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転生モブが小さな幸せ見つけるための3つの法則  作者: 林檎とエリンギ
3rd Theory : 取るに足らない事件
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Chapter 008_愛と勇気と希望と懸念

「お世話になりました!」


2ヶ月後…冬も間近の

北風の強い日



「気をつけるのよ?」

「定期検診を忘れちゃダメですよ!?」

「必ず薬を飲むのよ!」


外での買い物や外泊などのリハビリを経たベリーチェは

”いったん”退院することとなった。


“いったん”という言葉には「完治したワケじゃない」という

意味が含まれており、定期検診と投薬は欠かせない。


ケアチームとしては「早すぎる」と言うのが率直な意見だが

本人が強く・強く望んだため。止められなかった



「わ、分かってますy…あっ!ベルナールさん!」

「おはようございます。ベリーチェちゃん。」

「えへへ…はい!おはようございます!!」


…今のベリーチェは夜の光に集まる虫たちと同じ。

1筋の光に(すが)り全力で翅を羽ばたかせ、

辛うじて空を飛んでいる。


光が見えなくなったらどうする?

横風が吹いたらどうする?

…そんなコトは考えていない。


地に落ちた彼女の心を満たしているのは

愛と勇気と希望だけ…



「…シャルロッテさんとマリーさん。レーチェルさんとラベリィ様も。おはようございます。」


「…えぇ。」

「…」

「おはようございます」


ケアチームの思いは複雑だった…

本当なら、まだベリーチェを入院させておきたかったが

月天使様による「インフォームドコンセント」の教えが

術者たちの口を塞がせた。


「例えリスクがあっても、患者の意志を第一に尊重する…」


…果たしてその教えは。

恋心に支配されて自分を顧みることも無く

自由落下している乙女に適応していいモノなのだろうか…?



『…』


患者の回復に合わせて”自ら身を引く”コトができるように…”執着しない”ように…設計されているラベリィは人間が感じるような”寂しさ”は感じないし、術者たちが感じているような”不安”も殆ど感じていなかった。

母の教えを正確に理解し、疑う事のないラベリィは門出を喜ぶベリーチェを静かに温かく見守っていた。

ベリーチェの容態は完全でなく不安が残るのは間違いない。また、彼女の背中を押したのは移ろいやすく、ヒトを天にも地にも叩きつける激情の恋心であるコトも理解している。



うまくいかないかもしれない。


信じた人に裏切られ、救いようの無い底の底まで

落ちてしまうかもしれない


2年かけて築き上げた幼気いたいけ)な心も全部

台無しにしてしまうかもしれない…




「…ラベリィちゃん!」

『…なぁに?』


…それでも。

コレが彼女の”物語”であるのなら…



「今までありがとう!私、頑張るね!またねっ!」



天使妖精ラベリィ)は。



『えぇ。無理せず頑張るのよ』

「ふふふっ!…うん!頑張るね!」


コレが今生の別れと知りながら。

彼女の顔すら思い出せなくなる事を理解していながら。

それでも、なお…



『応援してる』

「うん!」


涙1つ流せない水晶の瞳で

微笑んでいた…



………

……





















……

………



「…こちら、ベリーチェちゃん。」

「よ、よろしくお願いします…」


同日お昼



「久しぶりー!元気になってよかったねー!」


ベルナールは

「冒険者になりたい。できれば、ベルナールさんと一緒に///」

…そう言ったベリーチェを自分のパーティーの一員として迎える

コトにした。


”ソレが当然”と。考えていた



「よろしくねベリーチェちゃん!…ほ、ほら!アレクセイも挨拶…」


ベリーチェは退院に際してプリモヒーラーのシャルロッテから


「最初の5日間…次の診察日までの間はお宿でノンビリしていなさい。ソレで問題なさそうだったら、少しずつお宿の仕事を手伝わせて貰いましょうね。リチア様とミーリア様に声をかけてあるから…」


そう、言われていた。

しかしベルナールの側にいることを選んでしまった。


リチアとミーリア(それと、セルディア)は確かに

シャルロッテから「よろしくお願いします」と言われていたし

ベリーチェが仕事をしたいと言い出したら宿の仕事や庭の手入れ

を任せるつもりでいたが、ベリーチェのトラウマや

心的外傷後ストレス障害に理解があったわけでも無いので

むしろ、


「病気だったのに。スグに冒険者になろうなんて偉いね…」

「頑張ってサポートしてあげなきゃね!」


と、姉妹で頷き合ったほどだった。



「…せいぜい足手まといになるなよ」

「アレク!…ご、ごめんねベリーチェちゃん、気にしないで。彼、思いやりのないヒトデナシだから…」

「おい」


活動し始めようとした矢先に魔物に襲われてしまった

ベリーチェはもちろん、白紙の5級冒険者だ。


そんなベリーチェをパーティーに迎える事を

アレクセイは当然反対したし、病み上がりを理由にメルヴィでさえ

躊躇したが、ベルナールが2人に何度も頭を下げて…何かあれば自分が

対処すると…訴えて。受け入れさせることに成功した。



「き、気にしなくていいからね…」

「だ、大丈夫です…5級の私が。皆さんに着いて行きたいなんて我儘を言ったんです。そう、思われるのも当然です…だ、だから。だからこそ、頑張ります!」


ベルナールがきっと守ってくれる…

ベルナールがいれば怖いものなんてない…


…ベリーチェは本気でそう思っていた。



「そっか…うん!応援するから!」

「はいっ!…えへへ」


恋する無敵の乙女はこうして

野に放たれたのだった…





















レオ「くそっ!なんでアイツばっかり…」

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