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Chapter 026_人は変わる

「・・・それでいいのね?」

「ん…は、はい…」


年が明けてカレント2,207年 治月の月16日

ミーリア 15歳の誕生日である…



「・・・冒険者資格は取り上げられるコトは無いし、返上する必要もないわ。だから・・・そのまま。持っていなさい。」


ミーリアは今日。

1つの小さな…まだ子供であるミーリアにとっては大きな…決断を下だした。


ずっと前から思っていたコトだけど、伝えなければならない人にソレを伝える

決心がついたのは。つい先日のコトだった…



「…」

「・・・迷ってる?」

「ま、迷っては…な、ない。よ…。でも…」

「・・・ケジメがつかない?」

「…はい………」


ミーリアには「夢」がなかった。


お姉ちゃんと宿屋を営んでいるのはお姉ちゃんが心配だから。

冒険者になったのはお姉様が格好よかったから。

発動子に弓を選んだのはフルートお父様が喜んだから。

強くなったのはルクスお父様とお母様に頼まれたから…


…もちろん。”面白そうだったから”というミーリア

本人の興味も含まれていたけれど、最後に背中を

押したのは”誰かの為”という想いだった


家族の誰かの”需要”がなければ。きっと、

瞳を向けるコトは無かっただろう…



「…私が。ミーリア君のページを。預かろうか…?」

「カルマート様…」


…けれど成長期を迎えたミーリアは。心も体も

”女の子”から”女性”に変わった。もう、子供(あのころ)には戻れない…


身体が大きくなってしまった。

重心位置も変わってしまった。

お外よりお家が好きになった。

戦いよりも、お料理やお裁縫に興味が向いた…



「・・・焦る必要は、ないわ。ゆっくり・・・」

「んーん…」


ソレは”諦め”ではなく”成長”だった。

憧れや尊敬が薄れたワケじゃない。

ただ…



「…リーブラ………」


ミーリアは何ヶ月も悩んだ。

そしてソレは。悩みの果てに導き出された”ひとつの解’だった…



「…お願いします。」


群青色の魔法本を預かり…



『ペラッ…ペラッ…』


(めく)り。


目当ての(ページ)を探り当てた

司書妖精は



『…』


本に通された紐をアッサリ(ほど)

縁付きの項を取り上げて



「…確かに。預かり。ました…」


司書自身の魔法本に挟んで。そう言った…



「っ…」


その光景を前に、ミーリアの目蓋には

悔しさと、切なさと、悲しみと、安堵と…そして、

ポッカリと空いた心を満たすための涙が込み上げた



「・・・ミーリア・・・」


しかし…



「だ、大丈夫!大丈夫だよお母様!」

「・・・」


身体を捩って母の腕から逃れたミーリアは

目尻を指で拭い、涙だったモノをH2Oに変え…



「…フ、フーウェンちゃんとフーシェンちゃん。それと、ラミューはこのまま預かっていてもいいよね!?」


顔を背け



「・・・もちろんよ。」


母に背を向け、椅子から立ち上がり…



「こ、コレからはお宿のお仕事に集中するね!…も、もちろんお姉ちゃんの事は守るから!…も、もらった指輪も。弓に代わる発動子として大事にするね…」


濡れた頬を見せないように、

湿った声を聞かれぬように



「・・・・・・・ん。頼むわね。」


精いっぱい



「頼まれた!」


強がったのだが…



「・・・ミーリア。」

「…ぅ、んぅ?」


呼び止められ、

思わず振り返ってしまったミーリアは…



「・・・」

「っ…」


…母の。

慈愛と切なさの混じる瞳に一瞬で飲み込まれ。

そして…



「・・・大人になったわね。」


…その言葉に。



「っ!」


思わず…



「お母様のっ!…っ………」


………

……



………

……





















「え!?隣の町に…ですか!?」


…次の日。



「そう!」

「アーバンラットが大繁殖してしまったそうだ…」


夕食営業を終えて(まかな)いご飯中を囲む

夜の冒険者宿の食堂にて…



「と、隣町って…の、乗り合い馬車を使っても2日くらいかかったハズですよね?」

「た、確か。えぇと…」

「往復6日の予定だ。状況によっては延びるかもな…」


メルヴィとアレクセイ…優秀な仲間を加えたベルナールとレオンの

冒険者生活は充実していた。


風魔法使いであるメルヴィの索敵能力は素晴らしく、

また、敵の分断や撹乱。仲間の支援もお手の物だった。


槍使いのアレクセイは適正のある土属性を巧みに操りヘイトを稼ぎ

隙をついて致命の一撃を加える事もできる頼れるタンクであった



「ごめんねーリチアちゃん。暫くベル君を借りるわね…」


2人の生活は大きく変わった。

コレまではノンビリと、隔日以下のペースで仕事をしてきたが、

向上心が高い2人が増えたおかげで…戦いは安全になったが、

手取りが少ないので…


毎日のように仕事をしなければならなくなった。



「むぅ…」


もっとも、今回のような”遠征”は

初めてであったけど…



「…べ、ベリーチェちゃんはどうするんですか!?文通を続けているんですよね?」


一方で、ベルナールは治癒術師マリーの願いを聞く形で数日前から

ベリーチェとの一言(ひとこと)文通を始めていた。


術師でも身内でも…まして、恋人でもなんでもないベルナールが

ベリーチェの治療に付き合う義務は全くないが。それでも彼は誠実に応えた。



「治癒術師様から「無理はしなくていい」と言われているし…そ、それに。遠征中に返事が来るかも分からないから…」


もちろん。チアだってベリーチェを可哀想だと思っている。

母が関わっている以上、無関係というワケではないが…


リチアには母の真意は分からないし、専門家でもないため

リチアはベリーチェにソコまで関心を寄せておらず。


ただ、彼の背中を瞳で追っていた。


一緒にいる時間は一番長いし、アプローチもしているツモリなのに

私だけを見てはくれない。

彼に…



「む、むぅむぅ…」

「…」


…そして。

恋する乙女な姉の呟きを目の当たりにした妹は…



「…お姉ちゃん。かぁーいーのぉ…」


…妹のクセに。

姉より先に大人(おや)の心を理解した…

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