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Chapter 034_空の上の宙①

「・・・おかえりなさい、みんな。頑張ったわね。」


ハラの町から帰還したベルナールたちを迎えたのは

誰一人予想していなかった人物だった。



「あれ?魔女様…あ!ご、ご機嫌ようございますか?」


ベルナール

レオン

メルヴィ

アレクセイ


の中で口を開けたのはベルナール。ただ一人だけだった。

レオンは口をポカンと開けており、アレクセイは呼吸を止めた。

メルヴィに至っては、5歩手前で過呼吸状態である。



「・・・んふふ。ん!元気よ。・・・みんなも、ご機嫌麗しゅう御座いますか?」


時刻は夕暮れ。

紫の空が群青を経て黒に代わろうという、

夜の入り口であった…



「「「…」」」


リチア・ミーリアという窓口のおかげでベルナールは普通に挨拶しているが、

世間一般の 夜の魔女フォニア の印象は端的にいって「神様」である。


大陸全土に影響を与えていたエディアラ王国の内戦を実質1人で鎮圧し、


過去1万年 誰1人、可能性すら想定しなかった

「魔法を編む」技術を見つけて体系化し、


神秘の塊である精霊と妖精を生み出し、


薬草術で何千万人の命を救い健康を向上させ


ヒトビトに空飛ぶ翼まで授けた1人の女性を崇めないで

誰を崇める?


家に帰ったら玄関前に光輪を背負った釈迦が突っ立ってるようなモノである。

レオン、メルヴィ、アレクセイの反応は正常だ。



「・・・んふふふふ。」


小さな背丈

トレードマークの亜麻色の三つ編み

柔らかく慈悲深い笑顔

そして、

黒い魔女服に大きな帽子と、帽子の先で回る星…


夜の魔女フォニアは宵闇より柔らかい笑顔でベルナール

たちを宿に迎えた。


この宿に泊まっているメルヴィとアレクセイはもちろん。

ベルナールと組んでから殆ど毎食、食べに来ているレオンも

フォニアの姿を見かけたコトは何度もあるが、

面と向かって話をしたコトはなく遠くから眺めていたダケだった。


ベルナール。スゲーな…そんな風に思っていた。


目の前にいるのに別世界にいる…MR技術の産物かナニカ

だと思って眺めていた3人にとっては、



「・・・さ!疲れたでしょ!?宿に入って、娘たちが腕によりをかけて作った美味しいご飯を楽しみましょう!」


自分たちに向けられた声も



「ひゃうぅ!ま、まりょはm///!?!?」

「んふふふふふ!」


背中を押す小さな手も



「・・・レオン君もアレクセイ君も!早くおいで」

「…ひえぇっ!?ひぁ、ひぁい!?」

「は…は、はいぃっ!」


名前を覚えられていたという事実も…



「今夜はお祝いよ!」


…その全てが。

夢幻(ゆめまぼろし)のようであった



………

……





















「ど、どうしてそのコトを…」

「・・・ないしょ。」


「頑張ったわね。」「お祝いよ」…その言葉は、

ベルナール達が格上相手に勝利したという”大金星”を指して

いるであろう事は、容易に想像がつくと思うが。


ソレは異常なことなのだ。何しろ…



「ま…ま、まだ。ギルドにすら報告していないのに…」


ヒュポグリフを倒したその日…

疲れ果てたベルナール達は、そのままハラの町にもう1泊し、

次の日から解体作業にはいった。しかし、高級品ゆえ時間がかかり

結局、さらにもう1泊…合計2日。ルボワ市への到着が遅れてしまった。


そして、沢山の荷物を背負ってきたコトで疲れ果ててしまった4人は

ギルドに帰還の報告だけして。詳しい事情は「明日話す。」

と言ってきたところなのだ。


つまり、ベルナール達の活躍を知るものは4人と

ハラの町の住人だけのハズ。この街には1人もいないハズ…



「・・・ま。私これでも、魔女ですから・・・」


…いや、もう。この際「なぜ4人の活躍を知っているのか?」

という点を問うのは無しにしよう。彼女には情報に強い

パトロンもいるし、勝手に噂を集めて報告してくれる信者もいる。

妖精や精霊もいるし、心を読める天使もいる。


重要なのは、フォニアが

①方法は分からないけど、ベルナールたちの活躍を知っている

②理由は分からないけど、めっちゃ誉めてくれている


というコトである…



「・・・ベル君もレオン君も勇気いっぱいだったね。カッコよかったよ。いい子いい子・・・」

「…」「…」


娘と同い年のせいか…夜の魔女は柔和な笑顔でつま先立ちし、

椅子に座るベルナールとレオンの頭をナデナデしていた。


昭和の大阪のオカンのような馴れ馴れしさだが

彼女はコレで平常運転である。



「…おかずはコレくらいで足りる?」

「今夜はお母様の奢りだから、遠慮なく注文してね!」


娘たちも慣れたものである。

そりゃあ…子供の頃は”誰にでも”愛情を注しでしまう

母にヤキモキさせられ、独占欲から不機嫌になったコトもあるけれど


老若男女・貴賤も問わず…凶悪犯罪者から王女様さえ…

抱き締め、甘やかす母の天使な姿に

“慣れた”…というか。もはや”諦め”がついた。



「・・・アレクセイ君の尖塔魔法(オベリスク)も素晴らしかったよ!大きすぎず小さすぎず、最適な大きさの塔を構築したね。お手本みたいな魔法だった。今度、師匠に会ったら推薦しといてあげるからね」

「ぶふうおぁ!?ほぅおっ!フォントdeathかぁー!?」


フォニアの師匠…【炎獄の魔女 ローデリア】

彼女はヴィルス帝国 帝国軍第3大隊大隊長を務めていた人物である。

現在は引退して実権のない戦術顧問という立場に収まっているが

軍内部での影響力はとても大きい。


【夜の魔女】が【炎獄の魔女】に推薦した…

そんな人物が実在すれば、それは、実力と政治的な駆け引きを全て無視して

エスカレーター式に右大臣(リブラリアにおいて”右大臣”とは、軍属のトップ)

となるエリートだ。



「…フォニア君。安請け合いはメ。少しは。立場を。考えて…」

「・・・む」


ひと唱えで大陸を焦土にする物理的な破壊力と視線ひとつで庶民を

国王に昇格させられる影響力があるコトをイマイチ自覚していない

オカンによって。これまで多くの人が振り回されてきたのは

想像に難くないだろう…



「…アレクセイ君。このヒトの言葉を鵜呑みにしちゃメよ!?推薦なんてさせないし…仮に本当にしようとしても私達が止めるわ!期待させたら申し訳ないけど…”その椅子”は。君が自力で掴むべき物よ。」

「…でも、このヒトが言うのだから。貴方の実力は。きっと。本物…。…どうか。コレに懲りずに。頑張って…」


お目付け役の侍女長様がいない今、

混沌の魔女を止められるのは司書妖精だけである。



「…、まったくっ。困った”神様っぽいの”ね!」

「…ホントに。そう…」

「・・・むー・・・」


これでは、どっちが「お母様」なんだか

分かったものではない…



「は…は、はい!はいっ!!ま、魔女様が唱えた通りになるように…が、頑張ります!!」


しかし、賢明なアレクセイは司書妖精の心配をよそに

フォニアの言葉を”励まし”と捉えた。

しかも、1年以上の付き合いがあるメルヴィでさえ見たコトの

ない満面の笑みを浮かべてである。



「・・・ぅ、んぅ・・・ご、ごめんね。でも、魔法の評価も、応援してるのもホント。頑張って・・・」

「はい!!」

フォ「・・・ところで。ヒュポグリフのお肉はどうしたのカナ?」


ベル「へ?お肉…ヒュポグリフのですか?」

レオ「肉は、そのままじゃ保存がきかないからって言われて。たしか…」

アレク「当日の宴会に使われ。残りは町人が保存食にしたいと言ったので譲渡してきました!…だよな?」

メル「…へ?えっ!?わ、私っ!?…は、はい!そうであります魔女様!」



フォ「・・・・・・・・・そ、そっか。そっ・・・っ!い、今スグいk・・・」

リチ「おっ、お母様!?どこへ行こうというのですか!?」

ミー「お祝いって聞いて。お姉ちゃんと頑張って作ったのに…」

フォ「む、むぅ・・・」



スタ「…まったく。諦めなさい!」

カル「…いじきた。ない…」



全員「「「「「???」」」」」






※ヒュポグリフの肉は美味しい

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