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転生モブが小さな幸せ見つけるための3つの法則  作者: 林檎とエリンギ
3rd Theory : 取るに足らない事件
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Chapter 012_積み上げられたページたち

「そんな…」


翌日

夕方…夜のラッシュの少し前



「…ごめんなさい。」「ゴメンねお兄ちゃん…」

「私とお姉様、ソレにミーリアは買い物に行っていて、宿にはスタカッティシモ様しか居なかったの。その間に…」


前日”あんなコト”があったせいで、なし崩し的に

冒険も休みとなったこの日。


ベルナールは、特訓のために朝からベリーチェを連れて森に入っていた。レオンも誘ったのだが、彼は付いてこなかった。メルヴィとアレクセイの2人のことは

そもそも誘いもしなかった…



「貴女達が謝ることじゃないでしょ?」

「でも…」「だって…」

「まったく…」


宿に帰ってきたベルナールとベリーチェを迎えたのは

済まなそうな顔のリチアとミーリア。

腕を組んで不機嫌そうなセルディア。

そして、無表情のスタカッティシモちゃんっぽいの だった。



「手紙1つ残して居なくなるなんて、勝手な人達です!!」


勝手…確かに勝手なコトだった。

手紙1つ残しただけで、ひと言も告げずに脱退したコトも。

(偶然か?故意かは分からないが…)メンバーも姉妹も居ない

時間に宿を出たコトも

そのまま飛空船に乗って飛び去ってしまったコトも

2人の身勝手だ。しかし…



「…」


メルヴィとアレクセイ…先を急ぐ2人にとって

残された3人…ベルナールとレオンと、そしてベリーチェが

“足手まとい”であるコトは、疑いようの無い事情だった。


昨日の失敗の後だったから多少感情的になっていたコトは否めない。

でも、ひと晩2人で話し合い、冷静に…目を閉じて深呼吸してから…考えても、答えは変わらなかった



「2人の名誉のために言っておくけど…。みんなを”待たずに行きなさい”って言ったのは私よ。」


「スタカッティシモ様!?」

「そんな…」

「ど、どうして」


「飛空船の時間が迫っていたし…それに、2人の実力はこの(ルボワ)の適性レベルを超えているわ。もっと上位の…適切な場所(ダンジョン)で活躍すべきよ。いつまでもココに引き留めておくのは世界の損失。ソレが原因で助けられる命が失われてしまうかもしれないコトを忘れないで。【魔法使いよ。唱えよ。】…そうでしょ?」


「「「「「…」」」」」


2人の決意は硬く、そして合理的だった。

説得しても無駄であったろう。そしてそれ以上に。

若く、可能性のある2人の歩みを止めるコトなど(おかあさま)は望んでいない…そう、判断した司書妖精は2人が「自分で決心できる」程度の言葉を投げかけた。


「…夜の魔女なら、きっとこう言うわ。「・・・思うがままに唱えなさい。」って…」



…それは真理だった。






「せ、せめて。”ひと言”くらいあっても…」

「手紙を読みなさい。2人が限られた時間で精一杯書いたものよ。」

「うっ…」


ミーリアの言葉も…



「事情があったとしても、身勝手なのは変わりません…」

「…そうね。でも、だからこそ人は成長できるんじゃないかしら?今よりもっと強くなりたいと願うから…だから人は強くなれる。」

「でも………」


…リチアの言葉も



「きっと、お母様も同じコトをしたわ…そうでしょ?」

「「…」」


残される者達の想いも。残して行く者の想いも。

全て(はかり)にのせて、その上で”っぽいの”はメルヴィとアレクセイの背中を押した。

ソレこそが自分に与えられた使命だと知っているからだ。


悔いて俯いたメルヴィを慰めて前を向かせ、

責任の全てを背負おうと考えていたアレクセイの荷物を緩く解いた。


私情よりも紙上を重んじ、人肌より冷たい本を愛する司書妖精にしかできない選択だった。



「2人は前を向いたわ…」


ここは冒険者の街だ。

出逢いと同じ数だけ離別もある。

その出逢いと別れの中には”大事な人”も含まれるかもしれない。


出逢いも別れも無かったら物語が始まらない。

その喜びも悲しみも…愛も後悔も生きている限り避けられない。


お母様の大事な娘と、その友人に強くなってもらいたくて…



「…みんなは、どうする?」


…だから、司書妖精は動いたのだ。

綴られし世界で最強の力を持つ「言葉」を使って






「「「「「…」」」」」


司書妖精に言われた5人は悔しさに苛まれながらも下を向くことしかできなかった。


分かってる…そう、理屈は解っているんだ。

でも、心が判ってくれないんだ…



「っ…」


中でもベルナールは、言葉こそ無かったが一番悔しがっていた。


メルヴィとアレクセイに失望されたコトが、

離別のキッカケを作ってしまったコトが、

ベリーチェに無理をさせたコトが、

姉妹に悲しい思いをさせてしまったコトが、

司書妖精に言わせてしまったコトが、


なにより、

何もできなかった自分が…悔しかった



「そ、そういえば!?」


そんなベルナールの頭に過ったのは…



「…レオンは!?」


…もう1人の仲間のコトだった。



「「「「…?」」」」


レオンは相変わらず別の宿に泊まっており、朝になるとやって来る。

今日も来ると思っていたのだけれど…来なかったため、ベルナールは仕方なくベリーチェと2人で森に向かったのだった。

街に買い物に出ていた3姉妹も当然、彼の姿を見ていない。

そして



「私も見てないわ…今日は地鶏亭かしら?」


1日中この宿にいた”っぽいの”も見ていないとなると、

彼はまだ自分の宿にいるのだろう…



「そ、そう…ですよね。…オ、オレ。レオンに説明に行ってきます!」


そう言ったベルナールの…



「もうちょっと落ち着いてからの方が良いんじゃないかしら?」


…焦った様子に不安を感じた”っぽいの”は声をかけたが



「仲間ですから!」


そう叫んで、脱いだばかりの外套を再び羽織ったベルナールに



「…そう。気をつけてね」


それ以上、何も言わないことに決めたのだった。

姉妹もまた…



「い、行ってらっしゃいお兄ちゃん…」

「気をつけてくださいね…」

「…夕飯までに帰って来なさい」


…と、彼を止めることなどできず

不安な眼で彼を送り出した。


ただ1人…



「まっ、待ってくださいベルナールさ〜ん〜…」


ベリーチェだけが、ベルナールの後を追った…


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