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転生モブが小さな幸せ見つけるための3つの法則  作者: 林檎とエリンギ
3rd Theory : 取るに足らない事件
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Chapter 007_不均衡

「早くおいでー」


冒険者が危険で不安定な職業であることに疑いの余地はない。


近年になってギルドが引退した冒険者に定期的に一定額を支払う

「年金」の制度や、犠牲になった冒険者の家族の生活を支援する

「保険」制度を始め。ある程度の効果をもたらしているがソレはすなわち、

「必要だ」という意味に他ならない。


日常的に贅沢ができる冒険者はほんの一握り…

全体の5%にも満たず。ほぼ全ての冒険者が「カツカツ~トントン」の

生活を送っているのが現実だ。報酬は確かに”それなり”の額になるが

装備のメンテナンスに薬に魔道具。宿代に…魔法使いにとっては魔力の源

である「食費」も立派な「必要経費」だ。

4級以上なら節約次第でギリギリ貯金も可能だが、

その貯金も多くの場合、装備の拡充や次のダンジョンへ向かうための

「交通費」で綺麗さっぱり消えてしまう。

遊びに使えるお金なんて、ごくごく僅かなのだ。


だから冒険者を選んだのなら

上を目指さなければならない。


家族を養えるのは3級以上。

引退後の生活を望めるのは2級以上。

いつ辞めても遊んで暮らせるのは1級以上。


歴史に名が残るのは特級だけ…



「はーい!…おい、大丈夫かレオン?」

「な、なんとかぁ〜…」


…冒険者は、”そういう”仕事だ。


異世界の「アイドル」や「動画配信者」の中でも成功している者は

ごく一部。殆どの者が無名のまま活動を終えるのと同じ構造。


努力じゃ超えられない壁がある。

ソレに加えて、冒険者という仕事は”命がけ”…







「2人とも遅いぞ。」


…ヒュポグリフ討伐に(とど)まらず、他の依頼でも活躍した

アレクセイとメルヴィは先日。ベルナールとレオンに先んじて

「3級冒険者」に昇進してしまった。



「「ごめんなさい…」」


同じパーティーにいながら

自分達を差し置いて昇進した2人に不満がないワケじゃ無い。


けれど、悔しいけど。

技術も魔法も作戦も柔軟さも計画性も基礎体力すら

ベルナールとレオンは2人に敵わない。

「不公平」だなんて、口にはできなかった…



「ま、まぁまぁアレク。ふ、2人とも体調が万全じゃ…」

「ソコが問題だと言っているんだ!」


セルディアに言われたベルナールだったが、変わらず

冒険者を続けていた。相変わらず宿のアルバイトを続けていたが、

ミーリアが宿の仕事に専念するようになったのでベルナールの仕事は

めっきり減った。


男なんだから力仕事や用心棒を…と、思いたかったが、魔法が存在する

リブラリアでは”男性”の肉体的な利点は限られる…なんなら、ミーリアが

本気を出せば腕相撲でベルナールに圧勝する。


努力じゃ超えられない壁がある。

魔法世界の現実だ。



「自己管理がなってない!」


…それでも2人は

腐らずに、頑張っていると言っていい。


ミーリアにお願いして修行したり、”っぽいの”に頭を下げて魔物や

ダンジョンの情報を教えてもらったり、メルヴィに魔法を教えて

もらったり…最近では、セルディアに剣技や立ち回りを教えてもらう

コトもある。


毎日、遅い時間まで修行を続けている彼らを責めるのは酷だが

アレクセイだって子供の頃から頑張って鍛錬を重ねてきたんだ。

こんな所で立ち止まる訳にはいかない。だから…






「ア、アレクセイ…」


ある日の冒険の帰り道…

依頼された魔物討伐と採集を滞りなく終えた4人だったが、

帰り道で疲れが『ドッ』と出てしまったベルナールとレオン

は遅れ。

痺れを切らしたアレクセイは立ち止まり

2人に厳しい視線を送った。


そんな彼を(なだ)めようとメルヴィは声をかけたが…



「ふんっ…」


アレクセイは



「ちょっ、ちょっとぉ!」


メルヴィの呼びかけにも答えず、

サッサと先へ進んでしまったのだった…



「もうっ!…大丈夫?2人とも」


メルヴィに声をかけられた2人は



「はい!」「が、頑張ります…」


正直言えば休みたかったが、こんな所で

弱音を吐くワケにもいかず。スグに返事をして…



「お、追いかけましょう!」

「よ、よし…」


「む、無理しないでね!シルフゥ、シルフォ2人を助けてあげて…」

『『!』』


精霊の助けを借りながら

森の小径(こみち)を進んだのだった…


………

……





















「仲間にしたのはいいが…そろそろ潮時か?」


その日の夜

寝支度を整えたメルヴィがベッドに入ろうとすると、

先に入っていたアレクセイが

そんなコトを呟いたのだった



「はぁっ!?まだ半年も経ってないじゃない!」


その言葉に驚いたメルヴィはベッドに入るのを止め

呆れと怒りを含んだ瞳をアレクセイに向けたのだった



「だがな。もう限界が…」

「限界って…2人とも、ちょっと疲れていたダケじゃない!あの程度、誰にだって…アレク。貴方にだってあることでしょ!?」

「…」


アレクセイが言っているのはなにも、今日ダケのコトではない。

ベルナールとレオンが元で(と、アレクセイは思っている)

取り逃した魔物もいたし、失敗した依頼もあった。


フォニアに認められ、さらに冒険者として進級したコトで

自信がついたアレクセイは少々、思い上がっていた。

もっとも、

彼に欠けていたのは「小さな思いやり」だけであって。

彼の自信は当然の権利の範疇だったが…



「それに…」


メルヴィだって、もっと成長したいと思っていた。

フォニアの期待を背負った彼女は一刻も早く大師匠から賜った

魔法をモノにしたいと思っていた。


…けれど、同時に

ソレはきっと長い道のりだから。焦っても仕方ないとも思っていた。

いつ果てるとも知らない絶望を知っているメルヴィは

アレクセイほどの焦りは感じていなかったし、フォニアが目を

かけているベルナールを無下にすべきで無いと直感的に悟っていた。

だから…



「もうちょっと…せめて。”自分達の稼ぎ”だけで飛空船の旅費を賄えるまではこの街にいましょう?」

「しかし…」

「もし、彼らを足手まといだと思うなら。足手まといがいてもナントカできるくらい強くなれば良いじゃない。この経験はいつか必ず役に立つ…違う?」

「…」


不精な顔をしたアレクセイに跨ったメルヴィは



「…さ。」


“投資相手”に妖艶な笑顔を向けながら…



「貴方が強いってコト。証明してみせて…」


夜風の魔法をひと唱え…

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