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Chapter 029_乱暴な風と優しい風

逃げ惑う人々

乱れ飛ぶ荷物や家屋の残骸

耳を(つんざ)く悲鳴と雄たけび…



「ファイヤーボール!!」


悩む暇も必要もなかったのは

「あの時」と同じ



「どぅおりゃあっー!」


勢いに任せて特攻した2人だったが

経験が生きたのか、特訓で自信がついたのか、はたまた、

肩にしがみつく精霊の力か…おそらく、その全ての影響で

あの時より冷静でいられた。


初弾でベルナールが、ヒュポグリフに有効とされる

火魔法を撃てたのもそのおかげ。


的確なレオンの追撃でヒュポグリフの注意を

自分たちに向かせることに成功したのも、そのおかげ。


経験と努力と仲間の存在は

2人を確実に成長させた…




『ギャーッ!』


ベルナールの火球魔法は風を孕んだ翼で、レオンの刃は飛び上がることで

ヒュポグリフは危機を回避!


2人に怒りの視線を向けた。



『ギュルルルゥ…』


去年の夏に群れを追い出されてから…


小動物 → 魔物 → 人間の家畜 → 行商人

→ 数名の盗賊 → 小さな集落


…と、確実なステップアップで経験を積み自信をつけていた幼い鳥は

今回も思い通りにコトが進むと思っていたから。


この”小さな異形の獲物”は『ギャーギャー』と(うるさ)く騒ぎ

反撃もしてくるが…しかし、


弱い。



翼を振るって風を起こせば吹き飛ぶし、

爪を振るえば血を流して倒れる。嘴で引き裂くなど造作もない。


食べる所は少なく、特別、美味しいワケではないが

(ひら)たい場所を探せばで容易に見つかる。

逃げ惑いながら些細な反撃をしてくるから面白い。


オヤツとして・遊び道具として…

ヒュポグリフにとっての人間とは ()()()()存在 であった…



「さすがに速いな…ならっ、」


…だから。

人間を脅威と捉えていなかったから。


ヒュポグリフの心は怒りで満たされ、

2つ並んだ緑の瞳は怒りの元凶である2人に注がれた。


「町人から意識を逸らす」ことが2人の狙いだったなんて、

欠片も思い至らなかった…



「シルフォ!力を貸してくれ!」


一方2人は油断せず、

台本があったかのように次の一手に取りかかった。


ヒュポグリフの意識は2人に向いているが…

周囲には暴風による残骸が散らばり、腕を抱えて血を流す者や

泣き叫ぶ子供を抱えた親もいる。


町人が逃げる隙を作るために緑の眼差しを少しでも長く

自分達に向けなくてはならない…



『!』


人工精霊(フェタ)の1つである檸檬精霊(シルフィ)

攻撃力こそ低いが支援に特化しており、応用力がとても高い


術者ではないレオンの意思を汲み

ベルナールが次の魔法を完唱するまでの(あいだ)

レオンの動きをに合わせて風を送り

ヒュポグリフと渡り合えるようにサポートしていた!



「ファイヤーアロー!そのまま一矢(いちのや)放て!!」

『!!』


さらに!

ベルナールに取り付いたシルフィ…メルヴィがシルフゥと名付けた…

は、ベルナールの放った火矢を風のヴェールで覆って威力減衰を抑え、

着弾時になると、ヒュポグリフが(無意識のうちに)身体を覆っている

風のバリアを相殺して…



『ギャッ!?ギャアギャア!!』


水には強いが火には弱い

羽根に火をつけた!

さらに…



「足元 注ぅ意ぃー!」


シルフォの力を借りて高く跳び上がったレオンが



『ギギャーッ!?!?』


ヒュポグリフの前脚…鳥脚の指の1本を断ち切った!!



「二の矢…」


さらに!?



「…放てー!!」

『ー!!』


火の粉逆巻く火矢が!



『ギッ!?』


経験したことのない痛みに慌てふためいた

ヒュポグリフの乱れ羽根に殺到して


赤い熱を撒き散らす!!



『ギャグワーッ!?!?』


空中でパニックに陥ったヒュポグリフは普段なら簡単

で本能的にだきるハズの「飛び方」さえ忘れ…




『ズズーンッ!!』


…馬の下半身に鷲の上半身をもつ身体を

大地に落としたのだった!



………

……





















「…『築け』 ルーク!」


ベルナールとレオンの戦いを遠目で見たメルヴィとアレクセイは

いったん、戦いを2人に任せ。町人の救助を優先することにした



「さぁ!みんな急いで!彼の作った避難所なら安全よ!」


アレクセイによって築かれたのは土属性第6階位の【築城魔法】

による半地下の避難所…防空壕と言っていい…はヒュポグリフどころか、

グリフォンに襲われても耐えられそうなほど堅牢だった。


中は暗く・入り口も狭いが、無骨で頑丈そうな見た目が

不安でいっぱいだった町人に安心をもたらした。しかし…



「た、助かった…のか…?」

「くっ…」

「お、おい!?傷は…だ大丈夫か!?」

「ひぐっ…、グスッ…」


アドゥステトニア大陸ではヒュポグリフの被害が絶えない。

人々は実際の被害”以上に”彼らを恐れている。


そして、

昨日まで「ネズミ退治」をしていたベルナール達が4級

冒険者である事を知っていたため、その実力に懐疑的でもあった。


助けてくれたのはもちろん嬉しいが、本当に大丈夫なのか…?


4かけだしが敵う相手じゃないんだろう?


家が潰され、怪我人も出てしまった。オレ達はコレからどうなる…?



…ソレが彼らの本音であった



「シルフェ!【れもねーど】をお願い!」


…しかし。

不安でいっぱいの避難所に…



『…!』


薄黄緑色の輝きを放つ

小さな妖精が舞い込むと…




「?風が…」

「爽やかな風が吹き込んでこないか?」

「入り口から…いや。あの小さな妖精…精霊から?」



【れもねーど】は檸檬精霊(シルフィ)の固有魔術であり

調和魔法を”応用して”編み出された”回復魔法”だ。


回復魔法…と、いっても【治癒魔法】のように

傷を治したり毒を払ったり痛みを拭う力はないが


爽やかな風によって心をリセットし、さらに

傷の消毒と保護による痛みの軽減と感染症予防の効果もある。



「爽やかな風だなぁ!」

「…あ、あれ?逃げる時に転んでできた擦り傷。さっきより痛くない気がする…」


日常に新しい風を誘い込む小さな脇役…



『!』


…檸檬精霊は。

ささやかだけど優しい風で傷ついた心と体を

そっと、癒した…

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