ。

あの時、ベリーチェの生存本能は深層心理の奥の奥…

海の底の鍵付きの箱に納められた貝殻のその中に

致死の恐怖を閉じ込めた。


しかし、彼女の心は無茶をし過ぎた。

存在しない海に存在しない箱を作り出し、無理矢理に貝殻を開けたから

歪に()れて、曲がって、折れて…


あろうことか、

秘密への「近道」を作ってしまった。



「!?!?べ、ベリーチェちゃ…」


ベルナールは理由(わけ)を知らなかった。


ベリーチェがベルナールに助けられる前…

セラピムに襲われるもっと前…


下腹部に受けた致命傷を”誰が与えたのか”を



『!』


災害級魔物【ネビュラ】は

ルボワの森の新たな【(ヌシ)】だ。


見た目は漆黒の小さな…手の平に乗るほどの…蜘蛛である。


性格は臆病。

ほかの動物を襲うことは極めて稀(…そもそも草食だと考えられる)で

襲われない限り反撃しない。



「イヤッ!いやいやいやいやイヤイヤイヤアアァァーーッッッ!!!」

『ダガァンッ!!ダアァンッ!!』


問題はネビュラの容姿と能力だ。


強い魔物は威圧的な容姿をし、積極的に攻撃をする種が多いが

ネビュラは小さくて臆病。


…主であると気付かず、

舐めてかかって反撃される冒険者が後を絶たない。



『!?』


草食であるネビュラが森を治める主となり、

冒険者ギルドが【災害級】をつけたのには、もちろん理由がある。

それは、この魔物が宿している唯一無二の強力な能力のおかげだ。


能力の名は【星巣(ネビュラ)


ネビュラに”ある程度”接近すると攻撃…いや、攻撃だけでなく。

蜘蛛に被害を与える一切を”反射”する。

ベリーチェが乱射した拳銃の弾も、その幾つかが…



「危ない!!」

「キャアァーー!!」


ベリーチェと、そしてベルナールを掠めた



『…』


これまで確認された中でネビュラが反射しなかった物事(ものごと)は存在しない。


反則と言っていい能力ではあるが、しかし、

ネビュラには”身を守る”以外で、この能力を使う理由がない。

今回も”そう”だった。

ネビュラはただ、自身に許された力でもって、

”身を守ろう”としただけだった…



「ベリーチェちゃん()めるんだ!」


ベリーチェの銃弾が自分とベリーチェ…そして、負傷してレオンに

当たるのを警戒したベルナールは銃を持つ彼女の腕を取り上げ、叫んだ



「っ!!!」


その行動の意図はしかし、ベリーチェには理解”できなかった”



「あっ…あっ、あ、アアァァ嗚呼゛あ゛ぁ゛ー!!」


私に残された唯一の力を奪われた!?

信じてたのに…好きだったのに!

彼も私から「奪う」ヒトだった!!


イヤ!

コワイ!

タスケテ!


ダレカ!!


断続的なフラッシュバック

強烈な不安感

痛みと苦しみの記憶

死の恐怖

そして絶望感が心を駆け巡り

パニックに陥っていたベリーチェは

言葉も理屈も理解できなかった。

状況判断もできなかった。

想いも届かなかった。

思いも役には立たなかった。


絶望に絶望を掛け算したベリーチェの心は叫んだ!「ニゲロ!」


ベルナールの腕を力いっぱい振り解いたベリーチェは

絶叫を上げ走った



「ベリーチェちゃん!?ドコへ…」


ドコへ?

そんなの、ベリーチェにも分からなかった



「ヤ゛ア゛ア゛あ゛あ゛ーーー!!!」


ダンジョンという場所も

夜という時間も

怪我をしたレオンのコトも

守ろうとしてくれていたベルナールのコトも


混乱の極みに達し、理性を突破したベリーチェには

関係の無いコトだった。



「ァ゛ぁ゛ーー………」


ただ走った。

ココでないドコか…恐怖と後悔と絶望の無い


【夜】へ






「…」


ベリーチェに何もしてやれなかったベルナールは

ただ、唖然としていた…



「っ…」


しかし数秒後

我に返り、



「…そ、そうだレオは!?」


まず、レオンを見た。



『ドサッ…』


ちょうどその時、膝立ちだったレオンの影が横に倒れた



「レオ!?」


一刻の猶予もない。

折よく、”(ヌシ)”の影もなくなっている…



「けど…」


逡巡(しゅんじゅん)した。


振り返ってベリーチェを追うか?

レオンを助け起こすか…



「…っ」


…2秒後。

目蓋と拳を強く強く固く閉めたベルナールは



「レオ!!!」





















「…レオ?」


「お、おい…おい!!」



「おい!!」




「血…こ、こんなに!?お、おい…おい、オイ!おイ!!」


呼びかけても、肩を叩いても、抱き起こしても返事がないレオンに





「レオーーーッ!」



ベルナールの頭に”ある言葉”が思い浮かんだその時



『ダガァーーーンッ!!!』


森の奥から…



「っっっ………」


…一発の。

乾いた銃声が


………

……





















挿絵(By みてみん)

 ベリーチェ 【後ろを向いていた、あの頃】

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