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Chapter 025_足踏み

林檎です。

本話とても短いです。ご了承ください。

「…」

『…無理しなくていいの。今日じゃなくていいのよ…』


…秋。


沢山の山と谷を越えたベリーチェはまた1つ

大きな山を越えようとしていた…



「…」

『…』


背中を押さない。

精神疾患患者のケアの鉄則だ。


今日じゃなくていい。

頑張らなくていい。

無理は絶対にダメ。


今いる場所を支えてあげて。

後戻りしたら一緒に戻って。

瞳に映った小さな幸せを共に喜んで…



「………」

『………』


…その日。

ベリーチェは山を越えられなかった。


けれど焦る必要はない。

足踏みしないと気づけないコトもあるのだから…


………

……





















「…冬?」

『そうね。今は冬…かも?」


数十日後。



「…お散歩行きたい。」

『ちょっと待ってね。シャルさんと相談するから…』

「うん…」


ベリーチェは昨日。

自分が何をしようとしていかのか?

サッパリぜんぜん忘れてしまったようだ。



『…ベリーチェ。お散歩良いって。行く…?』

「…」




『…ベリーチェ?』


机の上に置きっぱなしにされたペンのインクは

乾いてしまった。



「…」


シワが寄った製紙は昨日となにも変わらない…



『……』


季節は巡り…

ラベンダーはコスモスに

コスモスは冬バラに

バラはクロッカスに

クロッカスはスノードロップに

移り変わった


季節は巡り時間は通り過ぎたけど、

きっと明日も花は咲く…




「………」


忘却の1日。

静かな1日。

でも、ソレでいい…



「…寒いね。」


今は冬だということに



『そうね…』


気付けたのだから…



………

……





















「…一言でもいいの?」


更に数十日後



『…えぇ。』


ベリーチェは起き抜けに

手紙を書くと言って机に向かった。


トーストは冷め、

ジャムの端は乾いてしまったけれど

構うものか…



「…」

『…』

「…」

『…』


半年…

同じ場所で季節の移ろいダケを眺め

天使と術師3人とだけ会話し、

社会から隔絶され


爆発する心に突き動かされ

どうしょうもない不安と恐怖に苛まれ

シャッフルする記憶に翻弄させられる…


知人の1人もいない異国の地で

赤の他人と”動くぬいぐるみ”に頼らざるを得ない状況に叩き落され

誰よりも信じられない”自分”と戦うことを余儀なくされた

ベリーチェの不安は計り知れない。



『今日は…やめておく?』


勇気を振り絞る必要なんかない。

前に進む必要もない。

合理性も生産性も考えなくていい。


あの絶望の底なし沼に落とされながら

なお、閉じなかったその物語が。その瞳が。美しくないハズがない



「…」


だから…











「…うぅん。

書く。の…」


…だから、どうか。

彼女の想いが届きますように…

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