Chapter 019_やきもち
「…もうっ。私ばっかり仕事させて…」
…夕方。
特訓を終えた3人が宿に帰ると、リチアにしては珍しく
愚痴をこぼした。
「ご、ごめんよリチアちゃ…」
「メっ!です!許しません!」
「えぇぇっ!?」
その言葉に最初に反応したのはベルナールだった。
最近、宿の仕事をできていなかったので負い目を感じていたのだ
「お、おねーちゃん…」
…しかしミーリアは知っている。
今日は午前中の仕事を3人で終わらせ、夕食の下ごしらえまで済ませたので
リチアの負担は、むしろ少なかったハズだ。
「なんでお前ばっか…ふ、不公平だ!」
「…は?お前もアルバイトしたいのか?」
「何言ってるんですか!?」
「お、おにーちゃ…」
要するに、リチアの愚痴の原因は…
「人手は間に合ってます!!レオンさんと仕事なんて…頼まれたってヤです!」
「リ、リチアちゃん…そ、そこまでハッキリ言わなくても…」
「おねーちゃん…」
…要は、そういうコトだ。
「ミーリア!あなた明日は…」
「はーい、はいはい!ミーは明日、グールーでも追いかけてま〜す…」
幼少期に身体が弱く、大人達にチヤホヤされてきたお姫様リチアは
重度の「かまってちゃん」である。
「なら、いいけど…それならベルナールさん!あなたは…」
「…や、宿の仕事を手伝うよ…」
「…手伝いだけですか?」
「えぇっ!?」
しかも、けっこうストレートな言葉で
気持ちを表現する。
「むー…」
「えぇと、えぇと…ゆ、夕食の買い出し…」
「むぅっ!結局お仕事じゃないでs…」
「…の!ついでに街をブラブラ…」
正直、メンドイけど…
「…うん!それなら許してあげます!…んふふぅ///」
…メンド可愛いお姫様である。
「…けっ!オレはひとり淋しく。適当な依頼でも…」
「レオンおにーちゃん…。可哀そうだから、ミーと一緒に冒険いく?」
一方のミーリアは、ラミューと話ができて吹っ切れた様子
「いっ、いいのか!?」
「しょーがないなぁ〜…」
「うをおぉぉ!!」
社交的で明るい
いつものミーリアに戻っていた。
「冒険には一緒に行ってあげるけどぉ…でも、カン違いはしないでよね!」
「………分かってるよ。ったく…」
気持ちも安定したようで、一昨日までの騒動が噓のよう。
”乙女心”は複雑なのだ…
「…ほーらっ」
4人がそんな話をしていると、
『パホッ』と手を合わせる音と共に、声がかかった。
振り返ってみると…
「間もなくお客様がお帰りよ!」
…宿屋の影の支配人…いや、支配妖精が
大きな帳簿を腕に抱いてカウンターの上で仁王立ち。
「リチア君はお客様のお出迎え」
「ん!」
「ミー君とベル君は配膳の準備よ!」
「はい!」「んっ!」
「今日はメインがお魚だからフィッシュナイフを忘れずにね!」
「はーい!」「んーっ!」
「レオン君は昨日のツケを払いなさい!今日も食べていくなら、その分も…」
「はいはい、払います!払いますよ!!…満腹定食とエールでお願いします!」
「まいどありー」
皆が持ち場に着いたところで、
リチアが宿の扉を『ガチャッ!』と開けて…
「「「「ようこそ!小さな魔女の家へ!!!!」」」」
夜のラッシュのはじまりだ!
………
……
…
翌日昼過ぎ
「え…?」
「あっ!」
赤黄に染まる街角にて…
「こんちにはマリーさん!ご機嫌麗しゅう御座いますか?」
約束通りベルナールがリチアとデート…荷物持ち…をしていると、
ふと、見知った顔と鉢合わせしたのだった…
「…こ…」
ルボワでセコンドヒーラーをしているマリーは、もちろんリチアの
コトを知っている。
…他でもない、月天使様のご息女だ
知らぬずが、見間違えるハズがない。
怪我をしていないか?病気になっていないか?
いつだって気にかけている…
「…こ、こんちにはリチア様!げ、元気…です。…ご、ご機嫌麗しゅう御座いますか?」
「はいっ!」
…それでも一瞬
反応が遅れてしまったのは…もちろん。
「…こ、こんにちはマリーさん。ご機嫌ようございますか?」
「こんにちは………」
一介の冒険者に過ぎない青年が、
天上人の愛娘と仲良さそうに腕を組んでいたからである…
「…」
理智なリチアは
2人の間に流れた一瞬の沈黙から…
「…あ!ベルナールさんが助けたっていう女の子の…」
…スグに、2人がドコで出会ったのかを悟った
「あ、はい!」
一方のマリーは混乱していた
「…え?えぇっ!?…な、なんで!?なんで月天使様の娘さんと…う、腕組んでるし!?そんな関係!?どんな関係!?うらやまけしからんぞ青年!」
「確かに月天使様の宿に厄介になってるって言っていたけど…や、厄介になるって、どんな厄介!?客じゃ無かったのか!?」
「こんな冴えない男のドコが良いの!?リチアちゃんなら引く手数多なのに…勿体無い!!」
「コリは…ス、スキャンダル!スキャンダルよ!!不詳マリー、無自覚にもパパラッちゃいましたよテヘペロ!」
「宿の看板娘と貧弱冒険者の…さ、さてはこの♂。リチアちゃんの優しさに付け込んで…あわ!あわわわぁ…」
「ほ、他のお客様が寝静まった夜の宿屋で…ゴクッ…」
…混乱の極みだった。
治癒術師は人数が少ないから、治癒属性に適性がある証【銀の瞳】を
もって生まれると「蝶よ天使よ」と育てられ、幼い頃に治癒院に預けられ
治癒術師になるべく修行を始め。同じような治癒術師の卵と共に
何不自由なく健やかに育つ。
しかも、【銀の瞳】の出生率が99.99%以上、女性なので治癒術業界は
女社会。そんな、天使はびこる聖なる殿堂でお年頃の女の子が
お祈りと、魔法と、お勉強…毒や薬、病気のアレコレ。人体の在り方と
生理現象。人の営みと…ココロとカラダのアレやコレを学んで
1人前と認められる16歳まで醸造されてみ!?
恋に恋する熟成乙女の出来上がり!!
「…と、取り敢えず綴らな…」
「えぇっ!?」
「なっ/// 何を綴ろうというのですかマリーさん?」
治癒術師はいわゆる「勝ち組」なので異性同性問わず“かなり”モテるが、
社会に出ると忙しくて余裕がない。だから…
「ナ、ナンデモ。ナンデモないよぉ…」
「…もうっ。」
…だから大抵。
「ところで2人はどうゆう!?」
「「どうでもありません!!」」
しばらくずっと恋する乙女なのだ
「いいなぁ〜…」
「むぅ〜…そ、そんなんじゃないですってばぁ…」
「あ、あはははは…」
リ「…今はまだ///」
ベ「えっ…」
マ「えぇっ!?」




